僕たちはしばらく何もないこの場所に立っていたーー。
お昼だというのにお互いに来るはずもない夕日を待っていたのかもしれない。
ーーーただ手を繋いで、ひたすらに。
*
聖
ーーー少し歩こうか。この先に晶くんを連れて行きたい大好きな場所がもう1つあるんだ。
僕を見上げてヘヘッと笑う彼女は少女のようだった。
昌
この道をこうして2人で歩くのは初めてですね。
聖
そうだね、あの日晶くんとここで出会ってなかったらきっと私は今もこの道を何も感じることなく過ごしていたと思うな。あの日があったからここを歩くようになってね、見つけたんだ。
そして見えたーーー、一面に広がるひまわり畑を。
昌
すごいですね・・・
聖
私も偶然歩いて見つけて、その日からひまわりが大好きになったの。晶くんが私にこんな素敵なところを見つけさせてくれたんだよ、ありがとう!
満開に咲く黄色いたくさんのひまわりを背景に映し出される聖ちゃんの笑顔はいつも以上に眩しく見えた。
ーーー聖ちゃんがひまわりを好きなのは、
きっとひまわりが彼女にとても相応しいからだと僕は思った。
昌
ーーー僕、すごく幸せです。聖ちゃんと一緒にいられて、すごく幸せです。
聖
ーーうん。で、これ私からのプレゼント。
そして鞄から取り出されたのは一輪のヒマワリ。
昌
拾ったんですか?(笑)
聖
拾ってないです!そりゃ同じように見えるかもしれないけど、これはお店で買って・・・
昌
分かってますって(笑)冗談ですから(笑)
聖
ーーー嫌い、そういうこと言う晶くんは嫌い!
僕の胸をポンポン打ちながら頬を膨らませている聖ちゃんが可愛くて仕方ない。
昌
えっ?嫌いなんですか?ふーん、嫌い・・・
聖
嘘だよ、好きだよ!もうっ・・
僕のふざけてる姿に呆れながらも正直に話してくれる聖ちゃんがまた愛しいーーー。
昌
遠慮なく、これもらいますね。
聖
この前、私と澪と潤にくれたでしょ。でも・・・私たちは4人で1つの家族だよ。だからこれは晶くん、そしたら家にあるひまわりと一緒に並べてあげようね。
なんかーーー・・・
なんて言うか聖ちゃんの優しさが嬉しくて。
僕はとにかく3人の喜ぶ顔っていうことしかなくて、
自分のことなんて頭になかった。
だから僕を元気づけようとここに連れてきてくれたり、
自分が好きな場所だと言ってひまわりを見せてくれた。
本当は澪と潤と分かれるのも嫌だったはずなのに。
それを考えたらーーー、
僕は必然的に涙がこぼれた。
聖ちゃんの優しさに触れて、
愛しくてたまらなくて涙が溢れた。
聖
えっ?どうし・・・
だけどそれを伝える前に僕は彼女を強く抱きしめた。
彼女に物を言わせまいと強く強く・・・
昌
ーーーありがとう。
それだけ伝えて、ただ抱きしめた。
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