僕たちは冬の星空を見ながら、
何か言葉を発するわけでもなくただ手を繋いでいた。
だけど僕は幸せだったーーー。
言葉では伝えられないものがこの手を伝って感じ取れたから。
*
きっと聖ちゃんは僕が寝付くまで一緒にいてくれたんだと思う。
「子供たちの様子を見てくるね、また面会時間に来ます。」
サイドテーブルに置かれた聖ちゃんからのメモ、
でももう僕には戻ってこないと言う不安はなかった。
ここ数日ろくに食べていなかったことからこの日は1日点滴、
そして明日には退院出来るとドクターに言われた。
「夫婦喧嘩もほどほどに(笑)」
冗談まじりで言ったおじいちゃん先生はなかなかユーモアがあって面白い人だった。
点滴に繋がれているから思うように手は動かせないし利き手の右手しか使えないのも不便なもんだなと感じた。
ーーー結局僕はテレビを見ることも携帯を触ることも諦めて、
ここ数日の睡眠不足を取ることに徹した。
*
「「パパー!」」
自分を遠くから呼ぶ二つの重なった声で目が冴えていく、
少しずつ目を開けてニコニコ笑って僕を見ている愛しい子たちの姿が目に焼き付いた。
数日見てないだけでこんなにも成長するのだろうか、
それとも僕が気に掛けていなかったからなのか。
子供たちのはっきりと言う「パパ」と言う声に涙が出そうになった。
まだこの世に生まれて8ヶ月の我が子たちが、
何となく大人に見えた瞬間でもあった。
「体調はどう?ぐっすり寝れた?」
子供たちに見とれていると背後から母さんが話しかけて来たから変な焦りを覚えた。
「ーーー心配かけてごめん。聖ちゃんは?」
「今、受付で先生と会って話してるわよ。明日退院出来るんですってね。」
「うん。聖ちゃんがお世話になったみたいで・・巻き込んでゴメン。」
「うちに泊まりなさいと言ったのは母さんよ。」
「そうなの?」
「そうよ、お迎えに来たときにあまりに動揺してて様子がおかしかったから聞いたのよ。そしたらケンカして出て来ちゃったて言うもんだから・・・落ち着くまでいなさいって母さんから言ったのよ。」
そこから僕が行ったことに対して母さんからの説教が始まったから僕は聞いてないフリして澪と潤を自分の膝の上に乗せた。
「怖いですね、君たちのおばあちゃんはー(笑)」
バシンっと肩を叩かれたけど、
それは母さんも母親だから僕を心配してのこと。
「安心したわよ、仲直りしたって聞いて。ーーーあなたが倒れたって聞いて先生は動転してカバンも持たずに部屋着で出て行ったのよ。」
「えっ?(笑)」
部屋着って聖ちゃんから想像も出来ない。
「それだけ彼女は動揺したの。ーーー結局、母さんが車で送って来たのよ。あなたは聖ちゃんにも会社の人にも迷惑をかけたの、もう大人なんだからしっかりしなさい。」
「ーーーはい。」
母さんの言う通りだ、何も返す言葉がない。
僕は膝の上でじゃれ合う子供たちを軽く抱きしめながら、
今回の聖ちゃんとのことをすごく反省した。
それと同じくらい母さんに感謝したーーー。
きっと聖ちゃんも救われたと思う。
自分の実家にはあまり頼れない、いつも言っている彼女だから拠り所となれる場所が僕の家族だと言うことがすごく嬉しかった。
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