僕と聖ちゃんは中から聞こえた潤の咳込みをきっかけに中に入った。
ーーーきっとバルコニーに繋がる扉を開けっぱなしにしていたことで冷えてしまったんだろう、と反省した。
*
僕たちは寝室に戻って二人並んで横になった。
ーーー久し振りに隣にいる聖ちゃんにドキドキ、そして緊張する僕はいつまでたっても変わらないなと苦笑いが溢れる。

一度眠ってしまったせいか、聖ちゃんは目を開いた状態で天井を見つめている。

僕が言いかけていたのに、
突然聖ちゃんは僕の胸元に自分の頭を埋めてきた。
一瞬何が起きたか分からなくて、
だけど澪や潤を起こしたくなくて、
嬉しい気持ちを聖ちゃんに悟られたくなくて僕は平然を装いながら軽く彼女の頭に自分の手を添えた。

聖ちゃんはそう言った。
彼女から聞くには耳を疑う言葉だったけど、確かにそう言った。
僕の言葉を待つことなく彼女は僕の唇に必死に自分の唇を重ねた。
背が届かなくてもどかしくて、そんな姿も愛しく思う。
たまにはこんなのも良い、そう思って僕は手を出すことなくされるがままになってみた。
僕に必死にキスをしていた聖ちゃんはついに起き上がって僕の上に馬乗りになった、
そして僕の目元を手で隠して唇を落としてきた。
ーーー僕は嬉しくて新鮮で嬉しさが止まらない。
ホテルに置いてあったガウンを羽織っている僕たちだけど特に聖ちゃんははだけそうで僕は理性を保つ自信がなかった。
僕は良い気になって聖ちゃんに目元を覆われながら、
いつもの聖ちゃんになってた。
ーーーだから気がつかなかった、僕の頰に水滴が落ちてくるまで。
その水滴で我に返った僕は目元にあった彼女の両手を奪った。


聖ちゃんはそう言った。


聖ちゃんはそう言った。
ーーーだけど何の話か僕にはさっぱり分からない。
あの子って誰ーーー?
聖ちゃん、僕は本当に分からないよ。

僕が元の位置に戻った聖ちゃんに手を添えようとしたら彼女はまた突然僕にしがみついてきた。
ーーー情緒不安定の少女のようだ。

僕は彼女の頭を慰めるようにポンポン優しく撫で伝えた。

彼女は返事の代わりに首を縦に振り僕の胸の中で大粒の涙をこぼした。
小さい子供を慰めるかのように僕はひたすら優しく撫で続け気づけばお互いに眠りについていた。
ーーー見覚えはないけど僕の責任はあると思う。
聖ちゃんを不安にさせてしまった僕の責任は。
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