聖ちゃんたちの気持ち良さそうな寝顔を見てぼくも眠りにつこうと思ったけど、
会えたことで興奮してしまったのか中々寝付けなかった。
*
寒い季節になっていたから上着を羽織って僕はホテルのバルコニー出た。
冬空を眺めながら福岡に来た時から今日までの仕事のこと、
そして来月迎える聖ちゃんとの結婚記念のことを考えていた。
僕たちは順序が違うけど入籍よりも先に子供が出来た。
聖ちゃんは一生懸命僕を支えてくれて子供達も愛情たっぷりに育ててくれている。
時々子供達を預けて出かけることはあっても、
もう少し自由な時間があっても良いんじゃないかなと感じることは多々あった。
ーーーそれに僕が聖ちゃんと二人で朝から子供達を気にすることなく出かけたい。
母さんに頼むべきなのか、一時保育に入れるべきなのか。
それとも聖ちゃんが心許せる原口さんに頼むべきなのか、
そればかり考えていた。
*
その時に優しい香りが僕の背中を包んで来た。
すぐに分かった、聖ちゃんが僕の背後から抱きしめてきたことくらい。
僕はいつものようにクスッと笑って彼女の手の上に自分の手を添えた。
聖
寝ないの?
昌
多分聖ちゃん達に会えて嬉しくて興奮して、寝付けなくなってしまいました(笑)
聖
子供みたい・・・笑
昌
ーーーそう思うならこの手を離してくれませんか?笑
けれど聖ちゃんは僕の背中で首を横に振った。
聖
ーーーいや。離さない。
軽く鼻をすする音、そして少しの鼻が詰まった声。
昌
聖ちゃん・・・?
僕はそこで気がついた、彼女が泣いていることに。
聖
ーーこの3週間、寂しかったんだから。今は晶くんを感じさせてよ。
僕は後ろで呟く聖ちゃんの表情が気になって、
少し強引に彼女の手を引き離した。
昌
そしたら僕が抱きしめられないじゃないですか。僕が聖ちゃんの顔を見れないじゃないですか。
そして自分が羽織ってた上着を彼女の背中に羽織わせて彼女の存在を噛みしめるように強く強く抱きしめた。
昌
ーーーやっと会えた。ーーーやっと聖ちゃんを感じられます。
聖ちゃんもそれに納得するかのように、
僕の背中に手を回して頷いていた。
タイと東京で離れた5年が嘘のように僕は彼女と離れた3週間が本当に長く感じた。
多分、今誰かにきっと引き離されたら僕はもう生きていけない。
そう感じながら、強く強く彼女を抱きしめた。
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