僕が聖ちゃんの病室に着くとまだ彼女は眠っていた。
僕は聖ちゃんの手を握りしめて顔を埋めた。
*
それから程なくして聖ちゃんの手がピクッと動いて、
僕もハッと顔を上げた。




看護師さんが入ってきて聖ちゃんにたくさん水分を摂るようにと指示を出した。
帝王切開で産んだ場合、
ずーと同じ体勢でいると血が固まってしまうことがあるみたいで痛くても少しずつ明日から動かなければならない。
「赤ちゃんに会えると思って頑張りましょう!」
看護師さんに笑顔で言われて、
僕は何もできない自分に無性に腹が立った。

聖ちゃんが起き上がって看護師さんに尋ねた。
「今日は車椅子で行きましょうか。」
すぐに用意してくれて僕は聖ちゃんの乗る車椅子を押してNICUに向かった。
そしてガラス越しで見るNICUの部屋にはたくさんの新生児たちが並んでいた。
僕たちの子供達は一つのベットに2人で並んでいて、
偶然にも手をつないでいるのが見えたーーー。
聖ちゃんはガラスに手を添えて涙を流しながら言った。


必死にありったけの想いが伝わるように伝えた。

僕はしゃがんで聖ちゃんを抱きしめた。
「無事に生まれて良かったです、おめでとうございます!」
「先生のおかげです、本当にありがとうございました」
「黒岩さんが頑張ったからですよ。奥様はこれから授乳に入ってもらうので小松と一緒に中に入ってもらっても良いですか?旦那さんは赤ちゃん次第ですが明日以降中に入れると思います。」
「ありがとうございます。」
そして聖ちゃんは小松さんと中の部屋に消えた。
マスクして中に入って、
我が子を抱く聖ちゃんをガラス越しから見ててーーー。
もう母親の顔になったんだな、
そう思うとまた涙が出そうになった。
*
一足先に病室で待っていようと戻ったら、
既に忘れていた母さんが病室の前にいた。
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