僕がベランダに出て聖ちゃんの横に立つと彼女は微笑を浮かべて空を見上げた。
それでも必死に涙を堪えているのが僕にでも分かった。
*

とても静寂な2人の沈黙の時間はいつも以上に長く感じてすごく居心地が悪い。
でもこの静寂を破ってくれたのは聖ちゃんだ。
ただ・・・僕には彼女の言ってる意味が全く理解出来なくて固まることしか出来なかった。
ーーー僕が聖ちゃんを嫌いになること、
そんなことは絶対にありえないのに。

聖ちゃんは僕の問いかけにとても気まずそうに口を閉じてしまったけど「お願い、言って?」という僕の問いかけにまた涙を浮かべて話し出した。


聖ちゃんは首を縦に振った。

ーーー納得できた部分がある。
あの日、先輩たちが帰った後・・・
聖ちゃんは珍しく自分から抱きついて来た。
僕は汗臭いからと彼女を拒否した記憶を思い出していた。
ーーー自制心だけのためにやったことが、聖ちゃんを傷つけてしまっていたかも知れない。
そして僕は初めて聞く聖ちゃんからの告白にただ驚くことしか出来なかった。
それでも彼女は話を続けた。

僕はただ聞いているだけで、
彼女の想いに何も答えられなかった。
ひたすら自分の言動を思い返しながら、
自分の言葉足らずが行動が彼女を傷つけてしまっていたことを後悔した。

自分自身が分からないという聖ちゃんーーー、
感情のコントロールが分からないことは僕もわかる。
僕が中学高校の時ーー、そうだったから。

気づけば涙が消えていた聖ちゃん、
僕の方を向いてニコッと笑って言った。

その笑顔はーーー、
夏の夜空に照らされて丁度良いくらいの暑さで聖ちゃんの長い髪の毛が肌について、
とても美しく聡明に感じたーーー。

言うことだけ言って、
部屋に入ろうとする聖ちゃんを僕は引き止めたくて必死に言葉を考えた。
ーーーそれなのに適切な言葉が出てこなくて、
自分の情けなさを改めて感じた。



それだけ言うと、
聖ちゃんは室内ーーー、
僕から避けるように寝室へ向かった。
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