【 中学聖日記_妄想】#81. 醜さの表れ*

中学聖日記_妄想

僕がベランダに出て聖ちゃんの横に立つと彼女は微笑を浮かべて空を見上げた。
それでも必死に涙を堪えているのが僕にでも分かった。

*

聖
私ね、もう嫌われたと思ってたーーー。

とても静寂な2人の沈黙の時間はいつも以上に長く感じてすごく居心地が悪い。
でもこの静寂を破ってくれたのは聖ちゃんだ。
ただ・・・僕には彼女の言ってる意味が全く理解出来なくて固まることしか出来なかった。
ーーー僕が聖ちゃんを嫌いになること、
そんなことは絶対にありえないのに。

昌
どうしてですか?

聖ちゃんは僕の問いかけにとても気まずそうに口を閉じてしまったけど「お願い、言って?」という僕の問いかけにまた涙を浮かべて話し出した。

昌
ーーー私知らなかったの。晶くんの仲良くしている先輩の中に女性がいたこと。みんな男性だとどこかで思ってたの。
昌
今井さんのこと?

聖ちゃんは首を縦に振った。

聖
凄く嬉しかったんだよ?会社の人たちが来てくれて、晶くんの様子を知れたこと。でもそれと同じくらいに嫉妬したの。私よりずっと近くにあんな素敵な人がいる、今の私は何も返せていないし愛想尽かされても仕方ないなってあの日からずーと思ってた。

ーーー納得できた部分がある。
あの日、先輩たちが帰った後・・・
聖ちゃんは珍しく自分から抱きついて来た。
僕は汗臭いからと彼女を拒否した記憶を思い出していた。
ーーー自制心だけのためにやったことが、聖ちゃんを傷つけてしまっていたかも知れない。
そして僕は初めて聞く聖ちゃんからの告白にただ驚くことしか出来なかった。
それでも彼女は話を続けた。

聖
そんな時だったんだよね、晶くんに澪と潤を見てるから出かけて来たら?って言われたのが。私は・・・子供達を預けてでも晶くんと2人になりたかった・・!もっともっと子供達がいたら話せないこと出来ないことを2人で分かち合いたかった、でも晶くんは違くて。まるで邪魔だから出掛けてくれ、と言われているように感じて。だから・・・2人で花火大会に行きたい、と言ってくれてすごく嬉しかった。

僕はただ聞いているだけで、
彼女の想いに何も答えられなかった。
ひたすら自分の言動を思い返しながら、
自分の言葉足らずが行動が彼女を傷つけてしまっていたことを後悔した。

聖
30も過ぎた大の大人が引くよね(笑)自分でも自分がこんなになるなんて思ってなくて初めてのことでどうしたら良いのか分からないんだ。

自分自身が分からないという聖ちゃんーーー、
感情のコントロールが分からないことは僕もわかる。
僕が中学高校の時ーー、そうだったから。

聖
結局、私は外見だけ大人で中身は昔のままなんだよね(笑)

気づけば涙が消えていた聖ちゃん、
僕の方を向いてニコッと笑って言った。

聖
ーーー本当に誘ってくれてありがとう。

その笑顔はーーー、
夏の夜空に照らされて丁度良いくらいの暑さで聖ちゃんの長い髪の毛が肌について、
とても美しく聡明に感じたーーー。

昌
僕はーーー聖ちゃんを嫌いになったりなんてことしません!

言うことだけ言って、
部屋に入ろうとする聖ちゃんを僕は引き止めたくて必死に言葉を考えた。
ーーーそれなのに適切な言葉が出てこなくて、
自分の情けなさを改めて感じた。

聖
この世の中に100%なんてないでしょ?いつ何が起こるか分からない、人の気持ちも一緒だよ。だから私はここ最近不安で心配で仕方なかった。
昌
確かに100%はないかもしれません、でも僕の気持ちは嘘じゃないです!
聖
じゃあ何でキャバクラに行ったことを隠してるの?なんで好きって言ってくれないの?・・・こんな重い自分が嫌なの。ーーー私は気持ちをまっすぐに伝えてくれていた昔の晶くんの方が好きだった。

それだけ言うと、
聖ちゃんは室内ーーー、
僕から避けるように寝室へ向かった。

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