【 中学聖日記_妄想 】#80. 涙の訳を知りたい*

中学聖日記_妄想

結局ーーー、
臆病な僕は聖ちゃんに手も出せず、
ただ内心オドオドしながら彼女の横に座ってた。

聖
こうして2人で過ごすの久しぶりだよね。ここ最近はいつも澪や潤のどちらか起きちゃっているもんね。ーーー本当に今日はありがとう。

沈黙を破ったのは聖ちゃんで、
僕の自制心とは裏腹に彼女は僕の手を握った。

昌
いえ、思った以上に育時の大変さを知りました。もっと手伝うようにします!今日はどこに行ってたんですか?

ぼくはそっと手を離したーーー。
でも聖ちゃんはぼくの質問に答えることはなく、
ただ悲しい顔をして僕に言った。

聖
私に飽きた?
昌
はっ?何の話ですか?
聖
ーーごめん、ウソ。お風呂に入ってくるね!

そう言うとすぐに立ち上がり洗面所に消えた聖ちゃんの後を追うように洗面所に向かったけど、
彼女のすすり泣く声が聞こえて、
ぼくはドアノブに手をかけたまま話しかけられなくなってしまった。

*

聖ちゃんのお風呂は長いーーーー。
本当に長くて、
待ちきれなくて寝てしまうことが多い。
でも今日は・・・
何となく寝てはダメな気がした。
さっきの言葉の意味をきちんと聞かなければならない気がした。
そして僕もーーー、
花火大会のことを話さなければならないと思った。

聖
あれ?珍しいね、起きていたんだね(笑)

サッパリした様子でお風呂から出て来た聖ちゃんは本当に不用心だ。
ぼくじゃない他の人の前でもこんな姿をさらけ出して来たのだろうか。
真夏だからノースリーブに短パン、
それに髪の毛が濡れていて余計にぼくをそそる。
冷蔵庫から日課となってる炭酸水を飲み込んでる聖ちゃんに僕は伝えた。

昌
もうすぐ小星平で花火大会があるみたいなんです。知っていますか?
聖
そうなんだ?去年の今頃、プロポーズしてくれたんだね!懐かしいねー!

目を細めて思い出してる様子の聖ちゃん。

昌
まぁ入籍するまで色々ありましたけどね(笑)
聖
ーーそういうこというなら(笑)はい、この話は終わりね!(笑)

僕の隣に座り直した聖ちゃん、
先ほどの顔が嘘のように楽しそうな笑顔になってた。
ーーー女ってわっかんねぇ、と正直思った。

昌
で、ここからが本題なんですけど。あの花火大会は去年も言いましたけど思い入れが深い場所です。今年も行きませんか?
聖
花火大会に?ーーー行きたいけど、万が一のことを考えると・・・

多分聖ちゃんが言ってるのは僕も考えたこと。
もし澪と潤を連れて行って火が飛び散ったら、
夜だし危険が伴ってる。
万が一のことを備えても2人を連れて行くのは困難だということは僕にもわかってた。

昌
澪と潤は母さんに預けようと思ってます。僕は聖ちゃんと2人で・・・花火大会に行きたいです。
聖
そんな・・・

聖ちゃんは口元を押さえて、
突然目に涙をためて「ごめん」と言ってベランダに消えた。
僕はーーー、
意味が分からずただ彼女の後についてベランダに出ることだけしか出来なかった。

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