結局ーーー、
臆病な僕は聖ちゃんに手も出せず、
ただ内心オドオドしながら彼女の横に座ってた。
*
沈黙を破ったのは聖ちゃんで、
僕の自制心とは裏腹に彼女は僕の手を握った。
ぼくはそっと手を離したーーー。
でも聖ちゃんはぼくの質問に答えることはなく、
ただ悲しい顔をして僕に言った。
そう言うとすぐに立ち上がり洗面所に消えた聖ちゃんの後を追うように洗面所に向かったけど、
彼女のすすり泣く声が聞こえて、
ぼくはドアノブに手をかけたまま話しかけられなくなってしまった。
*
聖ちゃんのお風呂は長いーーーー。
本当に長くて、
待ちきれなくて寝てしまうことが多い。
でも今日は・・・
何となく寝てはダメな気がした。
さっきの言葉の意味をきちんと聞かなければならない気がした。
そして僕もーーー、
花火大会のことを話さなければならないと思った。
サッパリした様子でお風呂から出て来た聖ちゃんは本当に不用心だ。
ぼくじゃない他の人の前でもこんな姿をさらけ出して来たのだろうか。
真夏だからノースリーブに短パン、
それに髪の毛が濡れていて余計にぼくをそそる。
冷蔵庫から日課となってる炭酸水を飲み込んでる聖ちゃんに僕は伝えた。
目を細めて思い出してる様子の聖ちゃん。
僕の隣に座り直した聖ちゃん、
先ほどの顔が嘘のように楽しそうな笑顔になってた。
ーーー女ってわっかんねぇ、と正直思った。
多分聖ちゃんが言ってるのは僕も考えたこと。
もし澪と潤を連れて行って火が飛び散ったら、
夜だし危険が伴ってる。
万が一のことを備えても2人を連れて行くのは困難だということは僕にもわかってた。
聖ちゃんは口元を押さえて、
突然目に涙をためて「ごめん」と言ってベランダに消えた。
僕はーーー、
意味が分からずただ彼女の後についてベランダに出ることだけしか出来なかった。
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