中学校で先生に出会って、引き離されることを何度も繰り返した僕にはもともと母さんに対しての嫌悪感から自宅に帰りたいという気持ちを抱いたことはなかった。
だけど今ーーーー、
大切な家族のために走って、
ただただ会いたいという気持ちが強くて、
ただただ自宅に帰りたいと思う自分がいる。
*
僕は定時に帰れても自宅に戻るのは20時前になることが多い。
毎日、子供達は19時台に就寝するので聖ちゃんも一緒に寝落ちしてしまうことも多い。
今日もいつものように聖ちゃんは澪のベットに寄りかかって眠りに落ちていた。
僕はそっと彼女に近づいてブランケットをかけ寝室を後にして、
1人夕飯を食べる。
寂しくないと言ったら嘘になるけど、
潤の酷い夜泣きでいつも寝不足の聖ちゃんを僕は起こすことは出来ない。

僕が夕飯を食べている時にいつも彼女は起きてくる。

そう言っても彼女は休まないから、僕は今日に関しては少しだけ安心した。
彼女もホッとしたのか、
テレビをつけながら洗濯物をたたみ始めた。
*

僕は食事や食器洗いを終えて彼女の横に座った。
いつもなら真っ先に部屋着に着替えるのにスーツのまま座ったから聖ちゃんもすごく驚いた顔をしていた。

ただお茶をしただけだと思っている聖ちゃんからしたら疑問だろう。
だけど俺は先輩と2人で会話した時からずっと不安だったーーー。
あの頃の僕と先輩が同じ状況に立たされている今、もしかしたら同じことが起こるんじゃないかと。


聖ちゃんの顔は少しずつ困惑している表情に変わった。
だけど僕は先輩が言わないと言った以上は彼の気持ちを尊重するべきだと思ったからそこはあえて隠した。


聖ちゃんは微笑んで僕に言った。

聖ちゃんは僕を安心させるように頭から抱えるように抱きしめてくれた。
不思議だなーーー、
どうしてこうも彼女の腕の中はこんなにも落ち着くんだろう。
どうして彼女の腕の中はこんなに温かい気持ちになれて、
愛しく感じるんだろうーーー。
気づけば僕の瞳からは涙がこぼれ落ちていた。
聖ちゃんはそんな僕を強く強く抱きしめてくれていた。
コメント