入籍して1ヶ月、
聖ちゃんの苗字が変わっただけで特別な変化は感じなかった。
それよりも聖ちゃんは今、辛い悪阻と戦っている。
朝ごはんもお弁当も作れないことが増えた中、
必ず夕飯だけはきちんと用意されていることに僕は驚きと感謝の気持ちでいっぱいになる。
聖
何もしないのは本当にダメな人になってしまうから。
聖ちゃんはそう言うけど僕はそうは思わない。
人には誰しも出来ない時があるわけで、
僕は完璧主義の聖ちゃんを時々損だなと思うことがある。
昌
ーーー今日は会社の同期と飲む約束をしてるから夕飯はいらないよ。
僕は時々ウソをつくようになった。
聖ちゃんが気が付いているかまでは分からないけど、
彼女の負担を少しでも減らし、
彼女を少しでも休ませる時間を増やすために。
ちょうど仕事も忙しい時期に入っていたから、
外で軽く済ませるためにもお互いにとって良い選択だと思った。
聖
平日に楽させてもらってる分、動かないと。
それでも週末は何が何でも家事をしようとする聖ちゃんに対して僕は冷たい視線を送ることもある。
昌
休めるときに休まないと同じことを繰り返しますよ!たまには僕の言うことも聞いてくださいよ!
そして最初は優しく伝えていても頑固な彼女に苛立って最後は強く言うことを今は繰り返している。
聖ちゃんの辛さを目の前にしてーーー、
食べたい物を口にしても気持ち悪くなってしまう。
時には食べる前に匂いだけでトイレに駆け込んでしまうこともある。
僕は苦しむ彼女の背中をさすりながら呟く。
昌
ごめん・・・。聖ちゃんにだけ辛い思いをさせてごめん。
けど彼女は悪阻に関して弱音を吐くことはしなかった。
聖
赤ちゃんが生きている証だから、だから私も頑張るよ。
そう言う聖ちゃんはもう母なんだな、
そう思った瞬間でもあった。
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