[ 聖’s Story ]
嬉しかった。
純粋にーーー。
彼を選んで間違いじゃなかった、そう思えた。
*
純粋で真面目でーーー、
真っ直ぐなところは中学生の頃から変わってない。
だけどーーー、
彼が高校生になった頃から少しずつ感じてた差。
ーーあんなに真っ直ぐ気持ちを伝えてくれていた彼に少しの物足りなさを感じ始めて、
時々何を考えてるのか分からなくて不安になったり。
独りよがりの気持ちなのかなと悩んだり。
本人に伝えたくても家にいなくてーーー。
だからこそ言葉が欲しかったーーー。
行動から彼の気持ちは十分に伝わってるのに私は行動よりも言葉が欲しかった。
特に一緒に暮らし始めて大人になるにつれて彼の言葉数は減って、
子供達が生まれて幸せなはずなのに私はいつも不安を抱えていた。
よく世間でいう「私のこと本当に好きなの?」と言う女子高生たちの気持ちがこの歳になって分かったの。
でもね、きっとそれはーーー。
私が彼を・・・
彼が私を想ってくれる以上に好きになってしまったからだと思う。
*
あの頃の私はいつも優柔不断で周りの意見に流されることが多かった。
だからきっと勝太郎さんとの結婚も流れだ決めてしまったんだと思うのーーー。
確かに勝太郎さんに対する気持ちはあった、それは認める。
でも今の晶くんに対する気持ちとは比べる値にもならないーーー。
勝太郎さんとのことになるといつも不安になる彼。
少しだけ理解はできるーーー。
でも私に何が出来るのかな?
晶くんを安心させるために私は何ができるんだろう。
*
先ほどまで涙を流していた晶くんはーーー、
今度は涙を流す私を不思議に思ってる。
不思議だよね、
自分でも不思議。
晶くんのことになると、涙が止まらないの。
私たちは長いこと引き離された、
あの経験があったから今一緒にいるのかもしれない。
でもーーー、
やっばり離れることを決断するのは本当に辛かった。
何度ーーー、
玄関先に叫ぶ晶くんの手をとってしまおうと思ったか。
何度ーーー、
彼を抱きしめてしまおうと思ったか。
それでもそれを選択しなかったのはきっとその先にあるこの未来を想像出来たからかもしれないね。
私は晶くんに抱きついた、
そんな私を彼は優しく包み込んでくれる。
いつも思う、
こう言う時はどちらが年上か分からないね。
答えなんて聞かなくても意地悪く聞いてくる彼に頷いたのにーー。
そんな意地悪を読まれたのか、潤の鳴き声でその夢は崩された。
私は「くそ・・笑」と言いながら本当に悔しそうにする晶くんを置いて寝室に向かったの。
ーーー戻ってくるからね、そう伝えて。
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