結局子供達はそのまま起きてしまったようで、
聖ちゃんは中で子供達に語りかけながらオムツを取り替えているのが聞こえた。
*
2人を着替えさせて抱えて出てきた聖ちゃんは、
先ほどのことは何もなかったように子供達をバウンサーに乗せてから残されたご飯を食べ始めた。
僕はーーー、ただ動けずにコーヒーを飲んでた。
子供達の楽しそうな笑顔を見ながら、
心の中ではどうして良いのか分からず聖ちゃんの前から動けずにいた。
だけどこの静寂を、
緊迫した状態を抜け出させてくれたのは聖ちゃんだった。

食事を終わらせて、
フォークを置いた聖ちゃんが言葉を発した。

何を答えて良いのか分からない僕はチキンだと思う。
いつもそう、
聖ちゃんの前ではチキンになってしまうんだ。

微笑を浮かべていたけど、
何となく本心じゃない気もした。
ーーー先輩たちが来た夜から何となく様子が変だから。

その奥に何を思っているのか、
何を隠しているのか問い詰めることもなく僕は聖ちゃんに答えるだけだった。
*
聖ちゃんが家を出たのはお昼前、
子供達のミルクやオムツなどの説明を受けてから。
耳が痛くなるほど何度も聞かされ、
「大丈夫ですから!早く行きなさいっ!」と僕は追い出した。
僕はあえて聖ちゃんがどこに行くか聞かなかった。
きっと聞いたら戻ってくる時間を予想してしまう、
だから彼女には思う存分の週末のほんの少しの時間を楽しんで欲しいと思ったからだ。
聖ちゃんが行ってから、
僕は澪と潤を連れて散歩に出た。
いつも聖ちゃんが行くコースは知ってる、
だから子供達には新鮮さを味わって欲しくてあえて違う道を選んだ。
ベビーカーに乗る2人はとても楽しそうにキョロキョロと外を見ている、
そのうちに澪から眠りに落ち、
潤も程なくして深い眠りに入った。
僕はーーー、
夏空を眺めながら聖ちゃんとのことを思い出していた。
そしてーーー、
もうすぐ小星平の花火大会だということに気がついた。
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