聖ちゃんの体調は少しずつ良くなってきたようで、
先生の見込み通り1週間で退院が決まった。
聖ちゃんが一番気にしていた赤ちゃんたちも問題なく成長していると言ってもらえて彼女自身もすごく安心したようだった。
(( 今、自宅に戻ったよ。綺麗にしてくれていてありがとう。))
どうしても退院に付き合いたかったけど抜けられない打ち合わせが入ってしまい、
僕は行くことができなかった。
だから聖ちゃんが戻って幻滅されないように前日の日は定時で帰宅して家の大掃除をした。
この1週間で目覚ましで起きれるように・・・はならなくてもギリギリまで寝ることはなくなり、
さらには残業もやっと落ち着いてきた。
*
久しぶりに聞く聖ちゃんからの声になんだか僕はとても恥ずかしくて俯きながらニヤッとしてしまった。
久しぶりに向かい合って食べる聖ちゃんのご飯も、
ご飯の後の2人の時間もたった1週間のことなのにとても新鮮に思えた。
嬉しそうに寝室から持ってきたのは聖ちゃんが入院中に生まれてくる赤ちゃんに作っていると言っていた帽子とベビーシューズだった!
何となくの性別しか分かってないのに気が早いかな、と言いながら2人分完成したのを見て僕も心がとてもホッコリした。
嬉しそうに子供のように僕に完成した編み物を見せてくる姿が本当にたまらなく愛しかった。
突然甘えて僕の腕にしがみついてくる聖ちゃんが愛しくて、
触れたい衝動を抑えて僕は彼女の肩を引き寄せた。
*
その夜、聖ちゃんが寝室で僕がリビングで仕事の残りをしていたら大きな声が響いた。
聖ちゃんにしては大きな声だったから僕はすぐに寝室に駆け込むと何食わぬ顔で僕を見ている。
何かあったわけじゃなさそう、と安堵を覚えた。
トントンと普段僕が寝ている場所に横並びして座れと指示してきた。
寝れないのかな、寝れるまで一緒にいて欲しいのかな、とか勝手に想像が膨らむ。
だけど彼女は僕の手を取り、それを自分のお腹に当てた。
そうーー、聖ちゃんは胎動を僕に必死に伝えようとしてくれていた。
安定期に入りすぐに魚が動いてる感覚はあっても胎動なのか分からなく、入院中に初めてハッキリした胎動を感じたと言ってた聖ちゃん。
僕がお見舞いに行くときはいつも静かな子達で感じることが出来なかった。
だからーー、聖ちゃんも僕に伝えることでとても興奮していた。
俺は聖ちゃんのお腹に手と耳を当てて目を閉じた。
まだこの子達に会えるのは数ヶ月先の話だけど、
聖ちゃんのお腹の中でこうやって育ってる。
とても幸せで、
僕はいつか見た夢のことを思い出していた。
ーーーだからなのか、あまりにも幸せすぎて自分が涙を流してることに気が付きもしなかった。
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