【 君がいる場所 】 #06.

君がいる場所

6.

週が明けて月曜日、
いつものように登校していつものように友達と過ごす。
優のちょっかいにちょっと対応しながら、
いつものような時間を過ごす。
何もない、
何も変わらない日常を私は送る。

「秦野さん、いる?」
だけどこの日だけ・・・
唯一変わったことと言えば、広瀬先輩が昼休みを使って私に会いに来たことだった。
私自身も驚き、クラスの女子なんて黄色い悲鳴あげてるし、なんなら隣のクラスからも見に来ちゃってるし・・・
さすが人気者は違うなと実感した。
「わたし・・・ですか?」
「ああ、ちょっと話せる?」
私自身も驚きを隠せないけど優なんてガッツポーズ出しちゃってるし、
仲良くしている莉子はキャーとか言いながら私の肩をトントン何度も叩いてるから痛い。
「ーーーはい。」
広瀬先輩は私に用があるようで、私は先輩が待つ廊下に出た。
それはそれはとても騒がしくて全然先輩の声が聞こえなくて困惑する私。
「ーーーごめん。向こうに移動しようか。」
その声に先輩も困惑してて、私は先輩の後を付いていく。
先輩が移動したのは高等部と中等部を繋ぐ渡り廊下。
「ーーー巻き込んで悪い。」
「凄いですよね、先輩の人気。アイドル並みですね(笑)」
「ーーーもう行かねえわ(笑)用件だけ先に。ゆずが・・・これを君に渡してくれって。」
それはスケート靴の形をしたレジンで作られたキーホルダーだった。
「えっ!ありがとうございます!かわいい!手作りですか?」
私がパッと笑顔で先輩を見たから先輩は気まずそうに私から視線を逸らした。
「ーーーゆずが昨日作ってた。君との時間が楽しかったみたいでずーと君の話をしてたよ(笑)あいつ母親があまり家にいないからウチで預かってんだけど、俺みたいな野郎ではなく姉ちゃんが欲しかったんだろうなと思ったわ(笑)」
「ん?ゆずちゃんは先輩の妹ではなくて?」
「正確には姪っ子だな。姉貴の子供、ただ姉貴がシングルだから俺の母さんがほとんど預かってる。」
「そーなんですね・・・」
私も親がいない分際だから、ゆずちゃんの寂しさ分かる気がする。
何か紛れるものはないかな、と少し考える。
でも今すぐは思いつかなくて黙ってしまう。
「要件はそれだけ。なんか・・・戻って質問攻めにされたらゴメンな。」
「いえ、大丈夫です。今日も部活ですか?頑張ってくださいね!」
私は笑顔で伝え会釈してその場を去る。
ーーーのはずなんだけど、なぜか先輩に腕を掴まれた。
えっ、と振り返るーーー・・・。
「あっ・・・悪いっ!!」
パッと離して気まずそうにする先輩になぜかこっちまで恥ずかしくなる。
「いえ・・・では失礼します」
平然を装ったけど、正直ドキドキした。
緊張ーーー、とはまた違う胸の高鳴りが今でも動いている。
ゴツかった。
お父さんやお兄ちゃんとは違う、
男らしい大きな手だったーーー・・・。

先輩の言う通りでクラスに戻ると私は質問攻めに合う。
「告白されたか?!」
優もからかうように私にちょっかいを出す。
「違うよ!所用で呼ばれただけだから。」
さっき触れられた手の感触がまだドキドキしてて優の顔も見れない。
それに何となくゆずちゃんとのことは誰にも言いたくなくて黙っておくことにした。
ーーーなんか二人の秘密みたいで、ちょっとそれもまたドキドキした。

極力手を洗いたくない感情とはこのことで、
なるべく洗いたくなかったけどそうはいかなくて。
手を洗った時には物寂しさを感じた。

多分その日から、私の感情にも変化があったんだと思う。
尊敬や憧れだった先輩と、
少し話すようになって、
あの日から少しずつ恋心に変わっていったんだと思う。
先輩を見かければ心臓がバクバクするようになり、
掴まれた腕の感触を覚えるーーー・・・。
基本的に接点がないけど、
すれ違えばお互いに会釈する程度の関係にはなった。
ただ人には欲が出るもので、
もっと話したい、もっと近づきたいと思ってしまう感情が出てしまう時もあった。
そんな時、大きな問題が起きたーーー。

それは梅雨に入る6月初旬の、
ジメジメした季節のことだった。

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