【 短編 】嘘から始まる本音*。

短編小説*

◆ イラストはすべてAIに作ってもらいました★

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《 嘘つき 》

嘘つき、嘘つきーーー。
嘘つき!!!
私な残業だって言ったくせに、
会社の飲み会だなんて聞いてない!!!
「待てよ!話を聞けってば!」
「話!?残業だって嘘ついて飲み会にいましたって?!そもそも飲み会なのに何で嘘つく必要があったの?!」
「・・・お前いつもおこんじゃん。俺が同僚や友達と出かけるとめちゃくちゃ不機嫌になんだろ、本当のこと話してそうなるのが嫌だったんなだよ。」
つまり私が悪いってこと?
不安なんだもん、仕方なじゃない!
「分かった、もう良い。」
私はそのままその場を走り去ったーーー。
知らない、もう知らないーーー・・・。
飲み会でも何でも行けばいいのよ!もう知らない!このウソつき!

《 着信拒否 》

私はもう知らないーーー・・・。
悪いのは向こう、私はなにも悪いことなんてしていない。
自宅に戻っても鳴り響く携帯電話、付き合って初めて着信拒否をした。
メールも既読スルー、電話なんて出るわけがない。
私が悪いと、私が怒るから嘘をついたと言った。
ーーー悪いのは私じゃない、彼だ。私は自分自身にそう言い聞かせた。
「言い過ぎた、悪かった。頼むから電話に出て欲しい。」
最後に見たメールの内容はこれ、そしてそのまま私は眠りに落ちた。

《 仕事中に・・・》

彼からの連絡を無視するようになって、会わなくなって数日。
少しずつ彼のいない生活に慣れてきた。
クラスの友達と話すのは楽しい、同年代だから気を遣うこともなく和気あいあいと話せる。
男女関係なく話せるって落ち着くなぁって思い始めていた。

「な・・・何でここにいるの!?」
いつものように友達と一緒に学校から帰り、帰路に向かっている途中の最寄の駅・・・
そこには偶然とは言い難い彼の姿があるーーー。
「ーーーそろそろ降りてくるかなと待ってた。」
「は?仕事は?」
「・・・連絡しても返事もしない、だったらお前が学校の時に会いに来るしか話が出来ねーだろ?」
少し困惑した表情の彼、私はいたたまれなくなり視線を落とす。
「ちょっと話せるか?」
私の気持ちを感じ取った彼は問いかけたけど、私は何も言わずに彼の前を通り過ぎて改札を出た。
「ーーーごめん。私には話すことは・・・」
改札の中と外、誰もいない空間で話をする。
「・・・ゴメン。会社に戻るわーーー。」
ちょうどその時に彼の携帯が着信を受け、もの苦しそうな顔をして彼が私に言う。
「ーーーうん。じゃあね。」
きっと私は無表情だったと思う、心に感情もなかった。
「ーーー遅くなると思うけど、家の近くの公園まで行く。今の気持ちをきちんと聞かせて欲しい。」
私は頷いた、伝えなきゃと思った。
こうして仕事の合間に会いに来てくれた誠実な人に対してずっと逃げているわけにはいかない、
だからきちんと今の気持ちを今後どうしたいかを伝えなければならないと私も悟った。

《 私の気持ち 》

本当に仕事の後、彼は私の家の近くの公園にやって来た。
私の恰好を見て彼は凄く驚いていたーーー。
腹出しキャミソールに黒の短パン、こんな格好は彼の前でしたことがない。
8歳も年上だから少しでも違和感がないように、
彼に会う時はいつも少しだけ自分の普段より背伸びしていたから。

「ーーー普段友達と遊ぶときはそんな格好してるのか?」
「うん、そうだよ。」
「すげーな(笑)目のやり場にみんな困るだろうな(笑)」
「友達みんなそうだからね。ね、8歳って結構な差だよね(笑)今なら悠馬さんが言ってた意味が分かる気がする(笑)」
彼に恋をしたのは私が先、5回振られて6回目の告白で諦めたように付き合ってくれた。
断られていた理由は年が離れているからという理由だけだった。
高校生と社会人、下手したら犯罪になってしまう。多分彼はそれを分かってたんだと思う。
「ーーー分かる気がするって?」
「8歳の差は大きかったね(笑)悠馬さんが私を振り続けていた理由、分かったよ。それなのに何度も告白して、無理に付き合わせるような形を取ってゴメンね。」
「無理に付き合っているわけじゃない・・・」
「まだ数日だけど悠馬さんと連絡取らなくてその生活に少しずつ慣れて来たんだよねぇ。やっぱりさ、高校生は高校生らしく同年代と付き合おうかな(笑)もう悠馬さんは良いや・・・」
「良いやって・・・本心じゃないだろ?」
「結構頑張ったんだよ?釣り合うようになりたいって思って、普段着ない服を着たり、お化粧もしたりして見たけど・・・疲れちゃった。そのままの自分を愛してくれる人に出会いたい。それが私の今の本心。悠馬さんのことは大好きだけど、好きでいる自分にも疲れちゃった。わたし、無理しちゃうから・・・」
遠回しの別れ話、鈍感な彼でも絶対に気が付いている。
「無理させているの気が付かなくて申し訳なかった。だけどオレも同じようなもんだなーーー。杏奈はまだ高校生だからって心のどこかで思ってて、どこか遠慮してる部分があった。杏奈が傷つく、ケンカしたくない、怒らせたくない気持ちが先走って今回のウソにも繋がった。申し訳なかった。許してほしいと言える立場ではない、だけどオレはこのままここで終わらせるのは間違えているとも思う。」
「お互いに気を使ってしまうなら付き合っている意味ない、一緒にいる意味なくない?」
「ーーー今から自然な自分たちでいられるように心がけていけばいいんじゃないのか?確かに杏奈の年齢があってお前の告白は何度も断った。だけど一緒に過ごして杏奈の純粋さや無邪気さに気が付けば心惹かれている自分がいる。だから手放したいとは全く思えないんだ。ーーーもう少しだけ俺との未来を考えてみて欲しい。」
彼はすぐに私に答えを求めなかった。
時間をかけて考えてくれていいと、それでも無理だと思ったら素直に言って欲しいって。
その時は有無も言わずに諦めるから、と。

《 仲直り 》

彼から宿題を出されたように私は彼との未来について考えた。
もちろん高校生という分際で大きな未来はない、ただ一緒にいたいと言う気持ちがどれだけあるのか。
それを自分の中でも答えを出したかった。

答えが出ないまま明日は付き合って2年目になるーーー。
一緒に鎌倉の夜景を見に行こうね、なんて約束してたな。
残業もその日はしないように頑張るわ、なんて話してたのを思い出す。
叶わないのかなって思ったら涙が出てくるーーー。

「今、会社の近くにいてね。終わったら会える?」
さすがに高校生が会社に行くなんて出来ないから彼にメール。
ただ会いたくて自分の今の気持ちを伝えたくて。
「杏奈!」
喫茶店にでも移動しようかなと繁華街を歩くーーー。
そんな矢先に走ってくる彼の姿を見つけたーーー。
「えっ、私待ってるって・・・」
私を見つけるとすぐに抱きしめる彼ーーー・・・
「オレが会いたかったから仕事放って来た(笑)」
「何やってんの(笑)」
「ーーー仕事は俺がいなくても何とかなる、だけどおれは杏奈がいないと何も手につかない。」
「なにそれ口説き文句?(笑)」
「うっせー(笑)ーーー杏奈、好きだ。」
「ーーーうん、私も大好き。」

本当はもっといろんなことを言いたかったんだけど・・・
会えたらもう良いやってなって、お互いに微笑んだ。
彼が私の頬に手を当てて唇を重ねたーーー。

どうかこのまま彼と過ごせますように、と願って。

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