#01.
ーーー10歳という年月は、短いようでとても長い。
私が今付き合っている彼は10歳も離れていて、
その年の差が時に私を苦しめていることをまだ彼は知らない。
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出会ったのは駅のホームーーー。
田舎から都内の大学に入学したばかりの私が右も左も分からずに道に迷っているのを助けてくれたのがきっかけ。
何度か朝の同じ時間帯に会うようになり、
会釈から挨拶に変わり、挨拶から少しの会話に増えた。
映画が好きだったり、読書が好き、1人の時間が好きという共通点から話が盛り上がり・・・
その流れで「付き合ってみるか?」という彼の誘いに乗った。
半分冗談だったのかもしれないけど田舎出身の私は彼の全てを真に受けて即答で返事をした。
あれから3年、
軽いノリで付き合ったのになんだかんだ継続していることに自分でも驚いてる。
お互いに干渉しない関係だからこそ居心地が良く長続きしているんだろうなと思う。
話を聞いていると彼は何かのシステムを開発している人で日付を跨いで帰宅することがほとんどで忙しい人。
私も3年も経てば友達もたくさん出来、都会の雰囲気にも慣れ、今しかないこの環境を楽しんではいる。
かと言って彼との時間が冷めているわけでもなく、
会えば普通に手も繋ぐしキスもするーーー。
時にはそれ以上のことも当たり前のようにする、
時には私の家に泊まりに来たりもする。
ーーー良好と言えば良好で何も不満も今はない。
「でね、これあげるって言われてこのチョコもらったんだよ。可愛くない?」
そして今、私は先日大学で起こった話を彼にしている。
「ーーーああ。」
「ああって、聞いてた?!帽子を拾ってあげたらお礼にチョコだよ?見せたくて食べないで取っておいたのに冷たくない?」
彼の適当な返事にイラッと返す私。
「・・・わりぃな。徹夜明けで意識飛びそう。」
そしてそのまま眠りについちゃった。
うん、前言撤回しようかな。
さっきは不満がないって言ったけど、
一つ不満があるとするならば無愛想なところ。
さほど人の話に興味を出さないことかな。
徹夜明けは気の毒だと思うけど、私が誘ったわけでもなく向こうが会社から私の家の方が近いから寝かせてと突然やって来たの。
ーーーだから私は悪くないもん、
とスヤスヤと眠ってしまった彼の頬をつねってベットの隣に横になった。
・
ハッと目が覚めると、外は灯り始めている。
やばっと思って隣を見るとやっぱりもう彼の姿はなかった。
家の中にいることもなく、
置き手紙があるわけでもなく、
たった一言「また連絡する」というメールだけでいつも通り終わった。
彼がくると寝ることが多くてその度に私も一緒に寝ちゃうから寝ないと思っても睡魔には勝てない。
「・・・私も学習しないなぁ・・・」
苦笑いがこぼれた。
変な時間に寝てしまうといつも夜寝るタイミングを逃す。
そしてパソコンを開いてメールを確認して、
また自己否定されたかのように数社から不合格のメールが来ている。
これで落とされた会社は何社目だろう・・・。
私の目標では今頃内定が決まってる予定だったけど、
目処が全く立たない。
不合格を見て凹んでる時間もなく他の会社を探す。
自分のやりたいことに絞ってジャンルを決めていたけど、
ここ最近は手当たり次第応募してを繰り返すようになった。
エントリーシートが通って面接に行けば落とされ、
2時面接まで通ったと思ったら圧迫面接で自分を否定されそこで何度涙を流してしまったか数えきれない。
周りが少しずつ内定が決まり始めた九月、
私は会社に応募することさえしなくなった。
ーーー実際には出来なくなってしまった。
パソコンを開けば罵倒してくるおじさんたちの顔が蘇る。
そんなに偉いのだろうか、と腹が立つこともあるけど、
それよりも何も答えられなかった自分に腹が立ち、
就活することを恐怖に感じ始めた。
性格的にはどちらかといえばおとなしく、
自己主張が苦手な私ーーー。
エントリーシートや面接でそう言ったのが目立つのかな。
学校の子は早い子はもうみんな内定もらえたりしていて少し焦る。
もっと主張して!と幼い頃から言われて来たけど、
得意じゃないものを得意にしてと言われてるのと同じで私にはとても難しいことだった。
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きっと家族や身近な人に相談出来れば良いのだろうけど、
私はもともと自分で解決する子だから人には相談しなかった。
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