【 10歳年上の彼 】#07 – Kaito’s Side –

10歳年上の彼。

#07.

俺は今、複雑な気持ちでホテルのバーにいる。
男4人という花も何もないおっさんだらけだけど、非常に複雑。
自分の上司と同僚、
そして取引先の相手・・・
いや、もしくは恋人のお兄さんという、とても複雑な状況の中にいる。

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「にしても面白い妹さんでしたね!!」
「普段は大人しいのですが彼女の中の何かが切れると暴走するようですね(笑)」
本部長と中田社長が会話するのを俺はウイスキーを片手に聞いている。
「べっぴんさんだったし面白いし、大学でもあれはモテるでしょうね(笑)椎名、いつから付き合ってるんだ?!」
話題は雪乃の話で尽きなく、本部長は雪乃に興味を出したようで色々と聞いてくる。
「俺もその話聞きたいなぁ・・・」
隣でなぜか一緒に飲みについて来た同僚の陸が俺に言えば、中田社長も同様に興味津々だった。
「ーーー三年前ですね。」
「出会いは!?まさか社長の妹と知ってて近づいたのか?!」
陸がケラケラ笑いながら聞いてくる。
ーーーそんなわけがないことを知ってる顔だ。
「そんなわけあるか。社長の妹と知ったのは俺だって今日が初めてだよ。」
「え!今日が!?この前の時点で苗字が一緒だからとか気が付かなかったわけ??」
「ーーーそもそも出会った時から名字を聞いてないわ(笑)」
ーーー中田雪乃、また新しい発見をしたと思った。
「・・・妹は自分のことをあまり話さないですからね。」
中田社長は苦笑いをこぼす。
「で、出会いは!?」
陸は早くどうやって知り合ったのかの方が聞きたいようだ。
「・・・駅で道に迷ってた彼女を助けた。それ以上の話はない。以上!」
俺たち2人のことをペラペラ話すわけがないと俺はダンマリした。
「あはは!クールな椎名でも流石に恥ずかしいか!」
「本部長までからかわないで下さいよ・・・勘弁してください(汗)」
「悪い悪い!!人の恋の話は面白いからな(笑)」
本部長は45歳、バツイチで今はパートナーと同棲していると聞いたことがある。
「中田社長はいつから自分たちのことをご存知だったんですか?」
「社長ってなんか距離感じるのでやめてくださいよ・・・」
中田社長が俺たちにいう。
「ーーー中田さんで良いですかね?」
「僕も椎名さんって呼ばせて頂いているんですから。それでお願いしますよ。」
「で、椎名たちのこと結構前から知ってたんですか?」
陸がもう一度問いかけた。
「まさか!この前ですよ。偶然レストランで会ったじゃないですか。あの時の美琴さんとの言い合いの内容にん?って思うことがあって次の日に雪乃に電話して確認したんですよ。私が付き合ってるのに!って電話でもめちゃ怒ってましたけどね(笑)」
ちょうど俺たちが喧嘩中の時の話だったから、それ以外も何か聞いているのだろうかと思ったが話の内容的にそれはなさそうで安心した。
「ーーーなるほど。」

「あの日も面白かったよな!美琴と雪乃ちゃんが本気の言い合いして、美琴に負けない雪乃ちゃんすごかった!」
「そうそ!!もっと続けても良かったのに、椎名さん止めちゃうんだもん(笑)」
あの日何があったかを陸と中田さんで本部長に細かく説明している。
美琴と本気でやり合ってた雪乃の姿を再現するように2人でやってる。
「あの美琴とやり合うとは雪乃さんもなかなかですな!ますます俺の部下にしてみたいな(笑)」
また言ってるーーー。
さっきも本部長は雪乃を職場に呼びたいとか冗談言ってたけど、彼女のことを相当気に入ったようで俺としては複雑な気持ちになる。
「ーーーそうっすか・・・」
「椎名、彼女に話してみてくれよ(笑)」
「えっ、何をですか?」
わかってたけど、わかってはいたけど、もう一度確認する。
「俺たちの職場で働かないかって・・・」
「マジっすか・・・?それって俺の部下になる可能性も・・・」
「あるな(笑)」
いやいや、と断ろうとしたが中田さんが割り込む。
「雪乃は手際もよく細かいことによく気がつき仕事が早い。だから俺も彼女を誘ったのに速攻で断られましたよ(笑)だけど雪乃は貿易かメーカーの製造に興味を持っているようなので、本部長さんの職場なら総合的に全職経験出来るし彼女にとってもメリットあるかもしれないですね。」
と真剣に答えては本部長の提案を後押ししちゃってる。
「頼んだぞ、椎名。ワハハ!」
酒が入っている場なので本気なのか冗談なのか明確な判断ができず本部長と中田さん2人で盛り上がり、
こちら2人は冷静に酒を飲み続けていた。
結局ほとんどの時間に仕事の話はせず、俺たちは夜中一時に解散した。

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「さっきの話って本気だと思うか?」
終電を逃した俺たちは全員タクシーだ、中田さんは奥様がお迎えに来て同じ方面の本部長を一緒に乗せて帰ってくれた。
「本部長の話なぁ・・・酔ってたとは思うけど、冗談かもしれないし本気かもしれねーし。わかんねー(笑)」
陸に話しを持ち込んだけど結局、自分はどうしたら良いのかも分からずままだった。

彼女が夢の中にいることは百も承知だ。
だけど俺は自分の家ではなく彼女のアパートに向かった。
会社から自分の家ではなく彼女の家の方が近いのは確かな理由の一つになる。
だけど今日はそれ以上に彼女に会いたいという気持ちが強かった。
ーーー普段見ない彼女のドレス姿を見たからだろうか。
部下に言い寄られる彼女を見たからだろうかーーー。
それとも酔いが回って来てしまっただろうか。
どんな理由にせよ彼女に会いたい理由が今日は何よりも強い。
「ーーーただいま」
案の定、気持ちよく眠る彼女。
自分の家でもないのに’ただいま’と出てくる自分に苦笑いが溢れる。
綺麗に片付けられている家を汚さないように俺は風呂に入り、酔い覚ましに炭酸水を飲み干す。
明日彼女が起きて来た時に、’炭酸水!’って怒られるだろうかと想像してニヤつく自分がいて自分で自分を気持ち悪いと思った。
寝支度を済ませてそっと起こさないように彼女の隣に忍び込む。
いつか隣に寝ることが当たり前になればという願望もこの時に生まれた。
「・・・う・・・ん・・・かい・・・と・・・さん・・・?」
彼女の寝顔を眺めていると俺に気がついたように目を覚ます彼女。
「悪い・・・起こしたか?」
やばいと思い彼女の頭をさするーーー。
「ーーー・・・夢・・・」
そう言って俺に抱きついて、そのまままた夢の中へと消えていった。
俺が目を覚したのは昼前で、
白米の良い匂いがして目を覚したーーー。

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「おはようございます!」
朝から元気な笑顔か目に入り、愛しいと思った。
俺には眩しくらいの笑顔ーーー。
「ーーー勝手に来て泊まって悪い・・・」
会いたかったとは言わないーーー・・・。
「何言ってるんですか!海斗さんならいつでも大歓迎ですよ!」
嬉しそうにいうもんだから、こっちも照れるんだわ。
「あっ!でも炭酸水はちゃんと一緒に買いに行きますからね!?」
昨日ことがデジャブのように蘇ってきて笑ってしまう。
彼女からしたらなんで笑っているのかもわからないから不思議そうな顔をしている。
「ーーーこれ、俺のために?食ってもいいか?」
「二日酔いだと思ってお粥にしようとしたんですけど、海斗さんお粥苦手だから・・・たらこのおにぎりにしました。」
ありがとうと言葉を添えつつも、俺は地雷を踏んでしまったようだ。
「自宅にタラコがあるってなかなか渋いよな・・・(笑)」
そして食べようと手を出したら突然器ごと取られた。
えっ、なに?と彼女を見上げると俺を睨んでる。
またやらかしたか!?
「良いですか、食べ物をそんなふうに言ってはダメです!タラコちゃんだって命があったのに今から海斗さんに食べられてしまうんです!」
タラコちゃん・・・に笑いそうになるのを堪える。
「この海苔もです!!ワカメちゃんという命があったんですよ!命あるものを粗末に扱ってはダメです!」
「あははは!!!タラコちゃっんって・・・わかめちゃんっって・・・(笑)」
堪えきれなくなった俺はお腹を抱えて笑ってしまった。
「海斗さん、そんな人に私のおにぎりは食べさせられません!」
彼女は真剣だったようで顔がめちゃくちゃ怖いーーー。
「ーーー悪かったって。」
何度も謝罪を繰り返して、次はないと言われながらもやっと口に入れることができた。

その日はのんびり過ごし、
約束した通りに炭酸水を買いにスーパーへ買い出し。
昼食を外食にして夜ご飯までご馳走になって俺は残した仕事もあったので、
一度自宅に戻った。

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