【 10歳年上の彼 】 #04.

10歳年上の彼。

#04.

願っていた通りクリスマス前に内定はもらえたけど、
残念ながら相手がいなくなってしまった。

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もともと会う約束はしていなかったけど、ちょっとは会えるかなと期待してた。

そんなクリスマスもあと2週間で来てしまう。
独身の孤独さが嫌と言う話を耳にすることあるけど、
私もその人たちの仲間入りになりそう。
ーーー彼とはもう全く連絡を取っていない。
もちろん向こうから来ることもなく、こちらから連絡取ることもなかった。
正確なお別れはなかったけど、これが自然消滅っていうやつなのかな。
なんだか・・・一瞬で終わってしまうものなんだなと悲しい気持ちになった。

私は内定先を決めるので今度は頭を悩ませていた。

どこも自分が行きたいと思ったから選んだ会社なんだけど、
ここから一社に絞ることのほうが難しいことに今気がつく。
だけどもう私には海斗さんに相談する資格はない、
自分で決めるしかない。
メーカーは作る楽しさを学べるかもしれないという魅力がある。
貿易は人と人の架け橋、物と物の枷橋が見えるかもしれない。
両方に良い面があるからこそ私は決められない。
「あとは・・・会社の雰囲気だよな?どの会社が自分に一番合うと思った?」
結局、私は社会人の先輩である兄に頼るしかなかった。
美味しいご飯が食べに行きたいというから、
私が美味しそうなところを調べて連れて行く条件で相談に乗ってもらってる。
「わかんない・・・」
「はい?」
話にならないような顔してる。
「ーーーどの会社が一番合うかなんて見てないよ。だって緊張しながら会社に行くのにそんな余裕なくない?」
「・・・まあ気持ちはわかるけど笑。事務で良いなら俺の会社でも良いんだぞ?」
「ーーーお父さんの会社でしょ笑」
「東京進出したのはオレだもん。」
可愛く言ってもイカついから全然可愛く聞こえない兄。
そう、お兄ちゃんはお父さんの後を継いだけど長野だけに留まってた父を抜かして兄は東京に進出した。
「この前雑誌見たよ!インタビューされてたよね!」
「カッコよく映ってたか?笑 」
「はいはい、何してもかっこいいですよ笑」
「お前なぁ・・・」
兄は私の髪の毛をクシャッとした。
「あはは!ゴメンって・・・」
ーーー ドンっ ーーー
そんな風にじゃれあっていたら人にぶつかった。
「あっ、すいません・・・」
「こちらこそ見てなくてすいませんね。って、雪乃さん?」
「ーーー美琴さん・・・」
「中田社長も・・・なんであなたが中田社長と・・・」
「それは・・・」
私が答えようとすると美琴さんはさほど興味なさそうにお兄ちゃんに話を向ける。
「まぁいいわ。社長、今日はお時間ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ楽しく仕事できそうです。椎名さんにもよろしくお伝えください。」
「ーーー知り合いなの?」
私はこそっと耳元で呟く。
「最近一緒に仕事をすることが多くて契約することになったんだよ。お前こそ知り合いか?」
「ーーー中田社長、お時間大丈夫でしたら少し私たちも一緒に飲んでも良いですか?椎名と砂町も今来ますので・・・」
その言葉に私はゴクリと唾を飲んだ。
断って!とお兄ちゃんに目で訴える。
了解!みたいな仕草をしたから分かったと思ったら。
「もちろんです、少し飲みましょう。」
逆に捉えてて私は肩をガクリと落とした。

「学生のあなたは帰ったら?」
ええ、その通りと思って帰ろうとしたけどお兄ちゃんにガシッと捕まえられた。
「今日、僕は彼女とご飯に来てたんで彼女も一緒にさせてもらいますね。」
多分兄は私と美琴さんが険悪だというのを察してる。
だからこそ一緒に過ごさせようとしてるんだ。
「美琴!中田社長と会ったって・・・あっ!本日はありがとうございました。えっ・・・」
小走りで私たちの席に来た海斗さんも陸さんも私がいることに驚いてる。
海斗さんに関していえば少し怪訝な顔をした。
ーーー明らかに私がいるからだ。
「ねぇ、私帰るよ。仕事の話もあるだろうし。」
「お前が帰るならオレも帰る。」
「子供なの?笑」
「ーーー子供で結構!俺が酔ったら誰が面倒見んだよ笑」
「知らないわよ・・・ーーー。」
私は帰りたいのに兄に阻止されて帰れない。
仕方なく黙って烏龍茶を飲み、
彼らが話をしているのを聞いてないフリをする。
「びっくりしました。彼女と社長が知り合いだなんて・・・あなたも侮れないわね。」
「いえーーー・・・」
「雪乃ちゃんも顔が広いね!社長とはどこで出会ったの?」
陸さんは興味本位で聞いてくる。
「社長も気をつけてくださいね。この子、結構尻柄ですよ。いーわよね、若いってだけでチヤホヤされて。守ってもらえるのが当たり前みたいなさ、好きじゃないわ、そういう子。」
「ーーーそうですか。私も美琴さんみたいな人、好きじゃないですしお互い様ですね。」
私なりには頑張って言い返したーーー、
それに海斗さんも驚いた表情をしてて私は視線をずらした。
「あなた・・・ほんとムカつく子ね!そんなんだったらモテないわよ!一生結婚出来ないわよ!」
「美琴さんに言われたくないです!あなただって結婚してないじゃないですか!」
「私は・・・バツイチよ!」
えっ、と一同が固まった。
ハアハアとお互いが言い合って疲れる・・・。
「だから?!海斗さんに色目使ってるのバレバレなんですよ!」
「はぁ?!あんたこそ相手にされてないくせに!学生は学生と恋愛しなさいよ!」
その時にテーブルがドンって音が聞こえて、
その場の全員が凍りつく。
「・・・気は済んだか?!2人ともいい加減にしろよ!」
海斗さんがこの前私が会社に行った時と同じくらいに怒ってるーーー。
ヤバっと顔をしてる美琴さん。
「お見苦しいところを大変申し訳ございません。」
陸さんがお兄ちゃんに謝罪する。
「あはは!面白いものを見せてもらいました。雪乃のこんなところ久しぶりに見た!」
兄はお腹を抱えて笑ってる。
全く気にしてない様子だ。
「さあ飲み直しましょう。」
と海斗さんにお酒を渡してるーーー。

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私はトイレへと逃げた。
「美琴、海斗の昇進が今回のことで流れたら責任重大だぞ。」
でも先がいてその先で陸さんと美琴さんの会話が聞こえてしまった。
「分かってるわよ!社長と寝てでもそんなことさせない!絶対に・・・海斗の夢を潰させない。絶対に・・・私がなんとかする。」
苦しそうに話す美琴さん。
本当に海斗さんのことが好きなんだな。
そして彼女なら彼を支えることができる立場にいるんだなと思った。
ーーー私は学生の身で彼に対して何もすることがない無力の人間だ。
2人の会話が聞こえて来て、私も苦しくて割り込んだ。
「先程はすいませんでした!・・・美琴さんが海斗さんをどれだけ好きか何も知りませんでした。本当にすいませんでした!」
涙を流しながら頭を下げたーーー・・・。
「もう良いわよ、私だって・・・悪かったわよ。」
「・・・私、海斗さんのこと諦めます。」
「えっ・・・」
「私が悪いんです。年なんか関係なく大好きになってしまいました。だけど今の美琴さんと陸さんの話を聞いてて・・・自分には何も出来ないことを痛感しました。好きだけじゃダメなんです、わたし諦めます。海斗さんにもう会いません。」
「あなたに謝罪されても・・・」
「あの人は寝て気持ちが変わる人ではありません。大丈夫です、今日のことくらいで契約を切るような人ではありません。」
「ーーー海斗に片思いしてたって気持ち伝えないまま終わって良いの?」
陸さんは私に言った。
私は苦笑いをして、首を横に振った。
「海斗さんは優しい人だからきっと私を止めるでしょう。でもきっとそれは彼の本意じゃないから良いんです。」
そうだよ、今日だって偶然会わなければ連絡も取らないで普通に普通の日を過ごしてた。
きっとこのまま自然消滅になってた。
だから・・・もう良い。
私が近くにいれば彼の苛立ちを多くしてしまうだけ。

私たち3人が戻ると、
もう焼酎のボトルが一本空けられてる。
ーーーペースの速さに驚いた。
それでも普通に話してる海斗さんと兄の酒の強さにも驚く。
「椎名さんと仕事するのが楽しみですよ。」
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。」
2人の会話を聞いて安堵するこちら側3人ーー。
きっと今回のことは何もない、何も起きない。
それでもきっと今後危うい立場になった時に、
私は今と同じように彼に何の手助けも出来ないだろうと思うと悔しくて学生という身分を悔やんだ。
「ーーー私、そろそろ帰りますね。」
鞄を手にかけるーーー。
「ーーー雪乃、泣いた?」
兄が私の手の上に手を置き、顔を覗く。
「そんなことないよっ!!先に帰るから、また連絡・・・」
「俺も帰るかなぁ・・・」
私は兄を睨んだ、そんなことするなと。
「ーーー分かりましたよ、ステイしますよ。帰ったら連絡しておけよ。」
「ーーーはい。お邪魔しました。」
私はみんなに会釈してお店を後にした。

もう直ぐクリスマスだから街中はクリスマスデコだらけ。
暗くなるのも早くなり、まだ時間は早いというのに外は真っ暗。
どこかに寄って帰ろうか、
ケーキでも買って食べようか、
そう思ったけど私は結局何もせずに自宅に戻った。

その夜、海斗さんが久しぶりに家に来た。

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