#13.
ここ最近、私は今までよりも海斗さんに会えてると思ってる。
前なんて2週間とか会えないの普通だったけど、
なぜか今は週1で会えている。
彼がウチに泊まりに来ることも増えたし、
前よりも好きと言う感情が増えてくれているのかもと思うと嬉しかった。
・
今日は就職課に行きインターンが決まったことを伝える。
1月からの3ヶ月、
自分にとって学べることは何があるか分からないけどこのチャンスで学べることはきちんと学びたいと思った。
「え!彼氏と同じ職場なの?!ラッキーじゃん!」
やっと時間が作れてキイナとランチをしてる今。
「うん、色々不安もあるけどチャンスだからやってみようかなと思って。」
「雪乃なら絶対できるよ!」
「ありがとう。」
それからキイナの彼氏の話や海斗さんの話で盛り上がり、
クリスマスはどうやって過ごすのか二人で盛り上がり、
お互いの彼氏へのクリスマスプレゼンも一緒に買いに行った。
自宅に戻って海斗さんに就職課に伝えたことをメールした。
海斗さんも本部長に伝えた、と一言だけメールの返信が来る。
ーーー彼らしくて笑った。
その直後に本部長さんから電話が来た。
「雪乃ちゃん!インターン引き受けてくれるって聞いたよ!」
「よろしくお願いします。」
「で、いくつか書かなきゃならない書類があって・・・今から会社に来れたりする?」
「今からですか?」
「ーーー3時頃に会社に来てもらえたら助かる。」
「分かりました。それに合わせて行きます。何か持っていくものありますか?」
「印鑑だけよろしく。」
すぐに電話を切りスーツに着替える。
一本結びと思ったけど、今日は髪の突っ張るのが嫌で2本結びにした。
3時にエントランスホールに到着すると本部長が笑顔で待ってた。
「はい、来客証明もらっておいたから。」
この人は行動が早い、挨拶交わすことなく9階に行く。
今日は開発部に寄ることなく小会議室に入る。
「ごめんね。来週から年末年始に入ってしまうから雪乃ちゃんの手続きを急ぐ必要があって椎名も忙しいから頼みづらくてな(笑)今書類持ってくるから印鑑出して待ってて。」
本部長さんがバタバタと私に伝え出て行く、
本当に忙しいんだなと悟った。
本部長が戻る前にトイレに行こうと会議室を出たらちょうど大会議室から出てきた海斗さんと鉢合わせをした。
ーーー寝耳に水状態の彼は心底驚いてる。
しかも隣にいるのはお兄ちゃん。
そして営業部の本間さんもいらっしゃる。
「ーーーこんにちは。」
「こんにちは。」
営業スマイルで兄は私に挨拶をする、
初対面のフリをしてくれたのだ。
「ーーーどうしてここに?」
「本部長さんから電話を頂きまして、書類がたくさんあるので来て欲しいと言われまして・・」
海斗さんは苦笑いしながら納得した様子だった。
「インターンすることに決めたんだ?」
「はい。」
それを聞いて兄もニコッと笑ってる。
「ーーーとりあえず僕は今日は用は済んだので失礼しますね。」
エレベーターまで海斗さんと本間さんが送りに出たので、
私はトイレに行って先ほどの小会議室に戻った。
「お待たせしました。中田さんのインターンの担当をさせて頂く企画開発課の相原と申します。」
本部長さんが来ると思って待っていたら、
違う人、しかも女性が入って来た。
「中田 雪乃です!よろしくお願いします!」
「早速ですがこちらの書類に記入をお願いしても良いですか?」
「ーーーはい。」
渡させる書類に記入する。
名前や住所、生年月日などの個人情報はもちろんのこと家族構成や同居や別居の実家の連絡先まで。
大学や学部も記入、バイトやインターン歴も全てに記入をする。
「ーーー印鑑はお持ちですか?」
「はい、持って来ました!ここで良いですか?」
「そうですね・・・ここと、あと2枚目と3枚目にもお願いします。」
とても淡白に話す女性、
美琴さんよりは年下な感じがするーー。
「あとこちらの書類は健康監査になりますので分かる範囲で良いので記入をお願いします。」
入力してる間の沈黙、
彼女はただ私が書いてるのを見ている。
「そして最後にこちらなんですが希望の場所ありますか?ご希望がなければ本部長の推薦で企画開発課になると思いますが・・・」
「まだ勉強不足かもしれませんが、航空製造部は難しいですか?」
私の問いに相原さんは顔を上げてクスッと笑った。
良い意味の笑いなのか悪い意味の笑いなのか分からない。
「ーーーあの場所はやめた方が良いです(笑)開発部と非常に仲悪くて・・・なんて言うのかなライバル人を持たれてて本部長同士も仲良くなくて、きっとオススメされないと思います。もし希望であれば見学だけでもこの後しますか?」
「・・・いえ、大丈夫です。特に希望場所はないので企画開発課でお願いしたいと思います。」
相原さんの話を聞いて航空製造部はやめた。
下調べも一応してて男だけの場所とも書いてあったしなんか厳しそうだなとも思ってたから反対してくれて良かったかな、と少し思った。
「かしこまりました。それならこちらに印鑑をお願いします。」
事務的な作業だけをこなす私たち。
「手続き完了です。年明けの1月5日からの出社となります。9時業務開始で初日ですのでいろんな説明があるので8時半には出社してください。それと・・・」
淡々と事務的なことを話す彼女ーーー。
「ありがとうございます。3ヶ月よろしくお願いします!」
「こちらこそお願いしますね。楽しみにしています。」
エレベーターまで送ってくれ、彼女は私が見えなくなるまで見送ってくれた。
・
女性は形から入るーーー。
私は帰り道に新しい服を何着か購入した。
ーーー彼ともうすぐ出かけるクリスマスのために。
そしてインターンのためにスーツじゃない、
だけど女性らしく会社でも相応しい服をと思い普段の自分にはあまり着用しないような服を購入した。
・
夜、海斗さんから電話が来た。
「ーーーゴメンな、顔も出すこと出来なくて。」
「ううん、私も急だったからメールでしか伝えられなくて・・・」
「相川、怖くなかったか?」
「ーーー淡々と話す人だよね。でも的確で分かりやすかったよ。」
「・・・部内では鉄板の女と呼ばれてる。無愛想で美琴に続く厳しいやつだから恐れてる人もいるよ。」
部下の話とはいえやっぱり海斗さんから女性の話を聞くのは嫌だなと思った。
「ーーーそうなんだね。」
「言っておくと彼女は既婚者だし、お子さんも大きい子がいると聞いたことがある。」
安心させるために言ってるのだろうけど不安になる。
「そうなんだね。ーーー明日も早いよね?土曜日楽しみにしてるね!」
「えっ、おい・・・」
このまま相川さんの話が続くのかなと思うと、
感情的になりそうな自分がいたから電話を切った。
ーーー海斗さんもきっとそれに気がついてた、
だから折り返しの電話は来ることなかった。
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