【 君がいる場所 】#103. あっという間の時間*。

君がいる場所

#103.

私の頬から流れる涙を先輩はぬぐった。

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「…引くだろ、自分でも正直少し引いてる。こんな感情が自分にもあったんだって思うと正直気持ち悪いとさえ思う。」
「そんなこと思わないよ!私は嬉しいよ。先輩の気持ちが聞けて、こんなにも好きでいてくれてって実感できてすごく嬉しい。」
「…バスケさえ始めなきゃ、続けなきゃ花に寂しい想いをさせることもなかったと思うと後悔だってしてる。」
「バスケに後悔?ーーーバスケがなかったら私たちは出会うこともなかった。それは否定しないで欲しい…」
「…ゴメンな。だけどオレは自分が思っている以上に花のことが好きで大切だと思ってる。」
「ーーーうん、凄く伝わったよ。ありがとう。私、もう森田さんに会わないよ。」
「いや、そこまでしなくて…」
「先輩の為じゃない。ーーー私が先輩から心変わりするなんて考えられないけど、今の先輩は見ていられないし先輩が傷つくことを私はしたくない。先輩が好きだからされて嫌なことは私もしたくない。ーーー大好きだから・・・」
私は先輩のことを強く抱きしめた。自分のありたっけの力で。
いつも彼が私に安心感を与えてくれるように私も少しで良いから先輩に安心して欲しかった。
「・・・バスケ続けても良いか?」
「ダメだなんて一言も言ってないよ?」
「寂しい気持ちにはさせるだろ。花が連絡取りたいときに取れない時もあると思う。」
「ーーー今更?って感じだよ(笑)それに私は先輩のバスケが大好きだから続けて欲しいって思ってるよ。」
「ーーーありがとう。」
その日の夜、久しぶりに先輩にくっついて寝た。
彼は朝まで私を腕枕してくれていた、
痛くないのかなって離れようとするけど無意識に引き戻されて求められているようで少し胸がくすぐったくなった。
大好きな人が隣にいる、
ただ一緒に眠ってくれると言うだけで安眠になるんだと自分でも驚いた。

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まぶしい太陽の光で目を覚ますーーー。
すっごく良く寝た気分。
それだけでも幸せなのに、横を見るとスヤスヤ気持ちよさそうに眠る先輩がいる。
彼の寝顔を見てフッと微笑みがこぼれる。
「ーーーなんだよ」
見ているだけで幸せで色んな表情をして眠る先輩を見続けると突然先輩の目が開いた。
「えっ!!!起きてたの!?」
「ーーー何となく熱い視線を感じて目を覚ましたんだけど開けるタイミングがつかめなかったわ(笑)」
「もうーーー!!!」
視線を絡ませじゃれ合うのも本当に久しぶりすぎて、この上ない幸せを感じている自分がいる。
「ははは!ーーー捕まえた!」
布団の上から先輩を叩き続ける私を先輩は隙を見てガブっと捕まえて後ろから抱きしめてきた。
「・・・今この時間が止まれば良いのに(笑)」
「じゃあ今日はベットの上で1日過ごすか?(笑)」
「えーーー、肩こりません?」
「確かに(笑)違う意味でもオレが持たないだろうし、せっかくの休みだからどっか行くか?」
今日先輩は15時までに戻れば良いと言ってたから今の時間だったらどこかに外出できる。
だけど先輩とずっとこうやってのんびりしていたいなという自分もいて…
「ーーー無理して出かけなくても良いんだぞ。今日は花の好きなようにして良いよ、いつも俺に合わせてもらってるから。」
「私は…先輩と家で過ごしたいです。デートは年末に先輩が戻ってきた時にします…。」
悩んで出した答えを素直に伝えて、ベットから起き上がろうとしてた先輩はまた横になった。
「えっ?」
「のんびりするならまだ寝てても良いだろ?ほら、横になりな。」
トントンと自分の隣に寝転ぶように先輩の手が動いているので遠慮なく隣に横になる私。

天井を見上げる私たちーーー。
ただ手をギュッと握りしめてその場に一緒にいることを嚙みしめる。
「今週末ハロウィンだろ?何かすんのか?」
「ーーー環たちと集まろうって話はしているけど仮装とかはしないですよ!普通にご飯です!」
「…正樹も行くんだろ?須永も(笑)誘われたんだけど、その日試合でゴメンな…」
「そうそう、いつもの元バスケ部メンバーに入れてもらっています(笑)双葉は冬休みにならないと帰ってくれないみたいで私が代わりに行ってきます!」
「誰も花を入れてあげるとか思ってないと思うぞ。もうお前は出会った頃からメンバーだったんじゃないかな。」
「ーーーありがとう。私の仮装見たかった?(笑)」
「ーーーちょっと見たかったな(笑)でも仮装しないなら別に良いかな。」
からかうように先輩は話しているーーー。
本当は仮装をする、だけど先輩には内緒にしておこう。
だって環に絶対に先輩に話すなって言われているから…。

本当にその日一日はただぐうたら二人で過ごした。
ベットから出ては着替えることもせずにDVD観賞したり先輩の試合録画を一緒に見たり、
お昼も一緒に作って食べた。
「こんな日もあって良いね」
2人でパジャマで過ごす一日を振り返って笑いあう。
一緒にいても起きたら着替えてと言う何かお互いに気を遣う部分があったかもね、と笑い合う。
とても幸せな時間だ。
ーーー今回先輩と一緒に過ごしたことで、
心にゆとりを持って気を使わないで過ごしていこうねってお互いに確認できた充実した時間に当てられて自宅でのんびりすることを選んで良かったなって思った。

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でもね、楽しい時間って言うのはあっという間に過ぎていくんだな…。
お昼ご飯を食べたら先輩はシャワーを浴びて、ゆっくりと寮に戻る支度を始める。
楽しい時間から寂しい時間へとじわじわと移ろい行くのをヒシヒシと感じる私たち。
別に遠いところに行くわけじゃない、会いたければ会える距離にはいるけど物理的に難しいから。
そう思うとやっぱり寂しい。
「・・・次に会えるのはいつ頃になるのかな。」
ある程度落ち着いたところで先輩は体育座りしてソファに座る私の隣に腰掛けた。
「今週末は都内で試合ではあるけど、ハロウィンだからファンミーティングがあって。来ても全然良いんだけど、色んな選手を目当てに来る女性たちが多いから花は良い気分はしないかもしれない。」
「ーーーだよね。そしたら次に会えるのは戻ってくる年末ってとこかな?」
「いや、流石にそこまで会わないのはさすがの俺も無理だと思うし、オフが入り次第連絡入れる。約束するよ。」
「ーーー分かった。約束ね。」
先輩の暇そうな手を握って私は自分の胸の位置でギュッと強く握りしめた。

討論している時は会いたくないなんて思うこともある。
だけど幸せな時間から引き離されるのは本当に辛いし寂しいと感じてしまうのは私だけじゃないはず。
ーーーその証拠として先輩も強く私の手を握り、
その瞬間に私を強く引っ張り自分の方へ引き寄せた。
「ーーー大丈夫。何かあったらすぐに連絡して。って信用ないかもだけどさ・・・」
頭上から降る優しい言葉に私は首を横に強く振った。
「そんなことない!寂しくなったらテレビ電話していい?」
「ーーーいいよ。出られなかったら必ず折り返す。」
「寝る前に電話してもいい?」
「ーーーいいよ(笑)」
「あとは…会いたくなったら…」
これは言いかけてやめた、先輩の迷惑になる気がしたから。
「ーーーオレが会いに来るよ。オフじゃない日は抜け出して5分でも10分でも会いに来るよ。」
その言葉を聞いて私は先輩を抱きしめる腕に力を入れて、涙をこぼした。
先輩の服が私の涙で濡れても彼は気にせずに私を受け止めてくれた。
ーーーまるで永遠の別れのように、
しばらく会えないかのように私たちは別れを惜しんだ。

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あんなに先輩が出発するギリギリまで別れを惜しみ、
ずっと抱き合っては唇を交わしていた私たちだけど、
意外と再会までの期間は短かった。

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