【 君がいる場所 】#89. 自業自得*。

君がいる場所

#89. – Itsuki Side –

花に外でご飯を食べてきて欲しいと言われた今日、
俺は吉岡さんと森さんとご飯を食べている。

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「最近、花ちゃん見ないけどうまくいってんのか?」
うまく行ってる・・・とは言えるのか分からない。
「ーーーまあ、そうっすね。」
「樹とケンカしたらいつでも俺のところ来てと花ちゃんに伝えてねー(笑)」
「勘弁してくださいよ(笑)」
森さんは花を見た時からずっと可愛いと言ってる、
それは今も健全だ。
ーーー本気でないのは知ってるけど、何かのたびに花をネタにされるのは正直良い気分でもない。
「夏の海の大会、花ちゃん誘ってやれば?」
「ーーーいや、あれはハードル高いっすよ。」
海の大会とはバスケ部のOBが考えたもので今でも受け継がれている伝統に近いもの。
毎年夏休みのどこかを使って2泊で行くキャンプみたいなもんだ。
ーーー初日は道の駅に寄りボートに乗ってただ楽しむ。
2日目が問題で朝から夕方まで炎天下の中で過ごす、これが花には出来ないと思ってる。
バナナボート対決、サーフ対決、エアー遊具対決などバスケ部ならではのイベントになってる。
夜はキャンプファイヤーがあるーーー。
「そうか?オレも彼女連れて行ったことあるけど楽しかったって言ってたぞ。」
ーー吉岡さんは花の足のことを知らないから言える。
「今年も来るんですか?」
「ーーー誘ってねーや(笑)」
人のこと言えないじゃないっすか、って笑いが溢れた。
「でも真面目な話、お前が雑誌で花ちゃんのことを語るとは思わなかった(笑)キャラ的に(笑)」
「ーーー自分も話すつもりはなかったっす。ただ何となく流れで話しても良いかなって思いましたね笑」
「ーーーファンの間とか大丈夫だったのか?花ちゃん、傷つきやすそうだからオレの彼女が心配してたよ(笑)」
吉岡さんの彼女は4年のマネージャー。
花が大学に来た時、追っ払ったうちの1人だ。
「ーーー言わなきゃ良かったなと最近は思っていますね。アイツ自分に自信ないから、釣り合わないと思ってるから最近はそのことで言い合いましたね。」
「女は厄介だよな笑」
「ーーー特に最近はそう感じることありますね。1人になりてーって思うことありますよ笑」
「だったらオレがーーー(笑)」
つかさず森さんが俺たちの会話に割り込み、
何が言いたいかも分かる。
「だからと言って別れるつもりもそんなこと思ってもないですけどね。」
「ーーー付き合って長いんだろ?花ちゃん、よく我慢してると思うよ。オレだったら絶対別れてるわ。特に樹は言葉が足らなそうだし(笑)」
「ーーー感謝はしてますよ。」
オレは目の前にあったビールを一気に飲んだ。

そうーーー・・・。
感謝はしてるし寂しい気持ちさせて申し訳ないとは思ってる。
ただそこで情緒不安定になったり、
感情的に叫んだりというのが少し理解出来ない。
麗華さんのことでケンカしたばかり、
その矢先に今回同じことを花がした・・・。
それをオレは今でも許せないんだと思う。
アイツはオレをたくさん許してきてくれたのに、
オレは許せないなんて小さい男だと苦笑いがこぼれた。
やっと仲直りできて仲良くしてても、
すぐにこうして喧嘩になる。
そう言う毎日にストレスをオレ自身感じているんだと思う。
ーーー花と一緒に暮らしたこと後悔はしてない、
だけど時々頭を真っ白にしたい時がある。
1人の方が楽だ、そう思ってしまう時があった。

だから・・・
そう思ったことにバチが当たった、
そう思った。

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当たり前の毎日は当たり前じゃないーーー・・・。
吉岡さんたちと別れ帰路に向かう、
メールしても既読すらにもならないーーー。
寝ているんだろう、とオレは特に気にすることもしなかった。
「・・・花?」
玄関を開けて真っ暗な家に違和感をまず覚えた。
ーーー花は家を暗くするのが嫌いだから、
寝る時でさえも電気をつけていないと寝れない。
そして二つ目の違和感は電気をつけて、
家が片付いていること。
三つ目の違和感は寝室・・・
シーツが冬用から夏用に変わっていたこと。
極め付けは・・・
冷蔵庫の中にたくさんのタッパーが入っていたことだ。
まるで帰ってこないことを意図しているようだーーー。

ーーーオレは花の携帯に電話した、
予想的中で電源切られていて繋がることを許されかった。
いや、待て・・・
アイツは残業すると言ってたことを思い出し、
時計を確認して花の職場に足を運んだ。
「ーーー柊さんならお休みよ?」
社長と奥さんがちょうどいて不思議そうに対応してくれたけど、
会社にも来てないとなると・・・
じゃあどこに?
「そうですか、ありがとうございました。」
残業は嘘だったーーー・・・。
最初から出て行く予定だったんだと悟った。
ーーー今朝の涙はそう言う意味だったんだと理解した。
「・・・はは。自業自得だわ・・・」
オレはその場に頭を抱えてしゃがみ込む。

ーーー少しでも1人の方が楽だと思ってしまった罰。
花のことを公表したことを後悔した罰。
そう思ったーーー・・・。

トボトボ自宅に戻ると、
マンションロビーの下にこの間のアイツ・・・
花の同僚がオレを待つためにいた。
「・・・何か用事ですか?アイツならいませんけど・・・」
「彼氏さんに話があって来た。ーーーこの間はやりすぎた、悪かった・・・。」
「ーーー何であんなことしたんですか?」
「あまりにも彼女が自信なさすぎるから、本当にそうなのかとちょうど帰ってくるのが見えたアンタを試した。ーーー彼女に恋愛感情があるとかではない。やりすぎた、悪かった。そのお詫びに来た。」
「ーーーもう良いっす。」
「・・・柊さんにも悪かったって伝えておいてよ。彼女、もうすぐ手術だろ?あの日から全然元気ねーし、早く仲直りして支えてやってよ。」
「手術?・・・アイツが?」
オレが何も知らないことで、向こうが驚いてた。
「あんた彼氏だろ?何も知らねーの?・・・2日前から彼女は1ヶ月、職場に休み申請してるよ。」
耳を疑ったけど嘘じゃない真実がここにあったーーー。

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次の日、
オレは珍しく早起きをしたーーー。
「花!」
そして、彼女が定期的に受診してる病院に足を運んで彼女を探しているとちょうど診察室から出てくる彼女を見つけた。
診察着を着て、
点滴に繋がれ、車椅子を看護師さんに押されている。
「えっ?何でここに・・・?」
困惑する彼女を見下ろし、看護師さんに自分が連れて行くと伝えた。
特別ね、と看護師さんは許してくれたーーー。

「ーーー昨日、花の職場の人が教えてくれたよ。」
オレは病室に押しながら花に話す。
「そうですかーーー・・・」
それ以上、彼女は口を開かなかった。
ただオレに車椅子を引かれる、それだけだった。

「ありがとうございます、助かりました。」
病室に戻り、花をベットの上に乗せるまで手伝う。
「ーーーああ。なぁ・・・」
「今、面会時間外だから・・・それに授業始まるんじゃないですか?」
ーーー花は一点を見つめて言う。
さっきからずっとオレと視線を絡めようとしない。
「なあ、何で何も言わなかったんだ?」
オレは帰れと言われてるのに椅子に座った。
「・・・ごめんね。嘘で重ねられた私の人生に、もう先輩を巻き込みたくなかった・・・」
「どう言う意味だーーー?」
花はやっとオレと視線を合わせたーーー。
そしてベットに放置されてたオレの手を自分の拳で握り「ごめんね・・・」と泣きながらつぶやいた。

「花ちゃんそろそろ準備するから注射の量、増やすねー。」
「ーーーお願いします。」
ハッとしたオレは席を立ち花に伝えた。
「また夜に来るから・・・」
でも花は悲しそうな顔をして、首を横に振った。
「もう来ないで・・・頑張れ、先輩。」
消えてしまいそうなくらいの声でオレに言った。
「・・・手術、頑張れ。側にいれなくてごめん。」
結局何の手術なのかも教えてもらえないまま、
オレは大学に向かった。

「樹!やる気ないなら帰れ!」
「すいません!」
「ーーー樹、何やってんだ!やる気あんのか!?」
今まで、花と討論しても公私混合したことはない。
ただ、今回のはオレも応えたーーー。
何も教えてもらえないこの状況、
花が本当に消えてしまいそうで怖かった。
何か重い病気を抱えていたのかもしれない。
ーーー先日の腹痛は本当は生理じゃなくて違う原因があったのかもしれない。
気が付こうと思えば気が付けたことを見逃した自分に責任を感じる。
ーーー手術と言う大事なことをきっと伝えようと思えば伝えることが出来た、
だけど彼女はその選択をしなかった。
それはオレが・・・
彼女に言えなくさせる状況を、そんな環境を作ってしまったせいだと思う。
「樹、今日は外れろ!」
今日のオレは全く機能せず、
練習からも追い出される始末ーーー。

オレはチームの練習を見ながら、
スポーツドリンクとタオルを手にして頭を拭く。
ーーーわしゃわしゃと髪の毛をかき分けて、
何をどうするべきなのか分からないその状態にイライラしてた。

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