【 君がいる場所 】#78. 水族館デート*。

君がいる場所

#78.

先輩と一緒に過ごすようになって、
先輩のルーティーンを私も把握するようになった。
それに合わせて私自身もバイトを入れるようにした。

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「土曜日、晴れるみたいですよ!」
「暖かいらしいぞ、良かったな。」
「はい!水族館、楽しみです!」
卒業祝いにと先輩が準備してくれた水族館、
シーズン中の中休みでお休みがあると言ってくれて予定を組むことができた貴重な日だ。
「・・・柊って水族館で例えるなら、ペンギンか?」
「えっ?」
「落ち着きがないっていうかおっちょこちょい?ちょこまかちょこまかしてるからペンギンぽいよな(笑)」
「褒めてるのか貶してるのか全く分かりません!笑」
「悪い悪い(笑)」
ご飯食べながらケラケラ笑いが溢れる食卓、
私はこういうのを理想の家庭としてあげてた。
私たちはまだ家族じゃないけど、
ほとんど経験したことない笑顔溢れる食卓ほど私が望んだものはない。
ーーーだからこの時間が止まれば良いのに、
ずっと続けば良いのにと願った。

ご飯が終わり、
私は食器洗いを終わらせてソファに移動した。
ーーー先輩は夜のトレーニングだと走りに出かけた。
テーブルの上に携帯をいつも置いて走りに行くけど、
だからこそ今の先輩に疑うものなんて何もないんだなと思う。
でもそれと同じくらい、
もし先輩に何かあった時に携帯がないと困るなぁと思う自分もいた。

「そういや、入社式っていつだっけ?」
帰宅してシャワーを浴び、
飲み物を手にした先輩が聞いてきた。
「入社式ってほどのものはないんですけど、一応会社の中でお祝いしてくれるのは4/1にあります。」
「了解。柊も働き出したら今のように飯作らなくて良いからな、自分のペース大切にして。俺の飯なんてなんとかなるし、柊もあえて疲れることはすんなよ。」
「ーーーはい。」
なんか少し悲しくなった。
別に嫌でやっていたわけじゃないし、
居候させてもらってるお礼も含めて家事炊事をやらせてもらっているんだけど、
今度はお金を入れれば良いのかなぁ、と少し考えだした。

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土曜日、晴天に恵まれて私たちは水族館に行った。
東京にある自宅から少し電車に乗り、
鎌倉にある江ノ島水族館に来た。
車を出すと言ってくれたけど、
こうして先輩と一緒に電車に乗れる、
それだけで私は幸せだからと断った。

江ノ島水族館は想像していたよりも多くの人で賑わっていて、特に子連れの人が際立って見えた。
事前購入しておいたチケットを受付に出して中に入ると外の明るい世界から暗い世界へ引き込まれるかのように幻想的な世界へと入った。
「クラゲって羨ましいよなぁ・・・」
道のりに進みクラゲのゾーンで先輩が言った。
「羨ましい?」
「自由に泳いで食べたい時に食べて寝たい時に寝る。なんか伸び伸びしてて良いよなぁって思う(笑)」
先輩らしい考えでフッと笑いが込み上げた。
「ーーー確かに。マイペースで先輩と似てるかもしれませんね(笑)」
「だろ?笑」
褒めたつもりもなかったけど、
自信げに話す先輩とのこの時間がとても愛しいと思った。

手を繋ぎ先の方へ進み、
時間に合わせてイルカショーも見た。
これはすごく人気なようで早めに行ったのにも関わらず立ち見になってしまった。
「足、大丈夫か?痛くないか?」
気を遣ってくれる先輩の優しさを感じたけど、
今日は調子が良い。
足に全く疲れを感じなかった。
「大丈夫です!それにしてもすごい迫力ですね!」
飼育員さんとイルカの信頼関係が出来ている、
見ている誰もが納得するショー。
音楽に合わせてイルカと踊る、
ノリノリの曲だから近くにいる子供たちは踊り出したりと見ているだけでも楽しかった。
中にはショーに飽きてしまう子もいて、
もうっとブツブツ言いながら退散する親子も何組か見えた。

江ノ島水族館を後にして、
私たちはたくさんある一つのレストランでランチを取る。
それからすぐ近くにあった海でお散歩をしようと手を繋いで歩く。
ーーー毎日練習でこんなのんびりする時間は私たちにはほとんどない。
あっても半分なことが多いから、
新鮮で楽しく、とても幸せだった。
本当に・・・この時間が止まって欲しいと願った。
それが出来なくても、
ずっと先輩と一緒にいたい、
そう強く願った瞬間でもあった。

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水族館は終始すごく楽しかった。
ーーー海での時間も、
これからの先輩の目標だったり、
今のチームのことやバスケに対する思いを語ってくれた。
一方で私は特別やりたいこともなく、
ただお金のためだけに就職するから先輩のような大きな目標がないことに少しだけ焦りを感じた。

帰宅してからもあまりにも楽しかった時間を思い出し私の心はすごく満たされている。
「今日はありがとうございます、すごく楽しかった。」
夕飯も最寄りの駅前の定食屋で食べて来てあとはお風呂だけを残している。
「俺も楽しかったよ、また行こう。」
「ーーーはいっ!!」
私は先輩を見上げてそう伝えた。
「先風呂入ってこいよ、明日朝からバイトだろ?」
バツが悪そうに視線を逸らした先輩、
その意図に全く気が付かなかった私は遠慮なくお風呂に入ることにした。

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お風呂で考えたーーー。
このままでも先輩と一緒にいるのはきっと楽しいし幸せだと思う。
先輩はこれ以上を望んでない。
でもそれは・・・それには未来がないんじゃないかなとも同時に思った。
愛しい・・・
凄く愛しいと思うのに一度拒否られてしまってる私はうまく先輩に自分の想いを伝えられない。
また断られるのが怖くて、
愛しいから大好きだから先に進みたいのを先輩はきっと分かってくれない。
高校卒業したばかりのお子様の私にはきっと何も望んでない。

湯船から出てキャミソールに短パンを着用して思う。
下着も着けていないのに出てない胸、
こりゃお子様だよね、女性としての魅力なんてないわって笑いが溢れた。
ーーー麗花さんは大きな胸だった、私とは違いすごく大人っぽい人だった。
きっと先輩はそういう人が好きなんだろう、
私みたいなお子様はタイプじゃないんだろうなって思った。
ーーー幸せだった時間が短くて、
1人になるとマイナスなことを考えてしまう自分が嫌でドライヤーをしながら私は大きな声で「頑張れ!」と自分に喝を入れた。

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