【 君がいる場所 】#70. 初めてのお泊まり*。

君がいる場所

#70.

私は言われるがまま、
手を引かれるまま・・・
先輩について行った。

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「あの、私ここで待ってます。」
先ほど先輩が飛んだ大きな窓ではなく、
大学校内から繋がる部室へと先輩は行こうとしてる。
ーーーでも私は完全にここでは部外者だ。
「ここにずっといる、という信用が出来ない。」
ーーー先輩は怒ってた。
そりゃそうだよね、何も言わないで・・・。
「・・・でも・・・」
「今日は自主練。来てるのは森先輩と吉岡さん、あと2人一年の後輩が来てるだけだから柊が部室に来ても問題はない。座っててくれれば帰り支度するから・・・」
「ーーーでも私はここでは完全に部外者で・・・」
私も先輩もお互いに折れない。
先輩が良いと言っても、
私はやっぱりよくないと思うし、
他の人がもし見たら先輩の立場も悪くなりそうで、
何よりそれが嫌だった。
「ーーーったく頑固だよな。分かったよ・・・なら食堂にいて。ここまっすぐ行った丸い屋根のところが食堂だからなんか飲んでて、すぐ行く。」
「ーーーありがとうございます、待ってますね。」

私は食堂をすぐに見つけた。
ーーー土曜だというのに開いているのも凄いし、
また多くの学生で賑わっているのも驚いた。
男女仲良くわいわいしているのが目立ち、
逆に1人の人は1人もいなかった。
私はまだ高校生だし食堂に入るにも勇気がいる。
ーーー食券で飲み物を買って受け取る、
そして空いてる席に座ったけど誰にもみられることなくホッと安心した。
「ねぇ、あなた1年?そこ、私の席なんだけど。」
なんて安心していたのも束の間、
ちょっと威圧感がある女性が私を見下ろしてる。
「す、すいません!食堂に初めて来て・・・空いてると思って、ごめんなさい!」
よく見たら小さカバンが置いてあって、
自分の不注意に羞恥心を覚え、
すぐに荷物を取り席を移動しようとする。
「初めて?(笑)ってか見ない顔よね、何年?」
「ーーー高校3年です。」
「はっ?高校生?!ここは学生しか購入出来ないのよ。」
ウソ、知らなかった・・・。
先輩そんなこと一言も言ってなかったし。
「すいません、本当に知らなくて・・・」
「で、高校生がここで何してるんだ?」
その人の彼氏らしきが私に問い掛けた。
「ーーー知り合いにここで待っててって言われて。でも来ちゃダメって知らなくて・・・すいません。」
私は2人に対して頭を下げたーーー・・・。
ど、どうしよう・・・。
食堂で待ってるって言っちゃったのに・・・。
これでまたどこかに行ったら、
さらに先輩を怒らせてしまうと思った。
ーーーそう思ったら涙が出そうになって、
必死に歯を食いしばって我慢する。
「お前ら、何やってんの?」
そんな時、上から先輩の声が降ってきたーーー。
「樹!自主練終わり?!」
ーーー私は声を聞いた瞬間にホッとして、
涙を我慢出来なくなり頬からこぼれ落ちた。
「ってかいつまで頭下げてんの?顔あげて・・・」
そう先ほどの男性が私の腕に触れようとした瞬間、
パシッとその人の手を弾く音がした。
「人の女に勝手に触んな・・・ーーー」
えっ!!!
耳を疑ったけど、
そんな瞬間も見せられず先輩は私を先輩の方に引き寄せた。
「えっ!樹の彼女なの!?だったら早く言ってよー!」
「お前たちはこいつに何をしていたわけ?またいつもの悪ふざけか?」
「ーーー違うんです、ここ部外者ダメらしくて知らなくて・・・」
「ーーー良いんだよ、ここは。ここは一般公開もしてる食堂なの、見てみ、いろんな人がいるだろ。」
先輩に言われるまま、
周りを見ると確かにいろんな世代の方がいた。
「・・・ゴメン!わたし、自分より可愛い子見るといじりたくなるの!笑」
「ーーー泣かしたのは初めてだけどな(笑)オレ、小野寺 良。樹と同じ学部の同じ学年、良って呼んだでな、よろしく!」
ーーー良、という名前に反応した私。
良くんと同じだ、って思った。
「わたしは・・・同じく樹の友人の村井 リサよ。よろしく。」
「ーーーちなみにこの2人は付き合ってっから。」
先輩が付け加えた。
「ーーー良・・・さん、とリサ・・・さん?」
「ーーー小野寺さんって呼べ、オレが許さん。」
ーーー先輩は良という名前に気がついた、
私が少し戸惑ったことも気がついた。
だからあえて小野寺さんにした。
「こわぁぁい、樹ってそんなキャラだっけ?」
「ーーー独占欲高い男は嫌われるわよ笑」
「そんなんじゃねえよ。ーーーもう準備出来てるのか?行ける?」
友達との会話は程々にして、
私に問い掛けた。
「はい、行けます!あの・・・色々すいませんでした!」
「いや、ふざけすぎてごめんね?笑」
小野寺さんはそう言ってこっちに手を振るから、
私は会釈をしながら先輩を追いかけた。

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正門を出るまで先輩は早くて、
私は必死に追いかけた。
でも・・・正門を出たら手を繋いできて今度は私のペースに合わせてくれた。
きっと早く学校から出たかったんだと思う。
「ーーーあいつらに何も言われてないか?」
「冗談だったのって驚きましたけど大丈夫です。」
「ーーーほんとタチ悪いんだよ、あの2人。似たもん同士が付きあってるんだけどな(笑)」
さっきより機嫌が良くなっている、
そんな気がした。
「少しだけ私は嬉しかったです。」
「なんで?」
「だって・・・普段見ることない先輩の友達との姿が見れた気がしたから嬉しかったですよ。」
「ーーーそうか。」

先輩が住むアパートは大学からほんとすぐだった。
「・・・実家からも二駅だし通えば良かったんだけど、兄貴たちも20歳で一人暮らししてるから何となく流れてみたんだよ(笑)」
一人暮らしのきっかけを聞いてみるとこうやって教えてくれた。
「何か食いたいもんあるか?夕飯作る?食べに行っても良いけど・・・」
「私作ります、お腹空きましたよね。あるもの使っても良いですか?」
「ーーー良いのか?助かるわ。」
決して広いとは言えないアパートだけど、
2LDKの広さがあり一人暮らしするには十分な広さだと思う。
それに新築アパートを借りたと言ってただけあって、
とても綺麗でまだ新築の匂いがする。
私はこの新築の木の匂いが大好きだ。

先輩はシャワーを浴びに行った、
私は冷蔵庫を拝借して、
あまりない冷蔵庫の中から炒飯が作れるからと急いで炒飯を作った。

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ちょうど出来上がったところで先輩が戻ってくる。
髪の毛がモサモサ濡れていて、
上半身の服も着ていないーーー。
これが普段の先輩なんだろう・・・
でも私の心臓はドキドキで目のやり場に困る。
「おっ、良い匂いだな。うまそー!」
それに近寄られるとシャンプーの良い匂いが、
また先輩からのフェロモンが私を狂わせる。
「ふ、服を着てください!それから食べましょ!」
「ーーー悪い。」
剛くんの上半身なんて見慣れているけど、
先輩のは剛くんと違う。
ーーー心臓の高鳴りが全く止まらなくなった。

「おれ、洗うよ。柊はゆっくりしてて。」
美味しい美味しいと言って食べてくれた炒飯、
また作りに来てとも言ってくれて、
また来ても良いんだと思って嬉しかった。
「ありがとうございます。ちょっと・・・剛くんに電話してみますね。」
ーーーもうすぐ6時になる、
私はどうすれば良いのか分からなくて剛くんに電話する。
お姉ちゃんとの話し合いがうまく行ってるのか、
どんな話をしているのかすごく気になる。
でも電話越しで聞けることなく、
剛くんは電話に出なかった。
ーーーお姉ちゃんが一緒にいることで、
剛くんとのコミュニケーションが減る。
剛くんもすごくお姉ちゃんに気を遣っている、
何だかそれを少し寂しいと感じた。
「コーチなんだって?」
ベランダから室内に戻ると食器洗いを終えた先輩がソファに座ってる。
「出ませんでした。またあとで電話してみます・・・」
私は遠慮がちに先輩の隣に座った。

「で、柊はコーチの元には戻らないのか?」
「ーーー今まで甘えていたんだと思うんですよね。自立しないと・・・」
「オレは正直に・・・コーチと柊が2人で住んでるのはおかしいと思ってたよ。血も繋がってないし・・・いつ変なことが起きてもおかしくないってずっと思ってたわ。」
「実際に何も起きてませんけど・・・」
「だけど一緒に寝たりしたろ?それって奥さんとしては相当嫌だと思うけど・・・」
「あっ・・・」
私は先輩から視線を逸らした。
確かに体調悪い時は悩んで泣いたりした時、
剛くんはいつもそばにいて励ましたり慰めてくれていた。
寝てない時は一緒に寝てくれていた・・・ーーー。
そっかーーー。
当たり前だと思っていたけど、
それを不愉快に感じる人もいるってことなんだ。
「オレは愛梨さんみたいにはならないけど、少し納得できないところもあったから柊が一人暮らしするって聞いて応援したいと思った。」
「・・・それっていつから感じてたんですか?」
「ん?柊とコーチが一緒に住んでるって聞いた時から。」
「それなのに何も言わないでいてくれたのは私が傷つくからですよね?ーーーありがとうございます。」
先輩は立ち上がり、
私と自分自身に炭酸水を出した。

「ーーー長崎で一緒に過ごした時間は幸せで、柊ともっと一緒にいたいと本気で思った。」
「私もですーーー。すごく幸せな時間で時間が止まって欲しいと思っていました。」
「オレは自分が想像してたよりはるかもっと柊のことが好きなんだなって認識したよ。」
恥ずかしいことをさらっと言う。
「あはは・・・」
「すんごい好きだよ・・・」
「私もすごい好きですよ?」
先輩は真剣な眼差しで私に伝え、
私もそれに応える。
そして私たちは唇を重ねた。
何度も何度も角度を変えて唇を重ねる。
私は先輩の頬にそっと手を添え、
先輩もその上に自分の手を添えた。
そしてしばらくして私を抱きしめた、
すごく強く強くーーー。
「勝手にいなくなんないでくれ・・・」
「ーーーごめんなさい。」
「柊が消えたって聞くたび、心臓がおかしくなる。柊の抱えてるもの全てを理解は出来ない、いろんな環境と状況が違うから柊の思い通りに対応できなことも多い。だけど話を聞くことは出来るから・・・コーチに話せないことならオレに話して欲しい。出来ればコーチじゃなくオレを頼って欲しい。それ、約束して欲しい・・・」
私も強く先輩を抱きしめた。
「ーーーごめんなさい。心配かけてごめんなさい。約束します、先輩に話すって・・・」
私は目を見て伝え、
先輩の唇に自分の唇を重ねた。
普通のキスだけど、
すごくすごく愛が伝わり、
とてもとても幸せな時間だった。

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時計を見ると9時ーーー。
私はどうすれば良いのか分からない。
「ーーー悪い、もう少しかかりそうだわ。」
3度目の電話で出た剛くん、
話がうまくできないのかな、と強く出れなかった。
「・・・今日、柊こっちで預かっても良いっすか?」
「えっ!」
漫画喫茶かどこかに行こうと思ってた私は、
突然の先輩の言葉に驚きを隠せなかった。
「1人で外に出すのも暗いですし、ここならオレもいますし・・・」
「今大事な時期だろ?・・・終わり次第迎えに・・・」
「何時かも分からないのに柊を起こしておけって言うんですか?大丈夫っすよ、スタメンは必ず勝ち取るんで。」
「ーーーなら今夜だけ甘えさせてもらうかな、悪いな。」

そうして、
私は初めて来た先輩の家で、
初めてのお泊まりをすることになった。

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