【 君がいる場所 】#65. 羽田へ戻る日に…*。

君がいる場所

#65. – Itsuki Side –

目が覚めて焦りを覚えるーーー。
ハッとして横を見るとスヤスヤと眠る彼女の姿。
俺の心はやってしまった、
そんな感情だった。

彼女を起こさないようにそっと布団から出て時計を確認すると夜中1時過ぎだった。
せっかく柊と一緒に過ごせるはずだったのに、
彼女とこれからのことをもう一度きちんと話そうと考えていた・・・ーーー。
そして気がついたら目を閉じてしまっていたんだ。
はぁぁぁと自己嫌悪に陥り、頭を抑える。
自分は何をやってんだ、と。
かと言って柊が起きる気配もないから、
俺はシャワーを浴びることにした。
明日は早く起きよう、
まず先に寝てしまったことを彼女に詫びようと頭を流すシャワーの中で決めた。

俺のシャワーは短い、
いつも実家でも本当に洗ってんのかと疑われるくらいに。
洗面所からタオルを巻いて柊が寝ているのを確認ーーー、
寝ていることを確認して俺はガウンを着る。
ふぅぅぅと一息ついて、
もう一度彼女との距離を少し空けて横になった。

ベットに横になり明日の飛行機の時間をもう一度確認する。
確か柊と俺は2時間差での出発だーーー。
同じ便に変更できないかネット上で挑戦してみたがギリギリすぎて空席すらなかった。
ーーー携帯を閉じて目を瞑る、
それと同時に俺の胸に柊が飛び込んできたように感じた。
起きてるのか・・・?
そう思い目を開くと彼女はスヤスヤと眠ってる。
どうやら寝返りをしたようで、
タイミング悪く俺に抱きしめられるような形となってしまった。
俺はすぐ近くに眠る柊の寝顔を見て愛しいと思った。
垢抜けていてあどけない、
普段見ることない彼女を今目の前で見ていて幸せだと感じた。
ーーー心許されている、そんな気すらした。
彼女の髪の毛に触れ、ピクッと彼女が動く。
・・・自分が変な気を起こす前に、
俺は彼女をそっと自分から離した。
だけど彼女はすぐにまた抱きついてくる、
今度は足も絡ませて俺の身動きを取れなくさせる。
ーーー寝たふりをしてるのか?
「困ったな・・・」
俺は独り言を呟く。
「ーーースースー・・・」
静かなこの部屋で聞こえる柊の寝息、
寝たふりじゃないことは分かる。
こんな大胆な彼女もいるんだ、と新鮮さを感じる。
それと同じくらい自分自身が朝まで持つか不安になる、
ーーー今でさえ俺の息子がかなりの危険を感じてる。
やべえなぁ・・・
だがどうやら無理矢理離すと逆効果らしく、
3度離したけど結局彼女は俺の胸に戻ってくる。
そして今は彼女の吐息がちょうど俺の乳首あたりにかかり彼女が息をするたびにくすぐったくなる。
ーーーダメだ、寝ることに集中できねぇ。
もう諦めて俺は彼女を抱きしめてしまった・・・。
手は出さない、
抱きしめるくらい良いだろうと思った。
ーーーそして目が覚めたら朝だった。

ひんやりとした冷たい感触・・・。
細いしなやかな線が自分の胸元に直に感じる。
柔らかいふんわりとした糸のようなものが自分の肌に感じるーーー・・・。
俺の胸元に優しい吐息がかかるーーー。
この心地よい感触は何だろうか・・・ーーー。
「・・・んっ・・・」
オレは胸に感じるくすぐったさで目が覚める。
ーーー彼女はまだスヤスヤと眠ってる、
一晩中彼女を抱きしめていたのか・・・
彼女がオレに絡んで離れなかったのか、
腕が痛い・・・ーーー。
体勢がキツく、オレは彼女から少し離れようと腕を離した。
「おはようございます・・・」
そしたらどうやら起こしてしまったようだった。
「ごめん、起こしたか?」
柊は自分がオレの腕を拘束していることに気が付いてすぐに離してくれた。
「ーーーすいません!私のせいで腕・・・」
「気にすんな(笑)」
オレは解放された左の腕を少し動かしながら彼女に答えた。
腕は解放されたけど、
彼女と俺の距離はさほど離れていなく、
彼女の長い髪の毛がオレの寝相で出てしまった胸元にかかる。
「・・・今、何時ですか?」
彼女が声を出すと吐息が胸にかかってくすぐったい。
「ーーー9時前だよ。」
「・・・そっかぁ・・・」
彼女はそのまま黙ったーーー・・・。

沈黙が続きオレは天井を見る、
柊は目を瞑ってまた寝たようにも見えた。
疲れているんだろう、
と思ってオレはそっとしておいた。
「ーーーこのまま時が止まれば良いのにって思います。」
しかし寝ていると思った彼女が突然口を開いたから驚いてオレは彼女の方を向く。
「オレも同じように思う。」
彼女はそっと俺の胸元に手のひらを乗せた、
その手のひらがあまりにも冷たくてドキッとした。
「・・・心臓早い。」
「生きてるからな(笑)」
「先輩の心臓の音、すごく落ち着く。」
彼女はそう言って自分の耳元を俺の心臓に当てる。
ーーーそれと同時に彼女の体が震えた。
「どした?寒いか・・・?」
「・・・っっっ・・・」
彼女の方に上から視線をやると泣いている・・・。
俺の胸に両手を当てて、
支えにしながら泣いている・・・。
俺は理由も聞かずに彼女を抱きしめた、
今回は拒否されなかった、
そのことだけに安堵を覚えた。
「このまま時が止まれば先輩と一緒にいられるのに・・・離れるのが辛いです・・・」
そう言って彼女は泣いた。
一生会えないわけじゃない、
また東京に戻ったっていつでも会える。
でもきっと彼女は今この瞬間の気持ちを話してるんだろう。
「ーーーうん、そうだよな。」
「好き・・・先輩のことが好き。・・・本当はずっと前から前に進めてた、でもその気持ちを認めたくなかった。彼を忘れて行く気がして認めたくなかった・・・」
「ーーー思い出になんかしなくて良いんじゃないか?柊の心の中でずっと生き続けてる、それで良いんじゃないのか?俺は無理に忘れる必要ないと思ってる。」
「でもそれじゃ失礼・・・」
「失礼かどうかは相手が決めることであって柊が決めることでないよな。俺からしたら相手の気持ちを無視して1人で勝手に決めるほうが失礼だと思う。」
「ーーー怒ってないんですか?1人で長崎に来たり色々・・・」
「いなくなったとわかった時は怒ってたよ。だけど吉岡さんたちに居場所聞いたら怒りも全部吹き飛んでたわ。それに俺にも落ち度はあったし・・・」
柊は俺に抱きついた、
彼女の涙が俺の腹の肌を伝う。
大丈夫、と安心させるかのように俺は彼女の頭をポンポンと優しく叩いた。
「・・・オレは感情を言葉にしたりするのは苦手だ。だけど自分が心を許した相手は守りたいと思う、それは彼女や友達に対して皆んなに。だから今回のことで傷つけてしまったんだと思って反省してる。ーーーこれからもきっと柊を傷つけてしまうことや口下手なことで嫌な気持ちにさせるかもしれない。バスケで寂しい思いもさせると思う。・・・それでもオレは柊と一緒に過ごしていきたいと思うよ。」
「・・・ずるいですね、ノーって言えないのわかってて言うから。」
「そんなことはないぞ?ノーと言われるのも少しは可能性あるだろ・・・」
「ーーー喧嘩してても引越しは1番に知りたかった。」
「・・・うん。」
「ーーー一番に引越し先に行きたかった。」
「ーーーあいつらが押しかけて来て断れなくてごめんな。」
「分からないことが多いけど先輩が何を考え、何に悩んでるのか知りたい。」
「・・・寝れば忘れるけど。」
「それから・・・」
「もういいよ、その都度言って。」
オレは彼女の唇と自分の唇を重ねた。

オレのキスを受け入れてくれ、
何度も何度も唇を重ねるーーー・・・。
朝だからオレも元気で、
彼女と濃厚なキスをするたびにオレの息子もさらに元気になる。
ーーー彼女もそれに気が付いている、
でも何も言わないのは彼女は今日はその覚悟を持ってないと言うことになる。
「ーーー辛い?」
彼女はオレに問いかけ、オレの固いものを触ろうとする。
「大丈夫、気にすんな。」
俺はまだ純な彼女を汚したくなくて、
彼女の手の行方を阻止した。
ただこうして彼女と抱き合い、
唇を重ねている・・・
それだけで今は満足だ。

「じゃ、また東京で・・・家に着いたら連絡入れておいて。」
重い腰を上げ身支度を済ませ空港で遅めのランチを共にする、
そして柊は俺よりも2時間早い羽田行きのフライトで先に旅立った。
「・・・はい、また連絡します。」
柊は笑顔で税関の中へと消えたーーー。

「着きました、今度は先輩ですね!気をつけて!」
それから1時間半後に彼女からのメール、
オレは羽田に戻ったらまず彼女にもう一度会いに行こうと決めてフライトに乗った。

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