【 君がいる場所 】#64. 君と長崎巡り*。

君がいる場所

#64.

先輩が突然来て驚いたどころか・・・
心臓が飛び出るかと思った。

スポンサーリンク

せっかくなら楽しもう、
天丼専門店で美味しい天丼を食べている時にお互いに話し合った。
「今日のこれからの予定は?」
「稲佐山に行こうと思ってるんです。三大夜景の一つなんですよ、知ってます?」
「ーーーしらねぇ。」
「それが彼の願いで・・・稲佐山からの夜景を見てみたかった、と。だから私がこの目で見て焼き付けておくんです。」
「ーーー一緒に行ってやるよ、1人だと寂しいだろ(笑)」
「大丈夫ですって!」
「いいから行くぞ。」
今日の先輩は少し強引なところがあって、
一度話したら聞いてくれない。
結局一緒に稲佐山の入り口まで来てしまったーーー。

「ーーーもしもし」
チケットを格安で買えると言う先輩に甘えて買いに行ってくれてる時、
剛くんから着信を受けた。
「明日何時の便だっけ?迎え行こうか?」
「・・・大丈夫、タクシーで帰るよ。あのね・・・」
「ん?」
「樹先輩が来たの・・・」
「は?えっ?マジで?(笑)アイツ、何やってんだ笑」
「ーーー剛くんが教えたんじゃないの?」
「オレじゃないよ(笑)聞かれたけど断ったんだよ、すげーな(笑)」
「・・・わたし、一緒にいるの辛いはずなのに離れるのも嫌だと思っちゃっててさワガママだよね(笑)」
「ーーー人間はみんなワガママだからな。ただ人生は一度だから後悔するような選択はしてほしくないってところかな。」
「・・・後悔、かぁ・・・」
「オレ個人の意見として樹を手放すのはもったいないと思うし、良よりも樹の方が花にはお似合いだとも思う。・・・初恋を拗らせてるのは分かるが、それは自分が良を死なせてしまったと言う花の誤解の感情から生まれてる気持ちだとオレは感じてる。お前は・・・とっくに前に進めてるのに自分を責めてる。・・・長崎まで追いかけてくる樹の気持ちも考えてやれよ。」
剛くんは私を責めるわけでも叱るわけでもない、
一意見として言ってくれた。
「ーーーきちんともう一度話してみる。」
「・・・アイツは花を裏切ってないよ。オレにも後悔しかないと言ってきた、行動では安易だったけど気持ちの上では裏切ってないと思うぞ。信じてやれ。」
これまでずーと剛くんと暮らしてきて、
今までで1番彼の声が私の心に響いた気がした。
「ーーーすいません!」
電話を切ると先輩は入り口付近で私の電話が取るのを待ってくれていた。
「大丈夫だったか?」
「剛くんでした、明日迎えに行こうかと過保護の電話でした(笑)」
「ーーーなら行くか。」

スポンサーリンク

一緒にゴンドラに乗り頂点へと向かうーーー。
稲佐山からの景色はまだ日が暮れていないのにすごく綺麗で長崎全体を一望できる。
「うわぁ、凄いですね!」
ドンっと広がる景色に私も先輩も感動のあまり一瞬止まった。
「すげーな・・・」
どの角度から見ても長崎の景色、
三大夜景の一つと言われているのが分かる気がする。
「見てください、サンセット!凄い綺麗・・・」
「ちょうどゴールデンタイムなんだな・・・」
「ゴールデンタイム?」
「ーーー太陽の光が沈む瞬間、それをゴールデンタイムと言うらしいぞ。」
私の知らない情報をインプットしてくれる。
そのゴールデンタイムと言うものは本当に一瞬で、
これだけを見るために来る人もいるくらい貴重な時間らしい。
でもその通りで、
あっという間に綺麗だった夕日は消え、
今はもう暗くなり、
展望台からの見える景色は長崎の街が光照らされていてとても綺麗。
「・・・日本三大夜景だと言われる理由がわかるな。あとどこなんだ?・・・へぇ、福岡と北海道だってさ、九州つえーな・・・」
私が答える間もなく先輩は携帯で調べ上げて教えてくれた。
「いつか全部の都市を回ってみたいです、私夜景が好きなんです。」
「ーーーそうなんだ。夜出かけてもいつも近場だったもんな・・・笑」
先輩は苦笑いをこぼした。
そして沈黙が流れながら、夜景を見る。
満月がとても輝いていて、
まるで私たちを見守っているようにも見えた。
ーーー私はカバンにつけていたアクリルの小さな箱を取り出し、蓋を開けた。
その瞬間に強い風が吹いて、
中に入っていた砂が空へと舞う。
私はその勢いに負け目をこする、
だけどそれがまるで自分から月に行っているようにも見えて・・・良くんがそこにいるように思えた。
「・・・ありがとう。さようなら。」
私はそう呟きながら、
空に舞うその砂を眺めた・・・。
「ーーー遺骨?」
それを先輩が隣から問う。
私は答えの代わりに首を縦に振った。
それ以外は何も言わず、
ただ良くんの砂が消え去るまで私たちは黙って見てた。

「・・・自分から月に向かってる、そう見えました。」
「ーーー綺麗に風に舞ってたな。」
「きっとあの満月の月に・・・本来あるべき場所に・・・解放された感じですね(笑)」
「ーーー大丈夫か?」
先輩は私が泣いているんじゃないかと覗き込んだ。
「大丈夫です(笑)私も・・・自分を許してあげたいです。」
「許す?」
「ーーーさっき剛くんに電話で言われたんです。私が前を向けないのは良くんを死に追いやってしまったと言う責任を感じているから、だと。本当は前に進めているのに自分を責めていると。・・・そうなのかなって少し思ったんです(笑)多分自分を責めることで生きる術を見つけていたんじゃないかなって。とっくに思い出になってるのに認めたくなかったんだろうなって。」
「ーーー難しいよなぁ。俺はまだ身近な人を亡くしたことないから安易な言葉はかけられなくて申し訳ない。」
「ーーーいいえ。一緒に来てくれて心強かったです。ありがとうございます。・・・帰りましょうか。」
私は先輩に笑いかけ、
先輩もそれに応えるようにゴンドラ乗り口まで歩き出した。

スポンサーリンク

そして今は長崎にある中華街でちゃんぽんを食べている。
私の宿泊しているホテルがここから近いこと、
そしてまだこっちに来て長崎名物のちゃんぽんを2人とも食べていないってことで急遽食べに来た。
「うまぁぁぁ!!」
心の声が漏れた・・・ーーー。
その声を聞いて先輩は笑う。
「柊でもそんな声が出るんだな(笑)」
「ははは・・・すいません。」
「ーーー自然体で俺は嬉しいけどな。」
私はカタ焼きそばを、先輩はちゃんぽんを頼んで2人でシェアしたけど両方とも本当に美味しくて。
「そういえば先輩のホテルはどの辺なんですか?」
「・・・昨日、吉岡さんたちに柊が長崎にいるって聞いて急いで来たからホテルとってないんだわ。さっきこの付近の漫喫調べたら結構あったから満喫で今日は寝るわ。」
「えっ・・・」
「知ってるか?今の漫喫はホテル以上に居心地いいんだぞ(笑)」
「・・・そういえば、昨日吉岡さんたちとご飯食べました。」
「写メが送られてきたよ(笑)それまで柊がどこにいるかも分からなかったから救われた気分だった。森はしつこくなかったか?」
「ははは・・・吉岡さんに助けてもらいました笑。でも先輩の友達がいてびっくりしました。」
「ーーー同じく。」
お店を後にして少しだけ中華街を歩くーーー。
長崎の中華街は横浜に比べたら小さい、
でも長崎らしい建物や売ってるものもその土地のものだったりして新鮮さがあった。
「これ、須永くんに似てません?」
「ーーーそんなこと言ったら怒られるぞ(笑)でも・・・確かに似てるな笑」
「でしょ?こっちは・・・剛くんの怒った顔?(笑)」
「ーーー適当だろ笑」
こうやって先輩と夜に出歩くのは初めてで、
とても楽しくていろんなお店を見て回る。
「うわぁ、これ双葉に似合いそう!」
双葉はいつもポニーテールをしている、
ほんわかな雰囲気をしているから彼女に似合いそうな緑色のゴムを見つけた。
「・・・同じ柄のピンもある!環に似合うかな・・・」
先輩が隣にいるのに1人で悩む私。
「自分には買わないのか?」
「私はいいんですよ!笑 ちょっと買って来ますね。」
「ーーーならオレが柊に買ってやるわ。」
先輩は商品の中から、
双葉と同じゴムを取りレジに進む。
「先輩!自分で買います・・・」
「柊は買うつもりなかったんだろ?だったらこれはオレからのお礼ってことで。」
「お礼?」
「・・・今日すごく楽しかったよ。ありがとうな。」
そしてホイッと私に購入したゴムを手渡してくれた。
「・・・こちらこそです。」
お礼を伝えて、
私は環たちのお土産を購入した。
「コーチは?」
「剛くんは・・・カステラ頼まれてて明日買います。」
ウィンドウショッピングを楽しむ一方、
時が進むのが早くて少しずつお店の閉店しているのが見えて来た。

「俺たちも帰るか・・・」
もう少しいたかったけど、
この言葉で現実に戻される。
「ーーーありがとうございます。」
結局先輩はホテルのロビーまで送ってくれた、
夜の女の子は危ないからって。
女の子として扱ってくれる、それがすごくすごく嬉しくて涙が出そうになる。
ーーー好き、それが溢れてしまいそうになる1日だったと思う。
自分の気持ちを守りたくて先輩からの申し出は断ったけど今になってそれを後悔する。
「今日1日たくさん歩かせたし、疲れただろうからゆっくり休んで。」
そう言って背を向ける、
それを見届ける私。
ーーー先輩は?
これから満喫で寝るの?
「先輩!」
そんなの耐えられない!
私は大きい声で先輩を叫んだーーー・・・。
駈歩して向かおうと思ったけど、
先輩の察する通りで足がもう限界で動かなかった。
「どした?」
逆に先輩が恥ずかしそうに視線を浴びながら私のところに戻って来た。
「・・・私の部屋で寝ませんか?」
「えっ?」
「いや、わたし・・・2人部屋を間違えて予約しちゃっててツインベットですから大丈夫です。満喫で寝るよりきちんとベッドで寝た方がバスケに響くんじゃないかと・・・」
何を弁解しているんだろう、
苦笑いが溢れる。
でも本当のことで、
私は2人部屋を予約してしまった。
一部屋料金のホテルだから先輩が泊まっても違反にはならないと思う。
「ーーー甘えても良いのか?」
「えっ?」
「満喫で寝るのは問題ないけど、もう少し柊と一緒に過ごしたい。」
真面目な顔で先輩は言った、
だから私は先輩を部屋に招き入れたーーー・・・。

ただ話すだけなのに緊張するのは片思いの時以来。
先にコンビニで購入した飲み物を出し、
テレビをつけて置いてあるベンチに向かい合わせに座る。
「ーーー疲れたろ?風呂入ってくれば?」
「足が痛くて・・・つかってきますね。」
先輩の言葉に甘えたけど、
私は先輩が近くにいる嬉しさ、
自分の身勝手で振り回しているんじゃないかという不安が同時に押し寄せてブツブツ独り言を言ってた。

だからお風呂から戻ったら、
もうベットで先輩が横たわって眠ってた・・・。
私だけじゃない、
疲れたのは先輩もだよね、って。
飛行機に乗って来てすぐにこんなに動いて、
疲れたよねって思って私も先から少し距離を置いたところに横になった。

ーーーどうかこの時間が続きますように、
そう願いながら私は目を瞑った。


これが稲佐山から見た満月です❤︎
小説は完全オリジナルですが、
写真は私が撮影したもの✳︎
本当に美しかったです!

コメント

タイトルとURLをコピーしました