【 君がいる場所 】#61. もう1人の幼馴染*。

君がいる場所

#61.

ーーーよく覚えている、
ううん思い出した。
小さい頃はよく一緒に遊んだし、
お風呂にも一緒に入った・・・。
正確には忙しいお母さんの代わりに、
私とお姉ちゃんを風呂に入れてくれていた。
ーーーお父さんみたいな、
お兄ちゃんみたいな人だ。

スポンサーリンク

「どう言う知り合いなの?」
「うーん・・・どう言う・・・」
幼馴染といえば幼馴染、お兄ちゃんといえばお兄ちゃん・・・
説明が難しくて頭を抱える。
「とにかく食おうぜ、美味しいもんが不味くなる。」
そこに樹先輩が助け舟を出してくれ、
私は会釈をした。
「おいしー!口がとろけそう・・・!!」
みんなが口を揃えて言う・・・ーーー。
本当に美味しい!
どこか懐かしくもあり、
温かくもある優しい味のレストランだと思った。
ーーー愛情がたくさん入ってる、
そう思った。
「これ、オレからのサービスです。知り合い特典ってことで(笑)」
ちょうどご飯が終わる頃に届いたティラミス、
これは奥様お手製らしい。
「で、どんな知り合いなんですか?」
「あーー・・・花は覚えてないだろうけど・・・」
「ーーー簡潔に言うと剛くんのお兄ちゃんです。つまりコーチのお兄ちゃん。」
悩んで悩んで細かな説明をやめて簡単に説明した。
「えっ!!コーチのお兄さん?!花以外バスケ部でお世話になってて・・・」
「それは弟がお世話になり・・・って花、記憶戻ってんじゃんか笑」
「ーーーある程度はね。」
店内もランチタイムが過ぎて来たから少し空いて来て、
ヒロくんは隣の椅子を私たちのテーブルに持って来て仲間に入った。
「記憶って?記憶なかったの?」
「ーーーちょっとだけ。」
それだけでヒロくんは私がこの話題から避けたいのを察して話題を変えてくれた。
「弟はヘマしてない?あいつ大丈夫?」
「コーチめちゃ良い人ですよ!めちゃ頼りにされてます!」
「ーーーそりゃ良かった!正月しか帰ってこねーんだもん、にいちゃん寂しいって伝えておいてよ(笑)」
「ーーー東京遊びに来たら?泊めてくれると思うよ?」
「新婚さんの家に行けないだろ(笑)・・・あっ、でもお前も転がり込んでんのか!(笑)」
「うっさいなぁ(笑)卒業したら出ていくもん!」
「はいはい。にしてもあのチビがこんな美人になっちゃって・・・アイツがいたら心配だったろうな(笑)」
「ヒロくん!」
昔からヒロくんはよく喋る、
つまり口が軽くて信頼ゼロなのだ。
「で、どれが花の彼氏?君?」
「ーーーオレじゃないっす(笑)」
須永くんはすぐに反応した。
「じゃあ君?」
席順にヒロくんは当てる。
「違いますよ(笑)」
次が先輩の番ーーー・・・
「ここにはいないから!いたとしてもヒロくんには絶対に教えないわ(笑)」
樹先輩の晩になる前に私は必死に遮った。
こう言うやりとり久しぶりだなって・・・
ヒロくんと話してて思った。
剛くんともこう言ったやりとりできる、
でも先輩となるとできないなっていうのも痛感した。
「なんか・・・兄弟みたいですね(笑)」
「そうよ?オレ、この姉妹のお風呂担当だったからね?(笑)」
「ひろくん!恥ずかしいこと言わないでよ笑」
「本当のことじゃんか(笑)それは酷いもんで、姉妹でオレに水鉄砲攻撃するわ、真冬に水をかける・・・可哀想な扱いだったんだよ、酷いでしょ?」
「でも楽しそうですね・・・笑」
「まあ楽しかったけどね笑」
ヒロくんが・・・
私の友達たちと昔の話で盛り上がる、
それがなんだか不思議の感覚だった。
「コーチとは連絡取ったりしてるんですか?」
「してるしてる!電話だけで寂しいんだけどな・・・」
きっと本当に寂しいんだと思う、
ヒロくんは切なそうに携帯を見せてくる。
「ーーー知り合いなの?」
サボってるヒロくんの元に奥さんが来た。
「そうそ。こいつ、花だよ。」
「ああ、剛くんがいつも話している花ちゃん?」
「そうそ!心配で仕方ないらしい(笑)」
「ーーー心配って過保護すぎるんだよ、剛くんは(笑)」
「まあずっと一緒にいたら愛着湧くもんよ?」
奥さんはそう言って2人の馴れ初めを話してくれた。
ーーー高校の同級生で、
なんとなく卒業しても時々遊ぶ関係で。
体の関係も付き合うとかそう言うのはお互いになくて、
ただ時々ご飯に行く友達だった。
ーーー数年前にヒロくんに結婚しようと言われ、
この人と離れるのは嫌だと思って結婚したと言ってた。
「今、思えばずっと一緒にいて愛着湧いたのかしら?」
「ーーーえええ、オレのこと好きだったんじゃないのか・・・笑」
「そんなこと言ってないわよ(笑)」
みんなの前でいちゃついてる様な、
そんなふうにも取られこちらもニヤニヤしてしまった。
「でも夫婦でこんな素敵なレストラン、憧れです!」
その場の雰囲気を変えるかのように環がヒロくんに言った。
「ーーー弟の夢だったからさ。それを叶えたんだ。」
ーーー弟?剛くんの夢?
剛くんの夢は先生じゃなかったの?
「コーチにも意外な夢が!お兄さんに託すなんて罪深い人ですね(笑)」
環が言う。
「ううん、この人にはもう一人弟がいてね・・・。その弟さんが最後に残したメモに書かれてたのよね。今隣にいる彼女とお店を開くのが夢です。って。」
えっ?私知らない・・・。
ヒロくんを見ると、彼は視線を下にそらした。
「8歳よ、8歳の子が書いたのにませてるわよね(笑)それを本気にしたこの人が、弟の夢を叶えるって去年開いたの。」
私は俯いて膝の上で拳を握った。
「それ、本当・・・?」
「ーーー本当だよ。剛がそのメモを持ってる。見せて貰えば良い。良はいつも前を向いていた、病気で苦しんでても先が短いと分かってても大人になったらといつも話してた。だから俺たちも前を向いていくことにしたんだ。」
涙は流さない・・・。
だけど良くんの想いを知って胸が張り裂けそうだった。

「東京来る時、剛くんに連絡してみてね。」
「おお!また会おうな!みんなもバスケ頑張ってな!」
結局3時間くらい居座ってしまったけど、
美味しいデザートもおかわりして大満足のお昼ご飯となった。

スポンサーリンク

「じゃ、また学校で!」
「バイバーイ!」
行きと同じように方向が同じ組に分かれ、
私は先輩の車に乗った。
高速から降りてお土産屋さんで最後のお土産を調達、
そのまま下道で帰ろうとなった。
でも先輩は私と二人きりになってから何も喋らないーーー。
「あの・・・」
「なんだ?」
「伊東の駅で車おろしてもらえたら電車で帰ります・・・」
「は?」
一瞬睨まれた気がしたけど、
先輩はすぐに運転に集中した。
「ーーー今、私といるの気まずくないですか?伊東なら近いし・・・」
先輩は路肩に車を止めた。
「ーーーレストランにいた時、誰のこと考えてた?」
「えっ?」
「・・・今、誰のこと考えてる?」
「あのレストランは・・・お前と亡くなったコーチの弟の夢が詰まったレストランだったんだな・・・」
「気がついて・・・」
「ーーー柊の表情見てたらすぐわかる。今・・・苦しいんだろ?そいつに会いたいって思ってるんだろ?初恋の人だもんな?」
「ちが・・・」
「だけどお前の初恋の人はもういないんだよ!会いたくても会えないんだ、天国にいるんだよ!」
樹さんが私に向かって怒鳴ったように聞こえた・・・。
「やめて・・・聞きたくない!」
「お前はそうやっていつも現実から逃げる!環とオレとの間に何があったか、それすらも聞こうとせず逃げる!」
「違う・・・」
「柊の初恋はまだ終わってない・・・!!お前の中にまだその彼が大きく存在してる・・・そんな柊とオレは一緒にいるつもりはない。」
つまり私のせいにして、
私と別れようとしているってことだよね。
私からこぼれ落ちる涙、
感情が爆発した先輩ーーー。
その二人の心を現すかのように突然のゲリラ豪雨が襲い、
先輩は車を発進した。

渋滞に巻き込まれることもなく帰路に着いた私たち。
「長い運転、往復ありがとうございました。これ、運転代・・・」
「いらないよ。あまり寝れてないと思うしゆっくり休め。また連絡する。」
先輩は私からのお金を受け取らなかった。
そしてさっきまでの感情爆発の先輩は消え、
いつもの落ち着いている先輩に戻っていた。

スポンサーリンク

帰宅して早々、私は剛くんにヒロくんに会ったこと、
良くんの手紙のことも聞いた。
ーーー剛くんはもうすでに知ってて、
いつでも見せられるようにと出しておいてくれた。
「ーーーオレがこれを兄貴から受け取ったのは花が樹と付き合ってからだ。だから見せるべきではないと判断した、悪かった・・・」
「ありがとう。」
手紙を受け取りお礼を伝えて部屋に入った。

《 大きくなったら今隣にいる彼女ーーー、花とお店を開きたい。それがオレの夢。オレの初恋の人。生きたい・・・花のこれからを見届けたい。》
そう良くんの字で書かれていた。
ーーーそのメモを握りしめて、
私は声が我慢できなくなるほど泣いた。
剛くんにもきっとそれは届いてた、
でも敢えて剛くんは私に声をかけなかったんだと思う。
その証拠に部屋の外におにぎりが置いてあったから。
ーーー良くんは最後まで生きたいと願ってた。
最後の最後まで希望を捨てないでいてくれた。
たった6歳と8歳の初恋だったけど、
簡単な初恋じゃなかった・・・ーーー。
本気の初恋だったーーー。
彼の想いを知った今、
私に出来ることはたった一つ。
前を向いて生きていくことだ。
過去ばかりに縛られるのではなく、
彼と共に前を向いて・・・
だけどその前に・・・
と思い出して昔書いていたノートを収納棚から取り出す。
6歳ながらに二人の隠れ屋でやりたいことを書いたメモ。
・結婚式
これは擬似でもやった、やらなければ良かっと後悔ばかりだけどやった。
・一緒にハウステンボスに行きたい。
良くんの願いだった。
テレビで見たハウステンボスの光景に感動し、生で見てみたいと入院してる時からずっと言ってた。
それならば私が叶えてあげようと思った。

私はその全てを剛くんに伝えた。
「ーーーそれは樹を・・・裏切ることになるんじゃないのか?」
剛くんはこの世にいない人より、今そばにいる人を大切にしてほしいと反対した。
「多分そうなんだろうね。ーーーでも私はずっと記憶がなくて戻った今、良くんの死を乗り越えたつもりで乗り越えてなかった。きっと先輩はそれに気がついていたんだろうね。そんな私が先輩と一緒にいる資格あると思う?笑」
「ーーー後悔しないのか?」
「私も前を向いていきたい。そのために良くんがやりたかった唯一のことを叶えてあげたいの。」
「樹と別れることになっても叶えたいことなのか?」
ーーー先輩の好きな人は違うから、とは言えずに私は頷いた。
「ーーー一緒に行く、と言いたいがもう夏休みも終わるし仕事がある。いつ行く予定なんだ?」
「・・・決めてないけどバイト代が貯まったらと思ってる。」
「一応決まったら知らせてほしい。バイトも無理すんな。」
「ーーーはい。」
それから私は毎日バイトを入れ、
長崎行きのためにと週末のバイトも増やした。

スポンサーリンク

BBQから2週間、夏休みが終わった。
あの日から誰かから誘いを受けることもなく私は毎日暗くなるまでバイトに邁進して過ごした。
先輩からもあの日を境に連絡はない、
2週間連絡取らないなんて付き合ってても何度もあったしきっと練習に忙しいんだろう。
ーーー今の私は連絡来ないからと言って何か不安になるようなこともなかった、
それよりもお金を貯めることに必死だった。

「おはよう、久しぶりだな!」
今日は夏休み明けの登校日、
流石の私もバイトは夕方からにしている。
「おはよう、須永くん。髪の毛切った?」
「おう!柊は・・・少し痩せた?」
「毎日バイトで遅いからあまり食べる時間もないからかも(笑)」
「ーーー今日学校終わってら飯でも行く?環とか双葉誘うけど?あっ、今2人喧嘩してるから環か双葉になるわ・・・」
須永くんの言葉であのBBQの日に見た環と双葉の様子の変化は嘘じゃなかったんだと私は思った。
「これからバイトなんだ。今のバイトすごく楽しくて・・・先輩たちとは会ってるの?」
「いんや?今、シーズン始まる直前でめちゃハードらしいぞ。柊もなかなか会えないんじゃないか?」
そんな私の返事を聞くこともなく須永くんは別の友達に呼ばれて教室から出て行った。
私は・・・クラスに結局馴染めずに過ごしたから1人で自分の席に座る。
三年生の登校日は簡単なもので出席を取り後は自習になる。
帰るものもいれば残って自習、
友達と雑談する人もいるーーー。
私は前者で、
ホームルームが終わり次第バイトに向かった。

私のバイト先はカフェだからランチタイムに混雑することは滅多にないけど、
最近カフェランチというものを取り入れ始めた。
それによってランチタイムでも外に並ぶことが増えた。
ーーー結局混雑が凄すぎて、
この日は4時予定が5時にバイトが終わった。

「ーーーな・・・花・・・?」
帰宅して夕飯作ってソファでテレビを見てると耳から聞こえる慣れた声。
ハッとしてガバって起きる。
「ゴメン、寝ちゃってた・・・」
「こんなところで寝てたら風邪ひくぞ。・・・大丈夫か?」
剛くんは心配そうに私と向き合うように座る。
「えっ?」
「すごい疲れているように見える・・・。無理してバイトしなくても・・・」
「大丈夫!もうすぐ目標金額だし、そしたら減らす。」
「分かったよ(笑)無理すんなよーーー。」

剛くんの言葉通りこの日はすごく疲れてて、
お風呂に入ってすぐに寝た。
次の日、私は双葉とランチをする約束をしてた。
ーーー昼前に起きて急いで支度をする。
「ーーーバイト大変なの?」
「今人が足りなくてほとんど毎日!(笑)」
「今日もバイト?」
「今日は休み、だからたくさん食べよ!」
新宿駅にあるイタリアンでペアセットを頼み、
ピザとパスタを一つずつ頼む。
前菜のサラダもバケットも美味しくて、
頬がとろけそうだった。
「あのね、花に伝えておきたいことがあって。」
改まって双葉が私に伝えた。
「えっ、うん・・・」
「正樹先輩とBBQ付近から付き合ってるんだ。」
あっ、そのことか、って思った。
「そうなんだね、おめでとう!」
「ありがとう。そのことで環と喧嘩してて、でも花も環と喧嘩してるって正樹先輩から聞いて・・・」
私は食べている手を一度止めた。
「あーー・・・うん。色々あってね・・・」
「私が言える立場じゃないけど、環が好きなのは正樹先輩なんだ。」
「えっ!?」
驚愕の事実に驚いたーーー。
「ーーー環から正樹先輩の相談受けてて、私が仲を取り持とうと結構仲介したりしてて。そしたら・・・私が好きになっちゃって、先輩も好きだって言ってくれて環から好きな人を奪う形になっちゃったんだよね。」
「そっか、そーなんだね!でも両思いになれて良かったね!」
私は笑顔で伝えたーーー。
人の好きな人を奪う形になったとしても、
好きな気持ちは簡単に消せないから誰も責めることはできない。
環が正樹先輩を好き・・・ーーー。
だったら私の聞いた環の言葉はなんだったんだろう。
好き、って樹先輩に言ってた気がする。
でもたとえそれが誤解だったとしても、
環が正樹先輩を好きだったとしても・・・
樹先輩が環に好意を抱いていたのは本当だと思う。
好きじゃなきゃ抱きしめない、
それに私はキスしたところを見たんだから・・・ーーー。
「花は・・・これで良いの?」
環とのことを言ってるのか、
先輩とのことを言ってるのか分からなかった。
「わたし?」
「・・・これからバスケ部のみんなで樹先輩の引越し祝いと誕生日祝いをする予定なの。花も連れてきて欲しいと正樹先輩に頼まれて今日誘ったんだ。私も環とは気まずいけど仲直りしたいと思ってる、好きな人を奪ってしまったこときちんと謝罪してこようと思ってるの。」
あー、後者の方だったか・・・。
「先輩引っ越ししたんだね!」
「ーーー先週したみたいだよ、大学から徒歩圏内で行けるアパートって聞いたけど。」
もう普通に歩いてても会えない距離だな、と少し寂しくなった。
「私、引っ越ししたこと、今双葉から聞いて知ったんだけど?(笑)もし先輩が私を彼女だと認識してたら普通1番に知らせない?」
「・・・それは・・・」
「そういうことなんだよ(笑)それに私ね、今目的があってバイトしてて。だからほとんど毎日バイトなんだ、明日もバイトだし・・・だから今日は行けないかな。またいつか行ける日が来たら行くよ。」
双葉と分かれ、
私は自宅に戻ったーーー・・・。
夜、双葉から先輩の新居での集合写真が送られてきた。
「次は花も一緒に!」と。

・・・次はないよ、
そう心で唱えて私は眠りについた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました