【 君がいる場所 】#58. 誘惑と傷*。

君がいる場所

#58.

最初、先輩は戸惑っていた・・・ーーー。
いつもそう、
剛くんと暮らすこの部屋に入ることを先輩はためらう。
きっと自分の知ってる先生だからこそ、
何か感じるものがあるんだとは思う。

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「今お茶淹れますね、適当に座っててください。」
自分の荷物を部屋に放り投げて、
冷蔵庫から冷たい麦茶を注いで差し出す。
「ありがとう。」
「なんか食べますか?わたし、これからご飯で・・・」
「いや、すぐ帰るよ。見せたいものって?」
やっぱり先輩は落ち着かない様子で、
ソワソワして早く帰りたい感じが伝わってくる。
私はキッチン作業を止め、先輩の隣に座った。
ーーー先輩を見つめ、
その瞳の中に映る自分を見る。
そして先輩の瞳から戸惑いすらも感じる。
「・・・ちょっと来てもらえますか。」
私は大きな深呼吸をして先輩を自分の部屋に誘導した。

誰もいない真っ暗な部屋、
湿気の多い暑いこの私の部屋・・・。
「な、何してんだ?!」
私は羽織っていた黒いシャツを脱ぎ、
中に着用していた白のキャミも脱いで上半身下着一枚になった。
だから・・・先輩は驚いた。
「・・・わたし、先輩のこと好きです。だから・・・私の全部を見て欲しい。」
ベットに座る先輩は動揺を隠せず視線を泳がせる。
「言ったよな?今おかしいんだって・・・こんなの拷問になる・・・」
先輩は私の腕を強く掴んで自分の方に引いた、
そして自分の膝の上に私を座らせて強引にキスをした。
先輩の舌が私を強く包み込む、
こんな強いキスを私は知らないーーー・・・。
あまりにも気持ちよくて快感で、
ただのキスなのに自分が失われていく・・・ーーー。
先輩を見つめる自分の瞳に理由が付けられない涙が溜まる。
ーーー私は先輩の頬を両手で包む。
先輩は私の束ねられた髪の毛のゴムを外す、
その瞬間に長い自分の髪の毛が自分と先輩の顔を覆う。
「・・・この方が大人っぽい。」
それだけ言って先輩はまた私の唇を・・・ーーー
舌を絡めて強く深いキスを続ける。
「んっ・・・」
そして先輩の手が私の胸に触れた瞬間、
変な声が出てしまって恥ずかしくなった。
それと同時に・・・
自分の下半身に何か固いものが当たってるのを感じた。
「・・・あっ・・・」
それを感じてしまったら、
先輩とのキスも触れられてる胸の部分も先ほど以上に快感を覚え、
声を出さずにはいられなかった。
先輩はその声に応えるかのように、
私を先輩の手と唇で刺激し始めるーーー。
・・・私は声を我慢できない。
さっきから変な声が自分の口から発されてるのに対して羞恥心を覚えつつ、
我慢出来ない。
そして・・・
「あぁ・・・っっっ」
先輩が直に私の胸に触った瞬間、
ありえないくらいの声が出てしまった。
快感で・・・
気持ちよくて、
どうにかなってしまいそうな。
その声にスイッチが入ったのか、
先輩は私のブラを上手に片手で外したーーー・・・。
これが慣れている、ということなんだろう。
初めてと経験者の違い。
顕になった私の胸を隠す自分、
そんなのお構いなしにまるで赤子のように口に咥える・・・
「あっ、先輩・・・あっ・・・」
片方は口で乳を吸うかのように、
もう一方の胸は先輩の手に包まれ独占されていた。
ーーー気持ち良い、
それ以外の言葉が出ない。
そして私の下半身にも少しずつ変化を感じていたのも歪めなかった。

ーーー ドサっ ーーー
そして先輩は私をベットに横にして自分も覆い被さるように向かい合った。
「ま、待って・・・?」
ハッと冷静になった私は先輩に呼びかけた。
「・・・好きだ、柊が好きだ。止めらんねーんだ・・・」
ずっと先輩の口から聞きたかった言葉を今聞けて嬉しいのに、
傷を見ても好きでいてもらえるのか不安で、
私の瞳から涙が溢れた。
「・・・やべ!悪い!やりすぎた・・・!」
その涙を見てハッとした先輩は、
私を抱きしめて何度も謝ってきた。
「違う、嬉しいんです。私だってこのまま先輩と繋がりたい、でも・・・私には大きな傷があるんです。それを見てから私を抱くか決めて欲しかったんです。」
ーーー別にこうなることを誘ったわけじゃない、
とそう伝えたかった。
半分起き上がり、
先輩に背中が見えるように見せた。
「ーーー大きな傷なんだな。」
その傷を先輩の冷たい手が触る、
その冷たさで体がビクッと震えた。
「・・・言えなくてごめんなさい。」
「ーーー前に話していた事故の時に出来たのか?」
「はいーー・・・」
良くんと勝くんと遭難した時に・・・
良くんを守った時に大きな木が倒れてきて出来た傷。
それでも守るのに必死だったからその時は気にもならなかったーーー・・・。
「ーーー人の命を守って出来た傷、小さい体ながらにがんばった証拠なんだな。」
先輩は優しい口調でそう言って、
何度も背中の大きな傷を手でなぞる。
私はその言葉に涙を堪えることが出来なかった。

「・・・なんで?なんでそんなに優しいの?」
「オレは優しくなんかないし思ったこと以外言わないの知ってんだろ。」
「・・・引かないんですか?こんな大きな傷見せられて。」
後ろを向き先輩に問いかけたけど、
先輩は少し考えるような素振りをしてた。
「別に傷があるから嫌いになるってのはないな。傷がないから柊を好きになったわけでもないし、傷があるからなにかあるってわけでもない。あってもなくても柊は柊だろ、それに変わりはないだろ。」
私はその言葉を聞いて先輩に抱きついた。
「・・・ありがとうございます。」
「その格好はやばいんだって、頼むから着替えて。」
半ば強引に自分と私の距離を作り、
焦るように先輩は私に言う。
ーーー私は布団の上にあったパジャマの上着を羽織った。

「・・・そろそろ帰るよ。」
それからすぐに先輩は私に言った。
「分かりました。」
「来週の泊まりの件、コーチにも確認しておいて。」
「ーーー分かりました。」
「正樹と環、双葉と須永も行くけど・・・オレと柊が同じ部屋になるようにしてもらってるから。意味分かるな?」
「ーーーはい。その覚悟を持って行きます。」
「じゃ、また・・・」

先輩が帰って、
剛くんが帰宅するまで私はとにかくずっとドキドキしてて、
興奮が止められなかった。
ーーー人と密着する、
それがこんなにも愛しいんだと実感出来た喜びで、
先輩へ対する愛しさが込み上げていた。

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