【 君がいる場所 】#44. 愛しい彼女*。 – Itsuki Side –

君がいる場所

#44. – Itsuki Side –

大型バスに乗って走ること1時間半、
もうすぐ柊に会えるーーー・・・。

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《 もうすぐ着くよ。》
《 スタンバイオッケーです!待ってます! 》
柊のその返事に、
俺はクスッと笑みが溢れた。
「おっ、彼女か?!」
隣に座る一つ上の先輩が俺に聞いていた。
「な、なんすか・・・」
グイグイ来る先輩に少し引き気味になる自分。
「樹が携帯いじるなんて珍しいなぁと思って?しかもお前今笑ってなかった?(笑)」
「笑ってないっすよ!」
からかわれてる・・・ーーー。
「照れちゃって、可愛いんだからぁ🎵でも樹の彼女、めちゃ可愛いんだろ?」
「えっ、そーなのか!?」
俺たちの会話を聞いてる周りの先輩たちも割り込む。
ーーー可愛いとも可愛くないとも俺は答えない。
俺にとって柊は誰よりも可愛いから。
「森田、見たんだよな?!」
「見た見た!いつだっけ?学校に何度か来ただろ?あの時、偶然見たんだよ。めちゃ可愛かった・・・。人形みたいな子だよな!」
「ーーー渡しませんよ?」
相手が先輩だろうと俺は少しイラっとした。
「なになに、モテモテ樹くんがヤキモチですか(笑)ファンの子達見たらびっくりするだろうな(笑)ってか樹の彼女、見てみたいわ!写真ねえの?」
写真・・・ーーー。
確かに2人で写真を撮るってあまりしないなぁ、と思った。
「ーーー撮らないっすね。」
「えっ、付き合ったばかり?」
「ーーー1年っすけど・・・」
「それで写真ねえの?!彼女、かわいそーじゃん!ぜってー我慢してるって!」
吉岡先輩、森田先輩、青木とガヤガヤ騒いでいるとうるさーい!静かに!と1番前に座るマネージャー3人に叫ばれた。

それからも小声で俺への冷やかしは続き、
楽しい時間は過ぎ去り、
そろそろ本当にバスが到着しそうになって来た。
バスはロータリーから少し外れた小道に止まり、
俺たちは監督やコーチの話を最後に聞いて解散となった。
《 ごめん、今から向かうーーー・・・》
《 気にしないでください、でも待っています。》
そうメールを送った矢先、
「飲みに行かねえ?」
と吉岡先輩からの声かけが始まった。
この先輩は飲むのが大好きで、コトあるごとに飲みに行ってる。
ーーーそんな人だけど意外と一途で、
高校から付き合ってる彼女と同棲してるから彼女からのコールでいつも逃げるように帰る面白い人だ。
「わたし、彼氏とデート!ごめん!」
2年のマネージャーに断られる。
「わたし、行きたい!」
3年のマネージャーと4年のマネージャーは行く。
「俺も行く!」
「おれも!」
青木と森田先輩はいつものように参加ーーー・・・。
オレは気が付かれないように荷物を取って、
柊の待つ方に歩き出す。
「・・・樹くん、何逃げようとしてるんだ?(笑)行くよな?」
「ーーー今日は疲れたんで・・・」
「彼女だろ?(笑)」
青木が突っ込んできた。
「はっ?」
「メール気にしてたし、彼女と待ち合わせしてんじゃねーの?」
「えっ!そーなのか?!俺も見たい!俺にも会わせろー!」
「・・・いや、本当に・・・」
その場で盛り上がってて人の話を全く聞いてない人たち。
ーーー逃げるにも掴まれてて逃げれる状態ではない、
これではアイツを待たせてばかりだと思った。

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とにかく先輩たちはオレの彼女に興味津々で、
全くの嘘を信じてもらえなかった。
「・・・見たら帰ってくださいよ・・・」
最後にオレは負けて、
今先輩たちとオレは柊と待ち合わせているバスロータリーに向かってる。
先に飲みに行くメンバーは行ってもらって、
後から合流すると言うなんと身勝手な幹事なんだと思う。

「えっ?あの子・・・?」
オレが少しずつ柊に近づくと、吉岡先輩が止まった。
「あっ、あの子だ!可愛い子は忘れない!」
森田先輩が柊を見て話す、
彼女はまだ俺たちの存在に気がついてない。
「やばい・・・めちゃ可愛い・・・」
「ーーー何度も言いますけど、オレのですから。」
仲良い先輩たちにまで嫉妬して、
気が気じゃない・・・ーーー。
「分かってるって、樹くん、こわいなぁ笑」
ーーーそうこうやりとりしてる時に、
柊もこっちに気がつきオレだけじゃないことに一瞬戸惑いの表情をしたが、
すぐに笑顔に変わった。

「ーーー悪い、先輩たちがどうしても見たいって言うから・・・すまん。」
彼女は微笑んでみんなに挨拶した。
「全然大丈夫です。部活お疲れ様でした。」
「樹の彼女だよね?名前は?何歳?えぇ、めちゃ可愛い!」
吉岡先輩が大興奮、
あんた彼女いんだろうがと突っ込んでやりたい。
「・・・年齢は17歳の高3!名前は知る必要ない!以上!」
彼女の代わりにオレが答える。
「こわぁぁい、樹くん。彼女のことになると樹も1人の男なんだな(笑)彼女さんも樹と付き合うと不安でしょ?」
「はい、とっても不安です(笑)やっぱりモテますか?」
「ーーーファンクラブまで出来ちゃってるからねぇ笑」
「・・・そっかぁ。」
おい、落ち込ませるな!と先輩を睨みつける。
「でも君も相当モテるよね?めちゃ可愛いよ?」
「ありがとうございます。・・・今日は樹先輩をお借りしても良いのでしょうか?」
柊はもう良いやって思ったのか、
吉岡先輩に突然話し出した。
「どうぞどうぞ、もういくらでも使ってください。俺たち、この近くで飲んでるんで暇だったらあとで合流してよ?」
「・・・ありがとうございます。」
「会えて良かったよ!いつでも練習見においでね、美人は大歓迎!」
柊は何も答えずに会釈して先輩たちを見送った。

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先輩方が見えなくなり、
オレは柊の手を繋いだ。
「・・・少し強引だったかな・・・」
「オレは嬉しかったぞ?」
「久しぶりだから、取られたくなくてごめんなさい。」
握りしめる手の力を強めた柊から、
どれだけ寂しかったのか伝わった。
オレも同じ気持ちだよ、
そう伝えるかのようにオレも手を握りしめる手に力を込めた。

今日の柊は大人っぽいーーー・・・。
髪型もだけど少しお化粧もして、
グロスもしているから普段の柊と印象が違う。
もちろん普段の彼女も可愛いけど、
今日のは普段と違うギャップがあって、
それはそれでそそられる。
「どうしたの?」
「ーーー今日の髪型とか色々、似合ってる。」
「本当ですか?!お姉ちゃんがやってくれたの!」
嬉しそうに話す柊を、
すごく愛しいと思った。
女性は・・・こう言う変化に気がついてもらった方が嬉しいんだなと初めて知った。
「すごく似合ってるよ。」
「・・・少しでも先輩に釣り合う女性になりたくて、お姉ちゃんに力を借りました(笑)」
照れくさそうに言う彼女ーーー・・・。
「柊はいつでも釣り合ってるよ、むしろオレの方が不安になる・・・」
「えっ?」
「ーーー何でもないわ。」

この日は本当にご飯を食べて終わりとなった。
明日は朝から学校だと言う彼女、
休む間もなく練習がある自分。
会える時間の短さに幻滅するけど、
それは仕方ないこと・・・ーーー。
「今日、少しでも一緒にいられて嬉しかったです。」
「ーーー来てくれてありがとうな。」
新宿から最寄りまで一緒に移動、
家が近いことだけ救われたと思った瞬間だった。
「ううん、会いたかったから・・・」
彼女のマンションの下のベンチでいつものように少しだけ話す。
「ーーーまた連絡する。」
「はい。明日も頑張りましょうね。」
柊は笑顔でオレに手を振った。
「あっ!先輩!」
だけど何かを忘れたかのようにこっちに戻って、
不意打ちに頬に唇を落とされた。
「おい!」
「へへ!おやすみなさい!」
恥ずかしそうに照れながらも、
嬉しそうに話す彼女ーーー・・・。
抱きしめたくて仕方ない、
もう一線を越えてしまおうか、
そんなオレの決心が鈍りそうなほど、
彼女を愛しく思った。

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