#39.
季節は4月、
私は3年になった。
先輩も大学2年生に進学した。
・
私と先輩の関係は良好に進んでる、
大きなケンカもなく、
週1会うのが安定になりつつある。
3月にあった私の誕生日には初めてディズニーランドに行った。
それはそれは足が疲れ果てて大変だったけど、
それ以上に好きな人と行く大切な場所の一つにもなった。
そして私は今、進路の佳境に立たされている。
ーーー大学という進路を選ぶことはせず、
専門学校にしようかなと考え始めた。
中学の頃から英語が得意で、
英語だけは全国で1位を取ったことがある。
高校でもやっぱり英語は好きで、
もう少しそれを学びたいと思ったから。
環は推薦で大学に行く、
双葉はやりたいことがあると高校でバスケを辞める。
須永くんは・・・今、バスケ部のキャプテンとして頑張っていて後輩の面倒をすごく見ている。
大学推薦を蹴り、保育大学を受ける予定なんだって教えてくれた。
子供が大好きなんだとも。
私たちは3年になって、
みんなそれぞれの道に少しずつ歩み出している。
そして在宅で頑張っていた私のバイトだけど、
駅前に出来たカフェにバイト先を変えた。
足に負担をかけないための在宅だったけど、
もう少し稼ぎが欲しいことや、
足のリハビリにもつながる気がしてカフェを選んだ。
もちろん店長には足の事情も話して、
そこを理解してくれての採用となった。
バイトは覚えることがたくさんで正直大変。
カフェのメニューもそうだし作り方、
レジの清算方法も今のご時世、
たくさんの種類があってついていかないのが実情。
少しずつ覚えていけば良いよ、と先輩たちが言ってくれて今はそれに甘えている。
・
そんな今日は・・・。
体育館で進学相談と職業相談が行われることになってる。
ーーー樹先輩や正樹先輩は練習で来ない、
ちょっと会えるかなと思ったから少し残念な気持ちになったのはここだけの秘密。
でも私は・・・今1番行きたい専門学校の卒業生がいると聞いてそれを聞きに行こうと思った。
流石の放課後の体育館は今日は賑わっている。
早く聞きたい須永くんや環とは違い、
わたしは・・・のんびりと向かう。
急いでも何も始まらないという元々ののんびりペースで。
剛くんも今日は駆り出されていて、
体育館で生徒たちに並べ!と喝を入れてる。
私は何も言わずに並び、
剛くんはそれを見て微笑んだ。
剛くんにはもう相談したけど、
私は自宅から30分圏内で行ける新宿の方の外語専門学校を狙っている。
そこなら最寄としては先輩と同じになるし、
今の私に距離を空けるのは考えられなかった。
「ーーーしっかり聞いてこいよ。」
「うん!」
体育館に入る私の耳元で剛くんは言った、
私が学びたいことを学べるならどこでも良いとも言ってくれた。
そして私は自分が狙っている専門学校の列に並んで自分の番を待った。
「ーーー柊さんね、よろしくね。」
そのブースに座ってる卒業生に自己紹介をして、
どんな勉強をするのか教えてもらった。
「この専門学校は帰国子女の子も結構いたりして、だから授業によっては英語だけの授業もあるのよ。最初はついていけない授業もきちんと受けていればついていけるようになる、そこは不安に感じることはないわよ。」
3つ上だというその先輩はとても丁寧に分かりやすく教えてくれた。
「ありがとうございました!」
「頑張ってね。」
なんだか心強く感じたーーー・・・。
そして少し、ううん、結構前向きに受験を考えられるようになった。
相談会が終わってから食堂で私は環たちと缶ジュースを手にして感想を言い合う。
環に関しては正樹先輩と同じ大学だから、心配要素も不安要素もないって言ってるから羨ましい。
双葉は東京を出て、沖縄の方に行くって言ってる。
海洋学を学ぶために、自分の夢に走るのはかっこいい。
「ーーーあれ?柊さんだっけ?」
「あっ・・・さっきはありがとうございました!」
友達と意見交換をしてると、
私に話しかけてくれた人がいた。
ーーーさっきの3つ上の先輩だった。
お友達と一緒に休憩しに来たと言ってる。
「ーーーあれ?あなた達、この間・・・初詣に樹や正樹と一緒にいた子たち・・・よね?」
その友達が私たちに問いかける、
一度聴いたら忘れない絶対に樹先輩の元カノ、麗華さん。
「あっ!あの時の先輩でしたか!すいません!」
「私のほうこそあの時はお邪魔してごめんね。」
優しそうな先輩、
あの時と同じで黒髪ロングがとても似合う背の高い女性だ。
「正樹先輩たちよりも1つ学年が上なんですね!」
「・・・そうなのよ。今日は樹に会えると思って来たのにいなくて残念だわ。」
「えっ・・・」
須永くんがつかさず反応した。
「久しぶりだからいろんな話をしたいのよ、私は、マネージャーだったの。」
こっちの女子3人は引き攣り笑いをしているーーー。
「本当にそれだけっすかー?」
須永くんは軽く受け流しながら、問いかけてる。
「ふふ、あなた感が強いのね。・・・そうね、樹とは付き合ってたの。いわゆる元カノ元カレってやつかな。私は今でも好きなんだけどね・・・笑」
胸がズキンと痛んだ。
こんな綺麗な人が今でも先輩を好きだという、
いつ先輩の心が動いてもおかしくないと思ってしまったから。
「でも先輩、彼女いますよ?」
「知ってるわよ、先週会った時、教えてくれたわよ。」
その言葉を疑ったーーー・・・。
先週会った・・・?
そんなの聞いてないーーー・・・。
こっち側はみんな黙った・・・ーーー。
「2人で会ったんですか?」
今度は環が口を開いたーーー・・・。
「そうよ?向こうから誘って来たの。あなた、環ちゃんでしょ?話は聞いたわよ。なかなか面白い性格だっていうじゃない。」
クスって笑ってこっちを見た。
「・・・柊さん、あなたが樹と付き合ってるのよね。写真まで見せてくれたからすぐに分かったわ。」
私は顔を上げた。
「・・・はい、私が付き合ってます。」
「意外よね、こんな大人しそうな子。樹はもっと・・・環ちゃんの方がタイプだと思うけどね。遊ばれてないと良いけど。」
麗華さんは私を見てクスッと笑った。
「ちょっとひどいんじゃないですか?!」
「・・・まぁ私がまだ樹を好きだということ忘れないで。また話しましょうね。」
とびきりの笑顔を向け、
体育館に戻る友達と一緒に食堂も去った。
・
どうやってバイバイして、
どうやって帰宅したのかも分からない。
ーーーただ麗華さんが突然現れた、
まるで先輩とわたしの仲を引き裂くために話しかけていた、
そういう風にしか私は思えなかった。
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