#37.
クリスマス当日、
私は終了式を迎えた。
午前授業だから急いで帰って支度をする。
先輩に見合うように髪型も二つから下ろして、
クリスマスらしく長袖のホワイトのニットワンピを着用してコートを羽織った。
・
今週に関しては先輩とたくさん会えるからクリスマスに感謝したいーーー。
先輩と合流して、私は事前にお願いしていたものを見に行く。
「ーーー指輪とか欲しいんじゃねーの?」
今年、私は先輩に何かお揃いのものが欲しいとお願いした。
去年のネックレスに続いて・・・
「ううん、指輪はちょっと気持ち的にも重くなってしまうと思うので却下で大丈夫です!」
そりゃ私だってペアリングというものに憧れを持ってる。
でもまだ・・・
それを持つのは今じゃない、そんな気がした。
「オレはなんでも良いけど(笑)」
「あった!ここのお店です!」
事前リサーチして今回狙っていたお店を見つけた。
「これ、これです!どうですか?ブラックとピンクの色違いのキーケース、お揃い!」
少しテンションの上がった私を見て先輩は微笑んでる、
そして私からそのキーケースを奪う。
「良いんじゃないか?これにするか!」
「待って!ブラックは私からのプレゼントにさせてください!先輩はピンクだけ買ってください!」
私は両方支払おうとする先輩からつかさず一つのブラックを奪う。
これは私は譲らないと珍しくすぐに観念、
お互いにそれぞれプレゼント出来るようにと購入した。
そして東京の街中をプラプラ歩き、
私たちはやっと夜ご飯に行き着いた。
学生同士の2人だからどこか高級なレストランに入るわけもなく、
ただ空いていたレストランに入った。
ーーー私はどんな高級なレストランより、
先輩と一緒に過ごせることの方がとても貴重で大切なんなんだなと今実感している。
「このピザ、美味しいですよ!食べますか?」
私が頼んだのはアメリカンピザというもので、
来てびっくりしたけどピザの上にドンッとポテトフライが乗っているものだった。
ソースはトマトソースとクリームソースが混ざり、
チーズ大量、ベーコンにバジルとサラミが他にトッピングされている何ともゴージャスなピザだった。
「・・・食えねーんだろ(笑)」
「そうとも言います(笑)」
一人前のピザだけど、
こんなこってりしたピザを私は1人で食べれる自信がなくて先輩を誘導したまで。
「食えるだけ食え、あとはオレが食べるから。無理すんなよ、吐かれても後が大変だから(笑)」
「ーーー優しいのか意地悪なのかわかりませんね!笑」
私たちは視線を絡めて、ワハハと笑い合って食事に集中した。
「ーーー2切れしか食ってねえけど足りんのか?」
「足りますよ!わたし少食なんですよ・・・」
「何か悩みがあんなら聞くぞ?(笑)」
「違くて!本当にもともとそんなに食べないです!」
だったら一人前頼むなってきっと思ったと思うけど、
食べてみたいという気持ちが強かったから頼んだ。
「ーーー食うぞ?良いんだな?」
「お願いします!」
ピザを食べた先輩はアメリカンな味だな!と分かってるのか分かっていないのか私には理解できない言葉を漏らしていた。
ほどなくして店員さんがデザート注文の提案に来た。
ーーー無理、もう無理ですと2人で断ってまた笑いあう。
「・・・今の柊、すごく好きだわ。」
ふと先輩が言った。
「な、なに急に・・・!?」
その言葉だけで自分の顔が赤くなるのが分かる。
「ここ最近の柊を見てるとよく笑って楽しそうに話してる。前のお前は・・・いつも苦しそうだったからオレも苦しかったわ。今の方が好きだわ。だから・・・笑ってろ、お前は笑顔が似合う。」
「ありがとうございます。」
嬉しさと恥ずかしさでもう先輩の顔が見れなくて俯いた。
そこにスーッと小さな箱が私の視界に入って顔を上げて先輩を見た。
「・・・一年過ぎだから。」
先輩はすごく恥ずかしそうに言いにくそうに言った。
「えっ・・・」
「10月で一年だっただろ?ーーー悪いな、ケンカばかりでいつから一年とか分かんなくてさ。だけど空白の時間も無かったことにはできねえなって思って、オレの中で10月15日、お前がお見合いしようとしていたあの日が柊と付き合った日だと思ってるんだ。」
私は驚きと嬉しさで今度は涙をこぼす。
それを見てギョッとする先輩ーーー。
「すいません・・・わたし、人と付き合ったことがなくて1年とかお祝いするのかも分からなくて。でもこうして先輩がその日を大切にしてくれているのが分かって、すごくすごく嬉しいです。ありがとう・・・」
そして、その箱をそっと開いた。
可愛い小さなダイアモンドみたいな光り輝くネックレスだった。
「本物じゃねえぞ(笑)」
「分かってます(笑)」
「去年クリスマスプレゼントを一緒に買ったの覚えてるか?」
「もちろん!」
「その店員がまだいて、去年のを邪魔しないネックレスをいくつか教えてくれたよ。そのうちの一つを柊が好きそうなシンプルなデザインで選んだ。」
「・・・サプライズすぎますって・・・」
私は涙が溢れるばかりで言葉が出ない。
「そんなに泣くことか?(笑)」
「泣きます・・・幸せで嬉しすぎて・・・ありがとうございます!大切にします!」
私はその場でそのネックレスを着用して、
去年買ったネックレスもつけていたから合うか先輩に確認して笑顔でお礼を伝えた。
レストランを出て私は先輩の手をがっしりと握った。
それにきちんと先輩も応えてくれた。
「コーチいないんだっけ?」
「ーーーはい。」
「ならもう少し一緒にいても良いか?」
「・・・私ももう少し一緒にいたいです。」
そしていつも行く公園のベンチに座った。
「今年もコーチは静岡に戻るのか?」
「・・・はい。また年明けに帰って来ます。」
「毎年?」
「そうですね、でも今年はお姉ちゃんがこっちにいるからまだ寂しくはないかな。」
「あー、一緒に暮らしてるんだったな!プロポーズどうなったんだろうな笑」
「・・・気になりますよね、剛くんが帰宅したら連絡入れます!」
人の話題で盛り上がる私たち、
フッとお互いに笑い合った。
先輩は私の手を取り、ずっと人の手を自分の手でなぞってた。
ーーーなにがしたかったんだろう。
「次に会えるのは多分初詣の日になるな・・・」
「分かりました!今年も正樹先輩の家族と旅行に行くのですか?」
「ーーーその予定。そしてうちの親は、ちょっとうるさくて年末は家族で過ごすもんだって家から出るのをすごい毛嫌いするんだ、会えなくてごめんな。」
「いえいえ、楽しんでください!電話はしても良いですか?」
「ーーー当たり前だろ笑」
「初詣に会えるの楽しみにしてますね!」
「ーーーオレも楽しみにしてるよ。」
そして先輩は不意打ちで私にキスを落とした。
恥ずかしかったけど、
今度は私からキスを先輩に仕掛けたーーー・・・。
そして3度目はお互いに暗黙の了解で、
唇を重ね合わせた。
ああーーー・・・。
離れたくないなって思う。
特に最近、その気持ちがすごくすごく強い。
だから今日も名残惜しく、
すごく寂しい気持ちを残して先輩と解散した。
・・・でも不安はない。
先輩からもらったネックレスとキーケースを胸に、
私はそのまま眠りについていた。
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