【 君がいる場所 】#36. 都内デート*。

君がいる場所

#36.

次の日の学校ーーー、
それはそれは後輩たちからの質問攻めで大変な1日を過ごした。
だけど救われたことに・・・
「あの告白は感動的だったよねー!」
と3年の先輩たちからの声もあって、
今までみたいに責め立てられるような言い方はひとつもなくて安心した。

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「えっ、そろそろゴールも近いんじゃない?!あの先輩のことだからすぐ手を出すと思ってた!」
環と双葉に私は先輩との出来事を話した。
緊張して大変だったけど、
自分の気持ち的に欲が出てしまった。
キスだけでは足らない、そんな気持ちになってしまったことを話した。
「ーーー意外だよな。先輩なら慣れてるだろうし柊を導いてくれるもんだと思ってたからオレも意外!どんぐらいの人と経験あんだろうな(笑)あっ・・・悪い。」
「ううん。先輩が経験豊富なのは見た目から分かるし、それは理解してるから大丈夫だよ。」
そんなの同じ土俵を見てはダメだって私だって分かってるよ、
だからそこは比べないと自分の中で付き合う時に決めたルールでもあった。
だから大丈夫だよ、ってみんなに伝えた。

私が次に先輩に会えたのは本当に次の週、
クリスマスを2日後に控えた23日の祝日だった。
午前練習だからと午後から待ち合わせをした私たち、
先輩は一度自宅に戻りシャワーを浴びて着替えをしてから来てくれた。
最寄りではつまらないからと少し遠くお台場の方に足を運ぶ。
当たり前のように今日は手を繋ぎ、
後輩たちに先輩のことを散々聞かれた話や、
環たちの部活で私が知る限りのことを話した。
「ーーーそういや、今年も初詣行く約束してるぞ。来るか?」
その問いかけで去年を思い出す。
体調があまりよくなく参加したことに多分先輩は気が付いてて私に帰れって言ったんだよな。
今年は体調万全でリベンジしたいと思った。
「ーーー行こうかな。先輩に会いたいし・・・」
「なら正樹に伝えておくわ。」
「正樹先輩?」
「言わなかったか?いつも正樹と環で日程とか決めるんだよ。オレは全部正樹を通して聞いてるんだ。」
「そーなんですか!?環本人だと思ってた・・・」
「ーーーあいつとは会えば話すけど連絡先は知らねー(笑)興味もねえわ。」
「ーーーちょっと嬉しいかもです。」
そう言って私は先輩にくっついたけど、
同時にマネージャーさんは特別なんだなという黒い感情も生まれそうになったから必死で頭から消した。
「大学はそうはいかなくてな、マネージャー全員の連絡先が携帯に入ってるわ。用がなきゃ連絡来ないしこっちからすることは一度もないわ。」
全てお見通しで私の黒い感情を先輩は消した。
「そうなんですね、私の携帯なんて剛くんと須永くんだけですよ(笑)」
「須永の知ってんのか?(笑)それはそれで・・・」
「なんですか?」
「何でもねえわ。」
ちっ、妬いてくれると思ったのにと小声で伝えたけど先輩は聞こえないフリをして先に歩いた。

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そして今ーーー・・・
お台場から浅草に向かって船に乗ってる私たち。
船の展望から見える都内の景色が最高すぎて言葉を失う。
「すごい!波に引き込まれそうです!」
「ーーー落ちんなよ(笑)」
「そこまでドジでは・・・キャッ!」
言った矢先に私は船の振動でふらついた。
「あっぶねーな。言った側から落ちんなよ・・・笑」
私の言葉なんて信用ならん、とでもいうように支えてくれた先輩にずーと支えられていた。
「なんか・・・幸せですね。」
「あ?」
「先輩にこうして抱えてもらえて私は幸せだなって。」
「ーーーそりゃどうも。」
照れ隠しをする先輩、
私から視線を逸らしたけど耳まで真っ赤になってるのを見逃さなかったよ。
私はそんな先輩が愛しくてたまらなくて、
ギュッと抱きついた。
絶対に嫌がられるの分かってたけど、
知ってる人はいないし、
誰に見られても良いやって思って抱きついた。
「おい・・・場をわきまえろ笑笑」
案の定、怒ってはいるけど本気じゃない。
「・・・ごめーんです。最近、我慢できない・・・。先輩のこと、好きで溢れてしまってる・・・。どうしよう・・・」
独り言だけど先輩に聞こえる独り言を呟いた。
返事の代わりに先輩は私を抱きしめた、
力一杯抱きしめてくれたーーー・・・。
それだけで十分、
もう大満足だと思った。

「ーーーそういや、クリスマス会うか?」
今、浅草の一つ前の停留所・・・。
人が降りて行くのを見守りながら先輩が問いかけて来た。
「えっ!今日会えたからもうクリスマス無理なんじゃないんですか?」
「誰がそんなこと言ったよ・・・」
「ーーーわたし?(笑)」
フッと笑った先輩は、意味不明と呟いた。
「さすがに明日明後日は午前練だけだよ。予定入ってるか?」
「ーーー明日の夕方から剛くんがいなくて、明後日に帰ってくるんですよね!だから私は暇です!」
遠回しに泊まりに来ないかなぁと誘ったつもりだけど、
そこは伝わらなかったみたい。
「ーーーえっ、コーチ学校は?!」
「休むって。一大事ですから・・・」
「ーーープロポーズか!?」
「はいっ!!それにすぐ冬休みですからね!」
へぇぇ、あのコーチが!と先輩はその後の私の話は聞いてない様子だった。
「・・・25日に会おうか。コーチが不在ならいつもより遅くなっても大丈夫か?」
「もちろん大丈夫です!わたし、イルミネーションが見たいです!」
「ーーー了解。」
そして船が浅草へと出発する、
私こんな幸せで良いの?
そう思ってしまうほどに胸がいっぱいで、
充実していて、
逆にその幸せ感が怖くも感じた。

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浅草に到着して私たちはとにかく食べ歩いた。
ーーー初めての浅草、
下町だけどなんと楽しい街なんだろう!
何で人が優しいのだろう!
そんな印象を受けた。
「もんじゃ焼き食って帰るか?」
「ーーー是非!」
剛くんに電話して、
夕飯を食べて帰ると伝えーーー、
ズルイと意味不明なことを言ってたけど、
私は無視して美味しいもんじゃ焼きを堪能した。
それは本当に本当に美味しいもんじゃだった。

だからやっぱり先輩と分かれるのはとても寂しく感じた。
最寄りが同じだから同じ道を帰る、
だけど家は違う・・・。
たったそれだけのことだけど、
好きな人と違う家に帰ることがこんなにも寂しいのだと痛感した。
それと同時に私はずっと剛くんにこんな想いをさせていたのだと思うと心がすごく痛んだ。
だから決めたんだ・・・
後一年はあるけど、
高校を卒業したら一人暮らしをしよう、
そう決めた。
散々言い続けては反対されて来たことだけど、
大学に入るとなったらきっと変わる、
そう信じて剛くんとお姉ちゃんに伝えてみようと思った。

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