#34.
いつも1人寂しく歩くこの道・・・
同じ道なのに2人だとこんなにも気持ちが温かい。
人を恋する気持ちって、
幸せっていう感情って凄いなぁって思った。
・
「ーーー先輩」
「ん?」
「・・・好き。」
なんだ急に、と先輩は私を見た。
「はは、なんか言いたくなっちゃった。」
「ーーーありがとう。」
私の手を握る力に少しの圧を込めて、
先輩はまた歩き出した。
帰宅までの1時間半、
散歩をしたり公園のベンチで空白期間のことを話したり・・・
知らない先輩の時間を先輩からの話で埋められた。
・
次の日、剛くんと共に朝食の時に先輩と仲直りしたことを伝えた。
剛くんはすごくすごく喜んでくれた。
本当に自分のことのように・・・
「剛くん」
「ん?」
「ーーープロポーズしないの、お姉ちゃんに。」
剛くんは飲んでいた味噌汁を吹き出しそうにゴホゴホと咳き込んだ。
「なんだ、突然・・・!」
「だって付き合って長いでしょ?!剛くんも若くないし、考えないのかなって・・・」
「オレはまだ26歳だ!笑」
「でも結婚適齢期だよね、私のせい?」
「どういうことだ?」
「私が未成年だからお姉ちゃんが嫌がってるとか、かなって・・・笑」
剛くんは笑って手に持ってたお箸を置いた。
「変なことばかり考えるなぁ、本当に!愛梨には絶対言うなよ?!」
「な、なに・・・」
「クリスマスにプロポーズするつもりで進めてんだよ、絶対言うなよ・・・」
「ほんと!?本当にほんと!?」
「ーーーああ。」
「その前に私にプロポーズしちゃったんだぁ、最低ーーー(笑)」
「あの時は手段がなかった!絶対にないって分かってたし笑!俺たちは相手が樹だと心強いけど、それよりも花が幸せになるのを1番に望んでるんだよ。こっちのことは気にしないで、お前は樹だけ見てろ!(笑)」
剛くんはそれだけ伝えて、ご馳走様をした。
剛くんが出勤するのを見送り、
私は先輩におはようのメールを送った。
《 おはようございます。今日も頑張りましょうね!》
《 おはよー。眠いわ・・・。頑張ろう。》
会話が続かないメールだけど、
1通だけでもやり取りできる、
それは私たちにとっては大きな進歩だと思う。
・
「た、環!」
学校に向かう途中、須永くんと歩く環を見つけた。
「ーーーおはよ。」
無視はしないでくれた、それだけで嬉しかった。
「一緒に行っても良いかな?」
「ーーー断っても須永がピョンピョン跳ねてるよ。」
つまり良いよって言ってくれてるってことだ。
でも横に並んで歩くだけで会話が出てこない。
きっとさっきまで須永くんと沢山話したんだと思うと少し割り込んだことを申し訳なく思った。
「あのね・・・先輩と仲直りしたよ。」
「ーーーそう。」
「昨日、環が時間を譲ってくれたから。ありがとう。」
「今回は長かったな!本気でオレは奪おうと思ったくらいだからな(笑)」
「須永!」
環は須永くんの冗談めいた言葉に反応した。
「ーーー須永くんの気持ち、すごく嬉しいけど。私は気まずくなるのも嫌だし、身勝手でワガママだと思うけど良い友達でいたいって思ってる。」
「当たり前だよ!おれ、樹さんと一緒にいる柊を好きになったから別れられたら困るんだよね!笑」
笑顔で答えてくれたけど、
私は心の中で何度も彼に謝罪した。
「ーーー環も私の身勝手でゴメン。」
「2度と避けたりしないって約束してくれる?何かあったら相談に乗れるし、ちゃんと話してよ・・・友達でしょ?」
「ありがとう!」
「よし!なら今日はみんなで屋上で食べよう!」
屋上でお昼を食べてる時、
私は双葉にもきちんと直接謝罪した。
「今回は本当にダメかもって思って・・・色々辛かった。」
過去のこととか話したりはしなかったけど、
先輩ときちんと話し合えたこと、
私の何が嫌だと言われたかなど皆んなには話した。
「私も花の暴走するところ苦手、でもそんな花を全てひっくるめて好きだし。だからもう隠さないでよ。」
私はみんなの前で頷きながら号泣した。
「ーーー抱きしめてえ・・・」
その須永くんの声は私の耳には届いてない、
聞こえないフリをした。
・
季節は変わりもう直ぐクリスマスがやってくる。
去年のクリスマスお揃いで買ったネックレスを着用して今年は何が良いかなと考え始める私。
どんなに喧嘩しても逢えない時間があっても、
このネックレスだけは着用していた。
きっとそれは先輩も同じだと思うーーー。
ネックレスは分からないけど、
環が仲直りするきっかけを作ってくれたご飯に突然お邪魔した時も私がくるのを知らないはずなのにリストバンドを付けてくれていた。
それがどんなに嬉しかったか・・・。
まだ気持ちは離れていない、そう思ったらそれだけでもう幸せすら感じた。
《 環たちと仲直りしました。》
《 うん、良かった。》
淡白だけど返事をくれる、
それだけで幸せを噛み締めるのは単純なのかな?
でも自分も変わりたい、
そう思うのは間違ってないと思うから、
先輩とのこの時間をも大切にしようと決めた。
ーーーそれは先輩も同じ気持ちだったようで・・・
「ねぇ、校門に立ってるの樹先輩に似てない?!」
12月に入って学期末テストが終わった最終日、
学校中の女子たちが騒いでいたーーー。
お初にかかる1年生の女子たちもあの人かっこいい!話に行こう!と黄色い悲鳴をあげながら走って校門に行く姿、
2年3年は教室の窓から見える先輩を眺めながらも先輩の名前を呼んで叫んでいる。
誰を待ってるのかな・・・ーーー。
わたし、約束してないよね・・・?
それでも少しの期待をしてしまい、急いで帰り支度をする。
少しずつ校門に近づくけど、
女性に囲まれてそこに入っていく勇気がない。
「・・・おせーよ・・・」
「ーーーゴメン。」
だけどそれは先輩が殻を破って出て来てくれ、
私の手を掴んだ。
戸惑う私に先輩は微笑んで、
私の頭を撫でた。
それを見た女子たちは、「えっ!何?!柊先輩の彼氏なの?!えー、かっこいいー!」、「まだ付き合ってたんだ!」とかいろんな声が聞こえてくる。
「ほら、行くぞ・・・」
「えっ、うん・・・」
私は先輩に言われるがまま付いて行ったけど、まだ頭がついて行かないでいる。
「今日、会う約束してましたっけ?」
「・・・してねえけど。ダメなのか?」
「いや、ダメじゃないです!ただ驚いて・・・」
「試験お疲れってことで。それと男子に対しての威嚇だな・・・」
「えっ?」
「・・・柊、こう言うロマンティックなの好きそうだし(笑)」
「好きですけど・・・笑」
予想外に会えて嬉しくて、
私は先輩にくっついた。
「今日練習あるんですか?」
「ーーー4時からあるから、それまでになるけど良いか?って今更だけど(笑)」
「もちろん!来てくれたことがすごく嬉しいです!」
私たちはお昼を食べて、
そのまま時間まで外にいても寒いからと言うことでカラオケに行った。
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