【 君がいる場所 】#33. 本気でぶつかる*。

君がいる場所

#33.

ここ最近いろんなことがあったーーー。
おじいちゃんが亡くなってからいろんな悪いことが起きてばかり。
先輩ともうまくいかなくなって、
入院もして・・・
往生際の悪い私はおばさんに謝罪に行って海に投げ飛ばされた。
ーーーそれでもやっぱり私は前を向いていくしかないんだと思う。

スポンサーリンク

そんな矢先、私は環と双葉に屋上に呼ばれた。
避ける理由を教えてほしい、と。
「避けてなんか・・・」
「明らかに避けてるよ!」
環はもともときついからもう慣れた。
「ーーー樹先輩と関係ある?」
控えめな双葉が私に言った。
「えっ、どうして?」
「2年に上がってから花から先輩の話がほとんど出てこなくなったから上手く行ってないのかなってずっと気になってたんだ。」
「ーーーごめん、気を使わせていたね。もうずっと上手く行ってなくて・・・環や双葉たちといると樹先輩を思い出してしまう。バスケ部という繋がりだけで先輩が背景にいるから苦しい・・・つらい。先輩を嫌いになりたい、忘れたい・・・ただそれだけ・・・」
「それだけのために私たちが避けられるの?そんなちっぽけな友情だったの?」
「環、ちょっと冷静になってよ。花も辛い状況なんだから・・・」
中間に立つ双葉に申し訳なく思った。
「この前ね、偶然樹先輩に駅であって花は元気にしてるかって聞かれたの。少しお茶をして、花と距離を置いてること聞かされてたんだ。試す事してごめんね。」
「ーーーそっか。」
「先輩、花がきちんと自分で考えて向き合える力をつけれるまで待ってるって言ってたよ。逃げる道を選ぶのは簡単だからあえて険しい向き合う力をつけて欲しい、それまでは自分から連絡するのは間違えてると思うって言ってた。花は先輩が花を好きじゃないと思う?」
「ーーーそんなことは思わない。ただ不安なの・・・いつか嫌われるかもしれないって。」
「それってみんな抱えてることじゃない?花だけじゃないよ、恋をしたらみんな不安になるよ。それを相手に伝えるか伝えないかじゃない?逃げないで、きちんと先輩と向き合ってみたら?」
双葉の言葉に納得できるのに、
私は自分の過去が邪魔して素直に受け止めることができない。
でもその過去の気持ちも一度先輩と話すべきなのかもしれないとも思った。
「・・・今日、6時に先輩たちとご飯食べる約束してる。私たち行くのやめるから、花行っておいでよ。」
「えっ・・・それは無理だよ。」
「今話さないと絶対に後悔するよ!去年、先輩のためにバスケをした花はカッコよかった!その気持ちを思い出してよ・・・」
あの時と状況が変わった、とは言えずに私は環の言葉を素直に受け入れた。

スポンサーリンク

先輩は私が6時に行くことを知らない。
きっと須永くんや正樹先輩たちみんなが来ると思ってる。
私は一度家に帰り着替えて、
剛くんにも樹先輩に会うこと、
ご飯も食べてくること、
帰宅予定時間をメールしておいた。
あの日から少し監視が厳しくなってるから、
信用を取り戻すまでは約束は守らないといけないから。

環に聞いたレストランに行くと、
先に来ていた先輩が案の定驚いた顔をした。
「なんで柊がここに来てんの?あいつらも後から来んのか?」
動揺を隠せない先輩が私に聞いた。
私は先輩の前に座り、首を横に振った。
「・・・来ないと思います。環が先輩に会ってこいって背中を押してくれました。」
先輩はなにも言わなかった。
「ーーー体調は?大丈夫か?」
私は返事の代わりに頷き、沈黙が続きた。
「この前は・・・お騒がせしてすいませんでした。色々ありすぎてなにから謝罪したら良いのかもう分からないくらいです。わたし・・・ずっと不安でした。」
「不安?」
遠くを見てた先輩がやっとこっちを向いた。
「大学に入って会えなくなってしまったり、連絡も取りづらくなってしまったり先輩が遠い人に思えました。それにマネージャーさんのことがあったり、私の事故やもういろんなことがありすぎて先輩といることに不安を覚えました。好きでいることが辛くて、でもこの会わない期間必死に諦めようと環たちとも距離おいてケンカしちゃうし・・・なにも上手くいかない。」
「ーーーオレが待つと言ったの忘れた?」
「覚えてます・・・」
「だったら簡単に諦めるとか言うなよ。」
「ーーー先輩は私が苦境に立ってる時いつも助けてくれてる・・・そればかりに甘えてちゃダメだと思って・・・お礼もきちんと伝えてない、だから環が今日の席を譲ってくれました。でも正直、ここにくるの怖かったです・・・」
先輩はなにも言わずに聞いてるだけーーー・・・。
「先輩とのことだけじゃありません。自分の過去を全部思い出して、当時の記憶を鮮明に思い出して・・・。今、いろんな偶然が重なって・・・先輩とのことだけを考えればもしかしたら前を向けたのかもしれません、でも今は・・・いろんな意味で前を向けません。」
うーん、と納得できてない表情を浮かべながらも先輩はただ黙っていた。
「・・・とにかくこの前のお礼は直接言っておきたかったので・・・お時間とらせてすいませんでした。」
私は言うべきことは伝えたと思うから、
その場を立ち上がった。
そしてコートを手にした時に先輩が話し出した。

スポンサーリンク

「ここずっと考えてた、柊にとってどうするのが1番なのか。事故にあったことや退院したことも全部事後報告なんてもうゴメンだ・・・。物理的に学校が離れてる今、全てを把握するなんて無理な話だ。学年が違うのだから離れるのは覚悟して付き合ってる、柊もそうだとオレは思ってた。そして柊はいつも寂しさから逃げようとする、そんなお前をオレは好きになれない。」
「ーーーそうですね。」
嫌いってハッキリ言われると胸にズキンと痛みを感じる。
「この離れてる間、柊に強くなって欲しいと願ってた。お互いを知らない時間も大事だと思う。次に会う活力になると思う。それにオレの場合、元々連絡取らなくても会わなくても寂しさを感じない人間だし、それはバスケがあるからだと思う。それで寂しい思いをさせているんだと分かってる。だから離れたいと言われても仕方ないとは思うけど、認めたら絶対後悔するのも分かってるから認めることも出来ない。お前の寂しさを補える何か対策がないかずっと考えていた。」
ハッキリ振られるのだと思ったから続きがあることに少し驚いた。
「ーーー寂しく感じないのに付き合ってる意味はあるのですか?」
先輩は一瞬私を見たけど、すぐに視線を逸らした。
「・・・確かに会えなくても連絡取らなくても寂しさは感じない。それはなんでか分かるか?」
「・・・いえ。」
「自分が・・・オレ自身が柊を好きでいる自信があるからだ。」
「そんな自信、私には・・・」
「自分の想いが強いと案外できるもんなんだぞ。」
樹先輩は久しぶりにフッと笑ってくれた。
「とは言っても柊には無理だと思うし、そこは不安にさせても寄り添わなかったオレにも責任があると思う。100%思い通りにはできないと思う、だけど柊の気持ちにも寄り添えるようにオレも努力するよ。」
「その言葉だけで十分です・・」
先輩の力説がとても説得力があり、
私が感じていた不安が一気に消えていたーーー。
向き合って話す、
勇気がいるけどとても大事なことなんだと痛感した。
「あと・・・ーーオレは柊とはどんなに衝突してでも付き合いたい、そう思ってる。だから本気でぶつかってこい、なんでも聞いてやるよ。だから勝手に想像して変な方向に走るな、それは約束してほしい。」
「ーーーはい。」
私は微笑んで答えた。
「腹減ったな、奢ってやるよ、好きなもの頼め。」
「頼もしいですね。」
そう伝えてカルボナーラを注文した。
・・・これで仲直り、
そう思って良いのかな?
ここ最近暗闇にいた心が、
少しだけ灯された、そんな気がした。

ご飯を終えて、
私は元々約束していたのだからと環たちに会うことを提案した。
ーーー彼女たちのことだから絶対に出かけているはずだから、と。
「ーーーまだ時間大丈夫なんだろ?」
「9時に帰ると伝えたので、後1時間半くらいは平気です。」
「じゃ、少し歩くかーーー・・・」
えっ、環たちは?と言う私の疑問は先輩の中できっと遮断されていたんだと思う。

「・・・なんだか少し恥ずかしいですね。」
先輩が横にいる感覚、
当たり前の光景のようで当たり前じゃない。
「手に触れても良いか?」
「ーーーはい。」
繋がれた手、
久しぶりの恋人繋ぎは、
それが繋がれた瞬間に私に幸せという感情をもたらした。

 

長い長い苦難の道がやっと終わりました。
もう終わらせてしまおうかと思ったけど、
不幸が好きで(笑)
2人が末長く仲良く出来ると良いなぁと願う人です❤️

コメント

タイトルとURLをコピーしました