#01.
10年前、
とある場所で大きな事件が起きた。
私の両親はその事件に巻き込まれてこの世を去り、
私は背中に大きな傷、
足には大きなダメージを負って生き残った。
・
「花!明日の試合来るのか?」
「もちろん行くよ!樹先輩、出るんでしょ?」
私はこの春から幼馴染の剛くんがコーチをする高校に通いだし、今は一緒に暮らしている。
血のつながらない私たちがと思うけど、
身寄りのない私にはこれしか手段がなかった。
祖父母も遠方で助けてもらえない、
それならばと小さい頃から親しくしている剛くんが快く引き受けてくれた。
ーーーそれに剛くんにはきちんと大切に想ってる私の姉がいる、
だから私と剛くんが変な関係になることは絶対にないと言い切れる。
「ーーー出すかどうかは監督次第だな(笑)」
「剛くん!」
「嘘だよ、スタメンに選ばれてるよ(笑)」
そして私はこの高校に入って初恋を知った。
・
まだ高校入学する直前のこと、
剛くんに連れてこられてやってきたバスケの試合。
大きな体育館で繰り広げられたそのバスケの試合は、
いろんな歓声で盛り上がりを見せ、
ルールが全くわからない孤独に観戦する私は、
身を乗り出して指示を出す剛くんの姿も、
名前も何も知らない試合をしているその人たちの姿に釘付けとなった。
特に背がすごく高くて脚がすごく速い、
そして何点も得点を入れていた4番の彼に私は夢中になった。
「ーーー樹は2年の中でも優秀なんだ。」
そう剛くんが自慢げに教えてくれた彼の情報、
今3年生の彼はキャプテンになった。
そして偶然にも私がクラスで仲良くなったのは女子バスケ部の環と双葉、
そして男子バスケ部の須永くん。
同じ体育館で半分に分かれて練習していることもあって男子と女子はすごく仲が良い。
ーーー彼女たちの中に入れてもらうことに最初は抵抗があったけど、
今は逆にそれが当たり前のようになった。
ただまだ樹先輩への憧れは剛くん以外の誰にも話してはいない。
ーーーいつかこれが恋に変わった時、
そんな時が来たら話そうかなと思う。
・
「クラスの子も応援に行くって言ってた!」
「自由席だろ?早く行ったほうが良いぞ、かなり埋まると思うから取れなかったら連絡しろよ。」
そう、うちのバスケ部は男子も女子も強い。
特に今年の男子は樹先輩や正樹先輩を筆頭になぜかイケメンが多いから女子たちが放っておかない。
ーーーもちろん須永くんもそのメンバーに入ってる。
「いぇーい、その時はよろしく!」
剛くんが向かう前に私は1人バスに乗り会場に行く。
開始時間よりかなり早く出たし、
余裕だと思ったけどすでに入場待ちしている人がたくさんいた。
「はな!こっちこっち!」
今日は男バスの試合で女子も応援、
環と双葉と合流して会場までの数時間ひたすら喋って時間を潰した。
不思議ーーー。
1人で過ごす時間はすごく長く感じるのに、
友達と過ごす時間は本当にあっという間に過ぎ去る。
あっという間に開場時間になり、
私たちは2階席のちょうど真ん中の席を確保できた。
ここならよく見える、
よしっ、と心の中でガッツポーズをした。
「いけー!正樹先輩ーー!樹先輩にパス!」
環と双葉は盛り上がってるけど、
ルールのわからない私にはやっぱり無理だ。
でもどっちにゴールを入れたほうが良いのか、
今リードはどっちなのかは見ていて分かる。
ただドリブルだったりファールだったり、
細かいことは本で学んでもやっぱりわからないことが多かった。
ーーーそして何度も思う。
樹先輩の繊細なボールさばきがやっぱり美しくて、
何度でも見ていられると。
それは私が初めて先輩を目にした半年前から変わっていないなと。
そしてその繊細から出る豪快なゴールに私は何度も心を持っていかれる。
「やっぱりカッコいいなぁ・・・」
「えっ、花って樹先輩推し?(笑)」
心の声が出ていて見惚れてしまっていた。
「あっ・・・隠れファンで・・・」
「マジで?!私は正樹先輩派だなぁ(笑)樹先輩、無口だし何考えてるか分かんないよ?(笑)」
「ーーー話すことはほとんどないし、見てるだけだから(笑)」
環はブツブツ何か言っていたけど、
私は気にせず先輩たちの試合に夢中になった。
試合は無事に勝利した。
夏季大会の次のトーナメントに先輩達は進むことができる。
3年生にとっては特に引退試合まで残り少ない、
だからこそ少しでも多くの試合を勝ち進んでもらいたい。
「須永ー!カッコよかったよー!」
試合が終了して、環と双葉を含めた須永くんの友達のほとんどら2階ベンチから叫んだ。
ウチらだけじゃない、
コートに立つ選手達の友達や家族が来ていたり多くのお客さんですごく賑わっていた。
「あったりまえよ!(笑)俺を誰だと思ってんの?(笑)」
自意識過剰を装う須永くんはクラスの中でもなかなか面白い人でいつも友達に囲まれている。
それにスポーツ万能だから女子からの人気も高い。
なんだか私からしたら今この場所にいる人たちみんなが空の上の人のような人に思えた。
・
環たちが須永くんに会いに控室に行ってる間、
私は体育館裏にあるベンチで日光浴をしていた。
空を見るといつも思い出す、
天国にいるお父さんとお母さんのことを。
空から笑って手を振ってくれてるみたいで、
私もいつも振り返してしまう癖がある。
「・・・そこ立ち入り禁止だけど。」
そっと目をつぶってるとふと低い声が耳に入りハッとした。
「えっ、ウソ!すいません!気がつかなくて・・・わたし不審者じゃなくて・・・」
荷物を片付け必死の弁解をする私ーーー。
ん?待てよ?この声どこかで・・・
「ふっ、知ってるよ(笑)環たちとよく一緒にいる子だろ(笑)」
ーーーあっ、樹先輩だった。
「1年の柊 花と言います。」
「ーーーそう。ここで何してんの?」
「須永くんと環たちが話してて、待ってます。私は部員じゃないので・・・」
「ーーー律儀だねぇ。ここにいるのスタッフの人に見つかったら怒られるよ、一緒に来るか?」
「えっ!」
「須永と環たちは控室にいんだろ?俺と一緒に行けば部外者じゃないんじゃねえの?連れてってやるよ。」
先輩がなぜ私がいるここに来たのかは分からないけど、
なんだか心強い先輩のその言葉に甘えることにした。
ーーー横に並ぶだけで緊張する。
見てるだけの人から少し話せた嬉しさと何を話したら良いのかわからない変なドキドキが入り混じっててこの感情を表現すること自体が難しい。
「あの・・・」
「なんだ?」
「ご迷惑じゃないですか?先輩と一緒に行って・・・」
「いまさら?(笑)」
環は先輩を無口で分からない人だと言う、
でもこの数分だけだけど私はそうは思わない。
確かに言葉数は少ない人だけど、
その中に挟まれる優しさが私には見えた気がした。
「ありがとうございました!」
何度もお礼を伝えて、
先輩と一緒に控室に入った。
私と先輩が一緒に来たことで誰もが驚いていたけど、
それを説明してくれていたのも先輩だった。
「言ってくれたら俺が行ったのに・・・笑」
須永くんは冗談まじりにそう言ってた。
私は環の横に移動して、「先輩と話せた?」と小声で言われたことに頷いた。
遠い人が少し近くに感じて、
まさか話せることが出来るだなんて夢にも思ってなかったこと。
今日のことは奇跡に近い、
そう思いながら私は眠りに落ちた。
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何度も消しては投稿を繰り返し申し訳ございません!
今度こそ思うような作品を作り上げたいと思います❤️
今後ともよろしくお願いします!
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