【 君がいる場所 】#09. お見合いへの覚悟*。

君がいる場所

#09.

次の日、
雨の中起こったことを私は環と双葉に報告した。

「なんで?なんで突き放したの?両思いだったんだよ?」
「ーーー本心か分かんなかった。私の好意に少しでも気がついていたから合わせてくれていたんじゃないかなって・・・」
「バカなの?!今すぐにでも先輩に気持ち伝えてきてよ!」
初めて環は私に怒った。
ーーー両者の気持ちを知っていた環からしたら私の答えは納得いかないんだろうね。
もし逆の立場だったら、
私も怒るかもしれない。
だから私は環に対して何も言えなかった。
大切な友達を・・・
なくしてしまう、不安を抱えながらも・・・
環はその日、私と口を聞いてくれなかった。

迎えた日曜日、
今日は先方の人と帝国ホテルで会う。
どんな人かもなんの情報を与えられてるわけでもないから分からない、
ただお見合いをしなさいと言われただけ。

「今日何時ごろ帰ってくる?」
「どした?練習終わるのが16時頃だから18時には帰れると思うぞ。寂しいのか?(笑)」
何も知らない剛くんに今は救われる。
私は剛くんに抱きついて、ありがとう、と伝えた。
「おい、本当に何かあったか?」
「何もないよ、頑張ってね。」
笑顔で見送ったーーー。

そして事前に送られてきた着物を確認して、
予約しておいた美容院に足を運ぶ。
ーーーお見合いって本当に着物を着るんだなって思った。
ドラマや漫画でしか見たことない・・・。
まだわたし、16歳なのに・・・。
いろんな思いを抱えたまま、
スタッフの言う通りに着付けをしてもらう。

着物に罪はない、
ピンクの振袖はとてもとても可愛いものだった。
多分お母さんが20歳の成人式で着たものじゃないかな。
なんとなく見覚えがある・・・。
でもお母さんを嫌いだった叔母さんがお母さんの着物を送ってくるとは思えなくてあまり自信がない。

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お姉ちゃんの話では、
おばさんとお父さんは同級生だった。
それまで良好だった叔母さんとお父さんの関係は、
1つ年下のお姉ちゃんが入学したことで変わったんだと。
つまり叔母さんはお父さんのことが好きだった、
それを入学したばかりのお母さんに取られたことで憎しみを持ち始めたと言ってる。
1年間仲良くするので精一杯だった叔母さんに対して、
お父さんからの猛アタックで数ヶ月で恋人になったお父さんとお母さん。
それがきっと許せないんだろう、と。
ーーーその憎しみだけを抱えて生きて来たおばさんは、
お見合い結婚で今の家族と出会った。

別々に暮らしてて疎遠関係にあったけど、
両親が他界したことでおばあちゃんが私たちを引き取る形になった。
おばさん家族からの当たりが強くて、
姉は反発して家を出た。
ーーー私は強く言う勇気がなくて、
今に至る。
結局ここまで生かしてくれたのは叔母さんだし、
少しは恩返しするべきなのかなと言う思いもあるから、
私は従うしかないのだと思う。

帝国ホテルの前にある日比谷公園に座り空を見るーーー。
無事に終わりますように、
そう願いながら、
空にいるお父さんとお母さんに救いを求めた。

時間までの1時間、
いろんな人に見られながらも、
場違いだと分かっていたけど、
日比谷公園を散策した。
紅葉が綺麗で、
先輩と来てみたかったな、と思った。
泣きそうになるのを堪え、
叔母さんの言葉を思い出した。

お見合い、覚悟しなさいと言う言葉を。
それはどう言う意味だったんだろうと、
間近になって不安になった私は・・・
頼るあてもなく部活中の環に電話してしまった。

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