【 君がいる場所 】#06. それぞれの好きな人*。

君がいる場所

#06.

始業式も終わり、
9月に入り二学期が始まり、
少しずつ秋の始まりを感じる季節になった。

「ーーーで、文化祭に出すものはこれで決定で良いですか?」
学級委員が4時間目を使って文化祭に出すモノの意見を取りまとめている。
意義ある人は誰もいなくて、
高校初めての文化祭は喫茶店と決まった。
環たちバスケ部組はクラスの出し物と部活の出し物があるから大変なんだと言っていたけど、
個人的には樹先輩と過ごせる時間が増えるんだから羨ましいなぁと思った。
文化祭委員も無事に決まり、
イベントが苦手な私は無事に逃げることが出来た。
もちろん事前準備は手伝うし、
当日もウェイトレスをすることに決まったけど、
他のクラスや先生方との連携などを取る実行委員からは免れることが出来た。

「バスケ部としては何をするの?」
「私たちはベビーカステラを出すんだよ!男子は作る人、女子は売り子になる!」
「そーなんだね!じゃあもしクラスの方大変だったら私が代わるからね!」
「ありがとう。ちなみに先輩のクラスは仮装フォトブースらしいよ?花も樹先輩と撮るチャンスじゃん、行けたら行こうね!」
「ーーーありがとう。」
環たちはドタバタと部活に向かったけど、
私はその日から文化祭に向けて看板ボード作りをしたり、
スウィーツ担当の子達と一緒に家庭科室を借りて実際に作ってみたりした。
ーーー普段は環と双葉としか話さないから、
同じクラスなのに初めて話す子も数名いて、
なんだかお互いに緊張しながらも和気藹々と出来たんじゃないかなと思った。

「せっかく作ったんだから、差し入れに行かない?」
実はサッカー部のキャプテンに片思いをしていると暴露した子が提案した。
「私も・・・!風間くんにあげたい・・・」
もう1人の子は同じクラスのサッカー部の風間くんに。
「わたしは・・・草田先輩にあげたい!」
もう1人の子は2年の剣道部の先輩に。
みんな恋してるんだなぁと思ってた。
「ーーー柊さんは好きな人いないの?」
「・・・バスケ部の樹先輩が好きです。」
「うっわぁーーー!あの先輩カッコいいよね!好きになる気持ち分かる!みんなで渡しに行こうよ、それぞれ渡したら教室に集まろー!健闘を祈る!」
出来る自信はなかったけど、私も頑張ろう。
一歩進みたいと思ったから、そっと体育館をのぞいた。

「ーーー花、どうしたの?」
「樹先輩いるかなーって思って。」
「先輩なら忘れ物って言ってたから教室じゃないかな?どうしたの?」
「ーーーさっき作ったから先輩にあげようかなって。」
環とコソッと話して、
私はそのまま先輩の教室に向かった。
ーーー滅多に行かない三年生の教室だから少し緊張するなと思った。
だけどこの日はどの学年も文化祭の準備を始めたから少しだけ賑わっている気がした。

「樹先輩、これ差し入れです!みんなで作ったので食べてね・・・」
ふと階段から聞こえた声ーーー。
靴の色で分かる2年の先輩が樹先輩にお菓子を渡してた。
「ありがとう。食べさせてもらいます。」
遠慮なく先輩はそれを受け取り、
2年の先輩は頬を赤くしていた・・・。
あぁ、この先輩も樹先輩のことが好きなんだなって思った。
ーーー私は一歩下がった。
よく考えてみれば、樹先輩に好意を持ってる人なんてたくさんいるよね。
そんなこと忘れてた・・・
環たちと一緒にいて距離が少し近くなった気がしたから普通に話せるもんだと思っていたけど、
もし環たちがいなかったら話すことさえ今でも無理だったと思う。
多くのライバルがいる先輩を好きになって、
その中にもしかしたら先輩の好きな人がいるかもしれないとふと思ったら前に進めなかった。
先輩の周りにいるたくさんの美女の中で、
私には勝ち目なんてない・・・。
そう思って、私は行動すらせずに教室に戻った。

「どうだった?」
「ーーー先輩いなかった。みんなは?」
「ビックリしてたけど渡せた!」
私以外の全員が渡せていて、
正直羨ましいなって思った。
「聞いても良い?付き合いたいとか思ったりしないの?」
「・・・私の場合は確かに好きだけど、恋愛の好きとはまた違うから。」
「私は風間と付き合いたいと思うよ!でも風間、今好きな子いるから!でもライバルいても私が好きな気持ち変わらないから頑張るんだ!」
吉野さんと村井さんが答えてくれた。
「そっか。私はまだそこまで気持ちが強くないのかもしれないなぁ・・・」
「これからだよ!みんなで頑張ろう!」
なぜか変な団結力が生まれた瞬間だった。

「花、今日体育館に来た?」
ご飯を食べてるときに剛くんが言った。
「うん、行った。クラスでねカフェをするから手作りケーキを出すからってみんなで練習したの。それぞれ好きな人にあげようってなったんだけど・・・」
「で、樹にあげられたか?」
「ーーー教室まで行ったんだけど、他の人からももらってて勇気出なくてあげれなかった。あっ、食べる?カバンに入ってるよ。」
「ーーーいや、あげたら?」
「ううん、もう良いんだ。食べてよ。」
剛くんは不本意ながらもそれを口にしてくれた。
美味しいとは言ってたけど、
もう少し甘さが欲しいとアドバイスももらった。
明日吉野さんたちに伝えようと思った。

「そういえば愛梨から連絡きて、今年の文化祭のステージに招待されたってよ(笑)」
「うちの高校の?すごいね!来るの?」
「仕事として、だな。だから話せないだろうなぁと思うけど会えるのは嬉しいよな。」
「ーーーうんっ!!」
私も夜、お姉ちゃんに電話した。
サプライズしたかったのに!あのおしゃべり!と剛くんに対して文句言ってたけど(笑)
でもやっぱりお姉ちゃんとの時間はすごく楽しいなって思った。
ーーーもちろん剛くんとの時間も友達との時間も楽しいけど、
肉親であるお姉ちゃんはまた違った気持ちの拠り所を感じることが出来た。

そして、文化祭までほとんど毎日・・・
私は居残りをしてケーキの試作、
そして看板だったり内装だったりをクラスのみんなで作り上げた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました