【 君がいる場所 】#02. 恋心*。

君がいる場所

#02.

いつもの変わらない日常が戻った。
唯一変わったことと言えば、
今まで挨拶すらしなかったのに、
先輩たちと会ったら挨拶をするようになったことくらい。
ーーー私にはこれはとてもとても大きな一歩だ。

「・・・好きってどんな感情?」
「えっ!花!好きな人できた!?樹先輩?!」
この前の試合の日、
どうして樹先輩と一緒だったのか環にも問われたけど私にも分からないことで答えることが出来なかった。
だけど環は私に、仲良くなれる大チャンスだよ!と言ってくれた、頑張りどころだよ、とも。
「・・・うーん、分かんない。樹先輩に対しては憧れだと思うんだけど・・・」
「好きってのはその人のことを思うだけでドキドキしたり、四六時中彼のことを考えてしまったり。とにかく考えるとドキドキが止まらなくなるんだよね。」
ーーーなら違うのかな、と今の自分の感情が分からなかった。
先輩と初めて会話した日から、
尊敬から憧れになり・・・
もっと仲良くなりたい、話したい、先輩を知りたいと思うようになった。
会えばドキドキするけど会えない時間に考えてもドキドキはしない。
「えっ、それは・・・」
「それは恋だろ(笑)」
環たちと話していたのに割り込んだ須永くん。
「須永ーーー!」
「聞くつもりはなかったけど(笑)環、声でけーし(笑)柊もごめんね?(笑)」
悪気もなく謝ってる。
「でも私もそれは恋だと思うよ。花は先輩のことが好きなんじゃないのかな?」
双葉も須永くんに同調して私に伝えた。

トクントクンーーー・・・。
先輩が好き、そうなのかな・・・。
周りに言われて自分の気持ちを確かめる。
ーーーもしこれを好きだと認めてしまえば簡単なのかもしれない、
でも初恋もまだの私にはこれが恋なのかさえも分からなかった。

「えっ・・・」
そんな矢先、先輩に彼女がいると言う噂が流れた。
あくまでも噂で誰か本人の口から聞いたわけでもない。
だけど3年の誰かが樹先輩が女性と2人で一緒にいるところを見たんだって、と。
「友達とだって2人で歩くだろうし、決定打じゃないしね・・・」
明らかにショックを受ける私に対して双葉がフォローしてくれた。
ーーーそれはそうだけど、考えてみたら先輩に彼女がいてもおかしくないのではないかと思った。
スポーツ万能でイケメンで女子からの人気がめちゃ高い人、
それに私が思うに優しい人だと思う。
そっかーーー・・・
彼女の存在、全く考えていなかったな、と自分の恋愛値の低さを思い知った。

今思えば、
憧れからいつ好きに変わったんだろう。
半年前に活躍するプレーを見て憧れた、
こんなふうに私もスポーツがしたいと叶わない願いを先輩に乗せて憧れを持った。
叶わなくても何がなんでも同じ高校に行く、とあの時に決めた。
おばあちゃんが決めた遠方の高校じゃなく、
お姉ちゃんや剛くんの母校で、
お母さんたちの出会った学校に絶対に行くと決めた。
だからおばあちゃんの反対を押し切って剛くんの家に居候させてもらってる。
ーーー最後に折れたおばあちゃん、
金銭面の援助をすごくしてくれていることは今でもすごく感謝している。

高校入学当初は本当に憧れだった。
変な感情も持っていなかったし、見ているだけで幸せだった。
環、双葉、須永くんと仲良くなって先輩とも顔見知り程度にはなった。
見かけるたびに目で追いかけて、
私の席から見えるグランドで友達と笑い合う先輩や、
友達とサッカーにバスケなどのスポーツをする先輩を眺める時間もあった。
ーーー今思えば目で追うごとに気持ちが膨らんでいたのかな。

初めて会話という会話ができた先週の試合、
あの時にはすでに先輩のことが好きだったのかもしれないと思った。
知り合って間もないし、
会話なんてほぼゼロに近いのに人は人を好きになれるものなんだと感心している自分がいる。
そして、今先輩への恋心を自分で実感した。
ーーーああ、これが好きという感情なんだと。

彼女がいたって良い、
先輩からの見返りは望んでないから。
ただ好きになったばかりの初恋をまだやめさせないでと思った。
ーーー自分が納得できるまで、
好きでいさせてくださいとだけ願い、
私は気持ちを封印した。

そして私たちは長い夏休みに入った。

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