#13.
剛くんが結局帰宅したのは昼過ぎーーー。
「連絡出来なくてごめんな!」
帰宅早々謝罪してきたけど、
居候しているのは私なんだから・・・
と私は何も言い返せなかった。
・
その頃から私は剛くんと自分の同居に疑問を持つようになった。
別に私たちは変な関係ではないけど、
私には樹先輩がいて、
剛くんにはお姉ちゃんがいる。
お互いに好きな人がいる中、
幼馴染とはいえ赤の他人が同居して良いとは限らない。
ーーーそれに剛くんとお姉ちゃんの電話を偶然にも聞こえてしまったからこそ、
余計にそう思うのだと思う。
クリスマスが終わって剛くんとの日常が戻った日、
風呂上がりの私に気がつかない剛くんはお姉ちゃんと電話してた。
「ーーー俺だって一緒にいたいと思ってるよ。花のこともあるし、俺はこっちに残らないと。仕事辞めても良いから、愛梨も来いよ・・・ーーー」
剛くんは電話越しにそう言ってたーーー・・・。
私のことって何?と思ったけど、
私がいるから剛くんは引っ越しができないのでは?とすぐに思った。
私はてっきり仕事が落ち着いたらお姉ちゃんが一緒に住むものだと思っていたけど、
お姉ちゃんの事務所からこの家は遠すぎるからきっと無理なんだよね。
ーーーそしたら剛くんが引っ越すしかない、
つまり私は今邪魔になっているということにつながった。
・
「花?」
「・・・」
「おーい、花?」
「あっ、ゴメン。何だっけ?」
「・・・顔色悪いけど大丈夫か?何かあったか?」
剛くんはいつも優しい、
私が調子がおかしいといつも気がつく。
お姉ちゃんよりも先に、
誰よりも先に気がついてくれる。
ーーーまるで本当のお兄ちゃんみたいだと錯覚してしまう。
「あっ、ゴメン!えっと、何だっけ?」
「帰省するのやめておこうか?体調悪いんじゃないのか?」
「大丈夫!ちょっと考え事してた、ごめんね!」
そして年末だから剛くんは実家のある静岡に帰る。
私は・・・この前トラブったばかりだから帰らない。
東京に1人残ることを剛くんも気にしてる。
「何かあったら連絡しろよ?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんも東京に残るし遊びに行ってくるよ。」
「ーーーああ。」
そして年末年始を迎えるために剛くんは実家に戻った。
・
私はーーー・・・
特にやることもなくて年末年始も関係なく家で過ごした。
時々先輩と連絡は取り合ったけど、
先輩は年末年始は家族と過ごすので忙しそうだったし、
貴重な家族との時間を邪魔したくなくて、
あえて私からは連絡を控えた。
ーーーだから、年末年始、先輩からの連絡は一切なかった。
「ーーー花!久しぶり!あけおめー!」
「明けましておめでとう!」
そして今日は新年早々、
バスケ部で初詣に行くというので私も一緒に行かせてもらうことにした。
「コーチも誘ったのに来れないんだって!」
「あー、剛くんはまだ実家にいるよ。明日帰ってくるんじゃなかったかな?」
「えっ、じゃあ花、今1人?!」
「うん、そうだけど?」
私は結構1人の生活に慣れて来ているから何とも思わないけど、
1人で寝過ごすって高校生にとっては衝撃なのかなと環に申し訳なく思った。
「じゃあ先輩と結構会えたんじゃない?」
「いやぁ・・・」
クリスマス以来、
最後の練習日だと言って28日の日に夜ご飯を一緒に食べた。
ーーーそれ切りで私も今日が先輩に会うのが久しぶりになる。
「あっ!噂をすれば!明けましておめでとうございます!」
「ーーー新年早々元気だなぁ・・・」
向こうから来る樹先輩と正樹先輩が怪訝な顔をして環に伝える。
でもそれって心許してるから正直に伝えられる関係でもあるんだなと思って、
少し環を羨ましいと思った。
ーーー最後の須永くんを待って私たちは出発、
一瞬先輩と視線が絡んだけど、
なぜか私は視線を逸らしてしまった。
「ーーー柊、昨日さ池袋にいなかった?」
神社に入り人ごみをかけ抜く中、
須永くんが私の横に並んで話しかけてきた。
「いたいた!須永くんもいたの?」
「おれ、HANAの大ファンだから中学の友達と行ったんだよ!柊、1人だったよな?(笑)」
そう、昨日はあまりにも暇でお姉ちゃんに連絡したら池袋でイベントやるからおいでと言われた。
行ったは良いものの人混みに疲れて途中で帰ってしまった。
「ーーー所用があって近くまで来たら何だか騒がしいから覗いてみたの。声かけてくれたら良かったのに・・・」
「いやぁ、友達もいたしさ・・・」
須永くんは少し気まずそうに私に言った。
ーーーあっ、男の子じゃなくて女の子の友達だったんだと私は察した。
初詣は激混みの中、
3時間かけて無事に終わったーーー・・・。
疲れたーーー・・・。
「大丈夫か?」
「あっ、すいません・・・」
年末から続いている眩暈が人混みによりふらついてしまい私は先輩に支えられる形となった。
「これからみんなでモーニング行こうよ!これで解散なんて嫌だ!寂しいー!」
わけわからないことを環が言い出すもんだから、
その場にいた全員が苦笑い。
「・・・わたし・・・」
ちょっと流石に断ろうとしたけど、
盛り上がってて入る隙が見つからない。
「柊、お前は帰れ。」
だけど冷たい低い声で私が入ることを拒否したのは紛れもなく樹先輩だった。
「えっ・・・」
「顔色も良くないし、ここからは次のバスケの話もあるから遠慮してもらいたい。」
「ーーーちょっと!そんな言い方しなくたって・・・!」
「ううん、先輩の言う通りだと思うよ。お邪魔しました、また学校でね、環。」
私はみんなに一礼してその場を去った。
・
結局ーーー、
先輩と連絡を取ることもなく始業式を迎えた。
あの時、私を思って言ってくれた言葉なのか。
それとも何か本当に怒っていたのか分からない。
ただ本当のことを聞くのが怖くて、
私からは連絡出来ないでいたら、
向こうから来ることもなく学校を迎えてしまった。
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