#12.
今日はクリスマスイブーーー。
先輩とお付き合いして二ヶ月、
冬休みに入っても週1では会えている。
だから寂しさとか何も感じてないーーー。
それよりも今日は・・・
伸びに伸びた、
先輩達の引退試合、
とても大切な日だ。
・
《 試合頑張ってください!》
《 席とってあるから、遅れんなよ!》
付き合って直後に教えてもらった先輩の連絡先へ送ってからのやり取り。
甘々なメールはしないけど、
こうして連絡取り合えること自体が嬉しい。
ーーー私は急いで環達と一緒に試合会場に向かう。
今日の対戦相手は決して弱くもなく強くもなくと言ったところらしい、
だけど先輩の中学の同級生が所属していると聞いた。
「どの人が同級生?」
「ーーー相手の10番って言ってた。あっ、いた!あの人じゃない?」
先輩が用意してくれた座席に座り、
私は先輩を見つけ、
ついでに相手の友達をも探した。
「でか!正樹先輩よりでかいじゃん(笑)」
樹先輩は180cmある、
それを超えて正樹先輩は183cm、
その友達はさらに上に来た。
ついでに須永くんも178cmある、
やっぱりバスケをする人は背の高い人なんだなぁって思った。
「ほら、試合始まるよ!」
双葉に言われて先輩達の方を見ると、
もう真剣な眼差しで整列しているところだった。
ーーー試合に友達もこうも関係ないんだよね、
自分たちの力を出す場所なんだから。
試合は無事に勝利した。
去年の先輩達の悔しい思いを知っていた先輩だからこそきっと思うこともあったんじゃないかなと思う。
私だって2年連続でこの場所に来れて、
すごく胸が熱くなった。
樹先輩は正樹先輩や井上先輩の3年生同士で抱き合って、
後輩達に胴上げされていたーーー。
そして監督も剛くん、
最後には2年生1年生までも順番に胴上げされてみんなの歓喜がこちらにまで伝わってきた。
「花はこれから先輩に会う約束してるの?」
「ーーーううん、明日会う約束してるの。バスケ部で集まるんでしょ?」
「そう!これから打ち上げに誘われたんだけど、花も来ない?」
「あーー。今日は辞めておこうかな!また冬休み中に遊ぼう!」
冬休みに入ってから、
実は体調があまり良くない・・・ーーー。
女の子の日が来るのか、
ふらつくことが多くて鉄分のサプリを飲み始めたくらいに。
でも今日の試合はどうしても行きたかったから、
無理をしてでも来たから早めに帰ろうと決めた。
それに打上に関係ない私が行っても良くないと思った。
「分かった!気をつけて帰ってね。」
・
環達と分かれた私は自宅に戻る前にスーパーに寄る。
剛くんは打ち上げをして帰宅するだろうし、
8時過ぎるかなと勝手に思ってた。
のんびりと買い物をしてロック解除してマンションの扉に手をかけて家に入る。
「ーーーあっ、おかえりー。」
誰もいないはずのリビングから明るい声が響く。
えっ・・・
「えっ!!お姉ちゃん!?」
「ふふふ、驚いたー??ねぇ、驚いたー?(笑)」
私の驚く顔を見て大喜びしてるお姉ちゃん。
「驚くよ!もうっ・・・剛くん知ってるの?!」
「知ってるわよ(笑)花を驚かせたくて黙っててって頼んだの(笑)」
「えぇぇぇ、酷い、2人とも・・・」
「剛は帰ってくるの遅いみたいだし、今日は2人でデリバリーでもしよう!」
私の7歳違いのお姉ちゃん、
小さい頃から私を守り続けてくれたお姉ちゃん。
大好きなお姉ちゃんが今目の前にいるーーー・・・。
「剛くんと2人で過ごしたかったんじゃないの?」
「ーーーないわ。私たち付き合い長いからイベントなんて別に良いのよ、ただ剛が元気でいてくれる、それだけで私は頑張れるんだよね。花も彼氏と予定合わせなかったの?」
樹先輩の存在は電話で話してあるからお姉ちゃんも知ってる。
「ーーー今日は先輩の引退試合で、勝利の打ち上げしてると思うよ。」
「何部だっけ?」
「バスケ部だってばー(笑)」
「完全に私の後輩じゃないの(笑)」
そう、お姉ちゃんは高校でバスケ部のキャプテンを経験してるスポーツ万能少女でもあった。
その推薦で大学に行ったけど足を壊してダメになってモデルの道を歩み始めた。
「そうだよ、お姉ちゃんの後輩(笑)」
「お手並み拝見と言ったところね(笑)」
私とお姉ちゃんは日付が変わるまで、
樹先輩とのことだったり、
お姉ちゃんの仕事のことや剛くんとのことを話した。
ーーー8時頃帰宅すると言ってた剛くんも、
結局デレンデレンに酔っ払って帰宅したのは夜中2時。
帰宅した時、「愛梨ー!花ー!」と珍しく叫んでいたので意識はあったのかな、と思う。
・
次の日、私が出かける時・・・
そっと剛くんの寝室を覗いた、挨拶しようと思って。
でもね、その扉を静かに閉めたよ。
ーーーだって剛くんとお姉ちゃんが抱き合って寝ていたから。
それも服を着ないで。
見てはいけないものを見てしまった、そんな気がした。
ーーーずっと会うのを我慢していた2人だから、
そりゃ盛り上がるよね、って。
なんか逆に申し訳ない気分になった。
・
「昨日、コーチ大丈夫だったか?」
私は樹先輩と合流してから、
隣り合わせに目的の店に向かって歩く。
「夜中、2時頃帰ってきました(笑)先輩達もその時間?」
昨日先輩とは連絡を取っていない、
だから何時ごろ帰宅して何していたのかは全く知らない。
「まさか!俺たちは9時頃には帰宅したけどコーチは監督と二次会だと言って飲みに行ってた(笑)
最近では当たり前のように手を繋いで街並みを歩く。
クリスマス一色で、
去年までクリスマスと無関係だった私は、
この一大イベントに樹先輩と一緒にいられることが今何よりも嬉しい。
「これはどうだ?」
そして今日の目的は2人でクリスマスプレゼントを選ぶこと。
本当はお互いに内緒でって話も出たけど、
先輩がそれを観念した。
ーーー何が好みで何をあげたら良いのか、
全く見当がつかないから一緒に選んで欲しいと。
「かわいい!これも可愛いですよ?」
今、私たちは2人でネックレスを選んでいる。
私が先輩とお揃いの何かが欲しいと言ったから。
ーーー指輪はまだ重過ぎる、
はっきり先輩は言った。
ネックレスなら練習中でもつけられるし、
普段もつけられるから良いねって2人で話し合った。
高校生の身分でそこまで高いのは買えないけど、
2人のものだからきちんとしたお店で買おうとお手頃の店舗を調べてやってきた。
「このタイプがお好みなら、こちらもお好きなのでは?」
店員さんの計らいで好きそうなものをピックアップしてもらい、
最終的にシンプルに2つ合わせるとハート型になるネックレスをお互いに購入して交換した。
「練習中とか無理しないで外してくださいね。」
「ーーー分かった。」
なくしたり壊したりするより良いと思って、
私は部活中は逆に外してもらうように頼んだ。
アクセサリーが終われば、
予約していたレストランだ。
ーーー私の大好きなパスタが美味しいイタリアン、
ここは私が予約させてもらった。
「予約してもらって悪かった・・・」
「いいんです、先輩は引退試合で忙しかったし気にしないでください。」
男から・・・というプライドがあるようで、
何度も何度も腑に落ちないような顔はしていたけど私は全く気にしていなかった。
ご飯もデザートも無事に終わり、もう入らない・・・ーー。
「楽しい時間はあっという間だな・・・」
時計を見ればもうすぐ7時半になる。
午後一で待ち合わせをしたのに、もうすぐお別れだなんて寂しいなって思った。
「あのっ、これ・・・」
でもタイムアウトしてしまう前に私はカバンから一つの箱を取り出した。
「なんだ、コレ?」
「ーーー大したものじゃないんですけど、3年間バスケ部お疲れ様でしたって。これからも頑張ってくださいってことで・・・」
受け取ってくれた先輩はそれを開封してくれた。
「リストバンドか!ありがとう、大切に使うよ。」
「ーーーはい。」
なんだか改まるとすごく恥ずかしかったけど、
先輩が私の選んだものを気に入ってくれてる。
そう目の当たりにするだけで胸の辺りがくすぐったくなった。
先輩の言う通り、
楽しい時間はあっという間に過ぎていくーーー。
楽しみにしていたクリスマスはあっという間に過ぎた。
「ーーー先輩は引退したらバスケ部に顔出さないんですか?」
「俺は推薦で大学が決まってるから、引退してもバスケ部に顔出すよ。普通に練習にも参加させてもらう予定、だから年末年始以外は学校にいる予定だわ。」
「なら会いたくなったら差し入れ持って行きますね(笑)」
イエスともノートも言わずに先輩は笑ってた。
「今日はありがとうございました。楽しかったです!」
「俺も楽しかったよ。また年末か年明けに会おうか。」
次会う約束がないと不安になってた私は顔に嬉しいのが出てきたと思う。
「いいんですか?!」
「ーーー当たり前だろ。また連絡するよ。」
そう言って先輩は私に手を振って、
自分の家の方に向かって行った。
先輩が見えなくなるまで見送った私は、
そのまま帰宅した。
ーーーでもいるはずの剛くんもお姉ちゃんの姿もなくて、
私はもうすでに樹先輩に会いたいと言う気持ちになって、
この気持ちやばいなと自分が少し怖く感じた。
ーーーそんな気持ちを消すかのようにお風呂に入った。
・
結局、どんなに起きていても剛くんは帰宅しなかった。
ーーーお姉ちゃんとの時間を邪魔するのも良くないかと思って、
あえて連絡入れなかった。
だけど久しぶりに過ごす1人きりの家、
こんなにも寂しいものなんだと思って正直心細く感じた。
コメント