【 君がいる場所 】#49. 1年・・・*

君がいる場所

#49.

真夏の花火大会から季節は変わり始め、
夕方になると上着が欲しくなる10月初旬ーーー。
私はもうすぐ迎える先輩との1年記念をどうするか、
今度は幸せな悩みを抱え始めた。

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幸せな悩みだからどんなに考えても凄く幸せなこと。
忙しい先輩のことだしクールな先輩だからきっと1年のことなんて覚えていないんじゃないかなって思う。
だけど祝いたいと思っているのは私だからそれは全然かまわないし、
かしこまったりするのも困るから黙ってサプライズでお祝い出来ないかなって考えている。

週1ペースで会っていた私たちだけど、
今は先輩の帰宅時間をめがけて金曜日の夜お邪魔することも増えた。
ーーー毎週だとさすがにおばあちゃんたちの目もあるからと、
月1回と決めてお泊りする日も設けてくれた。
少しずつ・・・
私たちは少しずつゆっくりだけど前進していると思う。

「就職活動の方はどうだ?」
そして今日はそのお泊りの日・・・ーーー。
バイトをクビになってから私は本格的に就職活動を始めた。
一年のブランクがある私を白い目で見る会社もあれば、
海外経験に目を輝かせて聞いてくれる会社だったりとマチマチだった。
それでもいまだに内定に繋がらないのはきっと私の努力不足だと思う。
「うーーん・・・微妙な感じです(笑)良いと思っても認めてもらえない、みたいな(笑)」
「俺は推薦だったから何とも言えないが・・・」
ですよね、先輩は才能あって選ばれし者だから就職活動を経験してないんだよね。
「ーーーもう45社ですよ?この世界にいったいいくつの会社があるんでしょうね(笑)」
「確かに・・・それは興味あるな(笑)」
先輩は・・・前よりも私に遠慮がなくなってよく笑ってくれるようになった気がする。
私に関してはあれだけ呼び捨てで呼んで欲しいと言っておきながら自分はまだ呼べていないし、
簡単に性格も変えられないからまだ遠慮があると思う。
だけど最近はそれに先輩も気が付いてくれて少しずつ本心が言えるようになってきている気がする。

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先輩のマンションにお泊りをする時、
私は必ずご飯を作って待っているーーー。
祖母やおばちゃんに育ててもらっている恩返しみたいなもので、
幼い頃からよく料理をしていたから料理には自信がある。
どれもこれも美味しいと食べてくれる、
そんな先輩の姿を見るのも嬉しくて、
こっちが毎回幸せな気持ちになる。

「先輩は今年のハロウィン行くんですか?」
「・・・先輩?」
「あっ・・・い・・・・いつき・・・さんは・・・」
彼と一緒にいる今、私は先輩を卒業しようと猛特訓中。
先輩と呼ぼうものなら突っ込まれて言い直すことが多く、
言い終わった時には茹でたこのように顔が真っ赤な自分がいるーーー。
「まだ迷ってるな・・・花は行く予定でいるのか?」
「いや・・・仮装めんどくさいし行かないです(笑)」
彼の家の大きなソファに横並びで座って話す時間がすごく好き。
彼の静かに話す落ち着いたトーンがすごく好き。
「なら・・・二人で会うか?」
「えっ、良いの!?」
「街中がハロウィンだろ、雰囲気味わいたいんじゃないのか?」
「・・・少しだけ(笑)会えるならすごく嬉しい!」
私が笑顔で彼に振り向くと不意打ちでキスをされた、
最近こういうことが多くて先輩が私への遠慮が消えたなと思うことが多い。
「もうっ!!!(笑)」
「悪い悪い(笑)じゃあ、その日仕事が終わったら落ち合うか。」
「うん。あとさ・・・25日って予定ある?」
一応、付き合って一年なんだけど・・・
とは言わなかった。
「25は・・・」
スケジュールを確認しながら返事をくれる先輩。
「木曜だから厳しいかな・・・」
「ーーー会いたいってことか?18時まで練習だから、それからなら会えるよ。」
「じゃあーーー・・・、来ても良いかな?」
「ーーー大丈夫だよ。」
答えながら先輩は私が来る予定をスケジュールに加えてくれた。

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彼は練習が終わると基本的にいつも先輩だったり後輩や同僚と夕飯を食べて帰る。
月1の泊りに行く金曜日は軽くご飯を食べて、
わたしが待つ彼のマンションでも食べることが多い。
それを考えて25日の日も同じようになると思うから、
お腹に負担になるようなメニューは考えちゃダメだと思った。
とりあえず当日まで2週間はあるし、
プレゼントも踏まえて色々計画を練ろうと決めた。

本当は一年だし・・・
ペアリングなり欲しいなって思った。
でもバスケをしてる先輩に指輪なんてタブーだと思うしそれは諦めた。
ネット検索したり双葉に相談したり、
時に須永くんの意見も取り入れて・・・
結局私が選んだのはキーケースだった。
ペアリングは欲しい、とちゃんと言えた時に2人で買いたいと思ったから今回は無難にネイビー色のキーケースを選んだ。
就活で行った新宿の駅ビルにあるお店で見つけた素敵なキーケース、
気に入ってもらえたら嬉しいなという思いで私は鞄にしまった。

当日までにお兄ちゃんを呼び出してご飯作っては意見をたくさんもらった。
胃に重いか優しいかーーー・・・。
そこが重要だったから。

25日は朝からソワソワの私。
「ーーー楽しんで来てね。」
私が少し緊張しながら玄関で靴に履き替えていると葵おばちゃんが声をかけてくれた。
「ありがとう。明日帰って来るね。」
「大丈夫よー(笑)何泊でもしてらっしゃい(笑)」
「あはは!行って来ます!」

食材を買って先輩のマンションに到着する。
彼の家は鍵ではなくパスコードを入れる鍵となってる。
少し合鍵に憧れたけど、
こればかりは仕方ないねって話をしてた。
パスコードは0829、
これがなんの日付なのか適当な数字なのか分からないけど・・・
とりあえず今は気にしないでおこう。

先輩が帰って来るまでの3時間、
私はひたすら台所を借りた。
まずは時間のかかるケーキの土台から作り始めた。
最後まで仕上げて冷蔵庫で冷やす。
その間にメインのご飯を作る。
「ーーーいい匂いだなぁ。ただいま。」
「おかえりなさい!」
ただいま、と誰かが言ってくれる。
おかえり、と伝える。
素敵だなって思った。
「もう出来ますから着替えて来てください!」
つまみ食いをしそうになる彼を止めて私は寝室に追いやった。

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「すげーな、全部花が作ったのか?」
「今日は頑張りました(笑)」
お兄ちゃんの意見を参考にして最終的に私が作ったのは・・・
ミニサラダ、リゾット、アボカドとエビのバケット、かぼちゃのスープだった。
先輩は目の前にあるご飯をすぐ食べ終えたーーー。
「うまい!花は良い奥さんになるな(笑)」
「ーーーだと良いですけど(笑)まだ食べられますか?」
「食べられるよ。まだあるのか?」
先輩の言葉を待たずに私は冷蔵庫からショートケーキを取り出した。

「えっ、これも作ったのか?」
「ちょっとクリーム失敗しちゃいました・・・えっ!」
包丁で切ろうとしたのに、
ペロッと味見をする先輩に苦笑いの私。
「うまいよ、食うか?(笑)」
先輩の人差し指を私に突き出すーーー。
試されていると思った、
これで拒否したら?
受け入れたらどうなる?
答えが分からないから私は恥ずかしさいっぱいだったけど目を瞑ってパクッと先輩の指を自分の口に入れた。
「はな、エロいなぁ(笑)」
「ち、違・・・!」
こういったやり取りは正直、
付き合って初めてじゃないかってくらい自然になって来たと思う。
それが私はこの上なく嬉しいーーー。

「あとこれ・・・」
「えっ?」
ケーキを食べ終わり私は先輩に買っておいたプレゼントを渡した。
「ーーーありがとう。って、これなんのイベント?あっ、誕生日か?!教えたっけ?」
「えっ・・・誕生日って?えっ、いつ?!」
言われてみればお互いの誕生日知らないかもって思った。
あっ、パスコードの日付!?
「もしかして0829って誕生日?!」
「ーーーちがうけど。」
「誕生日、いつですか?!」
「10月22日。」
ウソ・・・。
過ぎてるって思って蒼白だった。
「うそ、過ぎちゃってる・・・」
「ちょっと待って。これはなんのプレゼントなんだ?」
「ーーー今日で付き合って1年だから・・・」
「あー、そっか。悪い、なんも用意してないわ。」
大丈夫、想定内だったからなんとも思ってないよ。
「いえ、それは大丈夫!それよりーーー・・・」
一年記念より、
先輩がこの世に誕生した日の方が大切なのに。
「花は誕生日いつなんだ、、」
「8月8日です・・・」
付き合って一年だというのに、
いろんなことがありすぎて誕生日どころではなかった私たち。
ーーーでもいいわけだよね。
「お互い過ぎてるんだし、別日で祝おうか。キーケース、ボロボロで買い替えたかったんだ、ありがとう。」
あまりの落ち込みに私を元気付ける先輩、
普段クールな人だから余計に面白くて笑が溢れた。

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「大切な記念日なのに忘れててごめん。」
「いいえ、全然大丈夫。それよりパスコードの0829ってなんの意味なんですか?誰かの誕生日ですか?」
「ーーー花火大会だよ。」
「花火大会?」
「花と俺が高校の時に初めて行った花火大会の日付だ。ーーー余計な心配しなくても大丈夫だよ。」
心を見透かされているかのように、
彼は私を抱きしめた。
その優しい温もりに包まれながら私は眠りについた。

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