【 君がいる場所 】#43. まだ彼女でいたい*

君がいる場所

#43.

程なくして私は退院したーーー。
術後は順調に回復して問題なく退院はしたけど、
おばあちゃんが少なくとも一週間は外出を許さなかった。
万が一、何かあっては困るから、と。
私も退院した直後に誰かに会おうなんて、
そんな気分にはならなかった。

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季節は5月の連休を過ぎた、
私は少しずつだけど軽いリハビリも兼ねて家の付近の散歩を始めた。
ずっと家にばかりいては体がなまってしまい、
動くものも動かなくなってしまうから適度に運動を取り入れるように退院時に促された。
入院中は仕事を休んでまで側にいてくれたお兄ちゃんも退院したと思ったら休んだ分を巻き返すと言って今は休む間もなく働きづめの毎日を送っている。
週末になると帰って来てくれるようになったし、
私の心配ばかりしているけど、
私からしたら働きすぎで倒れないか、
そっちの方が心配だよーーー・・・。

「ーーー樹先輩」
そして私が退院してすぐに連絡を取ったもう一人、
樹先輩の存在。
彼はGWは試合で忙しいのに、合間を縫って連絡を頻回にくれた。
今日は久しぶりに会う約束をしたけど、
おばあちゃんとの約束で電車は乗らないという形を取ったから、
先輩にこっちまで来てもらった。
「よぉ。体調は大丈夫か?」
「はい、今は元気です。ご心配おかけしてすいませんでした。それに今日も来てもらってすいません・・・」
先輩が腰かけているベンチと少し離れた場所に座り、
私は入院中のことを話した。
どういう経緯で病院に運ばれてしまったのか、
手術に至った理由もーーー。
「ーーー卒業旅行を無理したんじゃ・・・」
「それは絶対に違います!一生の思い出になったし、私にとっては最高の時間でしたよ。」
先輩は絶対にそういうと思った。
だけどそれだけは絶対に違う、
もし無理したことが原因だとしてもその選択を選んだのは自分だから私は後悔はしていない。

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「ーーーもう大丈夫なんだな?」
「ーーー私はそう聞いています。」
今回の件で言いたくないことを1つおばあちゃんは教えてくれた。
ーーー私にとっては凄くすごく大切なことで・・・。
昔、事故で両親を亡くしたと聞いていた私は・・・。
心肺停止になったのが親ではなく自分だったと衝撃の事実を聞かされた。
同じ事故で脳死状態になってしまっていた父親の心臓を私は移植して、
今こうして生きている。
つまり私は父親によって生かされた、らしい。
お母さんは・・・?どうやって亡くなったの?
という疑問は後になって思ったけど、
聞かされた時は気持ちを整理するのでいっぱいで何も聞けなかった。

大人の臓器を子供に提供したことでアンバランスが生まれ、
今回の発作が起きた。
その不調を今回の手術で調整したことで私は普通の生活が送れるようになったらしい。
「なら安心してよいんだな・・・」
「胸にまた傷が増えちゃいましたけどね(笑)もうお嫁に行けません(笑)」
半分冗談半分本気で答えた。
「・・・そんなことはないだろ(笑)」

少し気持ち的に距離を置いた期間があったから、環とのことも気にせずに今は先輩とこうして話すことが出来ている。
そういう意味では入院は私にとって良かったのかもしれないと思った。
ただーーー・・・
今この微妙な距離の関係が付き合っているのか、
そうでないのかーーー・・・。
私には定かではないけど、正直にその答えを聞く勇気さえも持っていない。
だってもう卒業旅行から2ヶ月、
色々な変化があってもおかしくないと思う。
「・・・な、なんですか!?」
私が想いにふけていると先輩が突然私の頬を触り、
先輩の冷たい手が私を驚かせた。
「もう少し太った方が良いかもな・・・」
先輩は私の瘦せてしまった体を心配しているようだった。
「今、必死で元に戻しているところです。先輩はバスケ頑張っていますか?」
「ああ、ケガとかもせずにおかげさまで順調だよ。」
「ーーー良かったです。」

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会話が続かないーーー。
あんなに大好きで色々と話したいことがあったのに、
今ここにいる先輩とは何を話したら良いのか分からない。
「ーーー柊、少し歩けたりする?」
「えっ、はい・・・」
突然の提案に驚きを隠せなかったけど、私は先輩の横に並んで歩いた。

懐かしいこの道のり、
先輩と初めてデートの待ち合わせをした駅前の区民間の中にある図書館、
そして須永君たちと一緒に行ったカフェも通り過ぎた。
駅から学校までの道のりも、
おばあちゃんの家も通り過ぎていくーーー。
学校とは逆の方向に歩く懐かしい道のり、
奥の公園に繋がるバスケコートに向かっているんだと思った。
「・・・柊、たくさん傷つけて悪かった。」
「えっ・・・環のことですか?それなら私もちょっとおかしかったんで・・・」
友達と自分の彼がなんて冷静に考えたらあり得ないことなのに、
私は異常なまでの嫉妬を覚えていたんだと思う。
「それでもオレが付き合っているのは柊だし、柊を優先するべきだったと今は思っているよ。ゴメン。」
珍しく先輩は私に頭を下げた。
ーーー付き合っている、っていう言葉が私はどんな謝罪より嬉しかった。
「・・・まだ付き合っているって思って良いんですか?」
「えっ?」
逆に先輩はそれに対して凄く驚いていた。
「だって・・・入院したり色々迷惑かけていたし、胸に傷増えちゃったし。それに嫉妬深いし幻滅したんじゃないかなって思って。」
先輩はそんな私を見てクスッと笑った。
今・・・笑ったよね?!
そしてその隙に私を抱きしめた。
「・・・俺は柊が笑ってる笑顔が一番好きなんだよな。俺の側で笑って欲しいって思って好きだって思った。もっと俺の側で笑って欲しいと思っているよ。ーーー一度別れて、離れるのが怖くなって遠慮してたけど、もう遠慮はしない・・・」
そう言って先輩は私にキスをした・・・
何度も離しては唇を重ねて・・・
こんな公園のど真ん中で恥ずかしかったけど、
私がずっと願っていた先輩とのキス、
それが実現して凄くすごく嬉しかった。

 

ドラマの世界でしか知らない医療のお話なので、
適当な部分があるのはご愛敬でお願いします♪

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