【 君がいる場所 】#34. 復縁*

君がいる場所

#34.

もうすぐハロウィン、
街中はハロウィンに関する装飾や音楽で賑わい、
歩いていても特に可愛い仮装をした小さな子供たちが目立ち始めた。

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私はーーー・・・
まだ先輩とのことに頭を抱えていた。
先輩のことは前と変わらず大好きなのは紛れもない事実。
でもその気持ちだけで戻ったらまた知らない女性が出てきたりしたときに嫉妬の塊で、
同じようなことを繰り返してはケンカして先輩を振り回してしまうのが目に見えている。
ーーー自分の性格を変えなきゃ誰ともうまくいかないことは分かっているけど、
どんなに変わろうと思っても根本的なものを変えるのは困難だということも分かってる。
大好きな人だからこそ、
簡単に戻ってはいけない気がして今も悩んでいるーーー。

「直感で良くない?別に結婚するわけでもないし、好きな人に戻ろうって言われてるなら飛び込んでいくけどね。」
最近、双葉と環とよく会うーーー。
就活が終わって卒論だけという少し時間があるからというのはあるけど、
高校時代に戻ったみたいでなんだかもどかしい気分になる。
「私もそう思うなぁ。だってそんな悩んでる間に他の人に取られたりしたら、そっちの方が嫌じゃない?」
確かに・・・ーーー。
もし樹先輩が誰かと付き合ってるって話を聞くのはショックが大きいかも、
現にこの前のデートで来れないと言ってた飲み会ですらショックが大きかったんだから・・・。
「ーーーそれは嫌。だって先輩は私のことは柊さんって呼ぶのに、環のことは環ちゃんだよ?それも正直嫌だった。」
「はぁぁぁ?なになに、花ちゃん、私にまで嫉妬してるの?!(笑)そりゃ正樹と付き合ってるからだわ(笑)」
「分かってるけど!それでも・・・嫌だったの、ゴメン。」
環に嫉妬心丸出しの私に対して彼女は大笑いしていた。
「この私が樹先輩を好きになると思う?(笑)ーーー無理っしょ(笑)・・・そんなに好きならハロウィンまで待たず、行った行った!」
「えっ・・・」
「金曜日は練習がないらしいよ、正樹情報。18時には会社出るって言ってたよ、連絡してみたら?」
正樹先輩と樹先輩は今でも時々会社終わりに飲むらしくて、
それが金曜日が多いことから環も情報を知っていた。
ーーーさすがに会社に行くのは抵抗があるから、環と双葉に若干無理矢理押し出されてから私は先輩に連絡してみることにした。

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私は先輩に、[ 新宿駅で待っています。都合がつく時間帯になったら連絡ください。]とだけメールを入れておいた。
先日の渋谷に引き続き、新宿もかなり久しぶりになる。
私が住む田舎の都内よりも新宿はやっぱり仮装している人も多いし、
お店も装飾されているものが可愛く、
売っているものもお花だけでも可愛く見えるのが不思議た。
私が先輩から連絡をもらったのは19時過ぎ、
時間も時間なので夕飯を一緒に食べようということになって駅ビルのイタリアンレストランで待ち合わせをした。

「ーーー遅くなって悪い。帰りにキャプテンに捕まった・・・」
駅とか医者はすぐだと言ってた割には確かに先輩が到着するのは遅かったけど、
人を待つことに苦痛を感じない私には全く問題なかった。
「全然大丈夫です。突然押しかけてしまってすいません・・・」
「それは別に良いんだけど。」
私はとりあえず話題を変えてみることにした。
「このお店素敵ですね、よく来るんですか?」
「時々ランチで来るくらい・・・」
今日の先輩は先日の先輩とは違い、あまり話さない通常の先輩で、私がたくさん話していたと思う。
先輩の仕事のことだったり社会人バスケのこと、
そして大学時代のバスケのことも色々と遠慮なく質問させてもらった。

惜しいカルボナーラをたらい揚げ、
先輩もボロネーゼの大盛りを食べつくした。
「・・・今日は私が払います!」
今日も私の夕飯代まで支払おうとする先輩を意地でも私は阻止した。
「いや、学生に払わせるわけに・・・」
「先輩だって1年目でお金ないはずです!」
「失礼な奴だな・・・(笑)」
「毎回毎回奢ってもらうなら・・・先輩とはもう外食しません!」
テーブルチェックだったこともありどっちが払うかでもめている私たちにそっと笑いながら店員さんは消えた。
「じゃあ今日はお言葉に甘えて奢ってもらうわ。」
何度も揉めて、最後の最後で先輩が苦笑いをしながらも折れた。

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店を出て私たちは装飾された多くの店を見渡しながら駅の方に歩いたーーー。
「ーーーあれ?駅に向かっているんじゃないんですか?」
駅に向かっていると思ったら、どうやら違うようで・・・
「駅だよ。正確には駅ビルの庭園。」
その先輩の言葉の通り、私たちは駅ビルの庭園に来た。
いくつかある庭園の一つだけど、可愛いお花たちが植えられていてそこに可愛くデコレーションされている。
ーーーお客さんが多いのだろうか、
庭園の中にはベンチがたくさん配置されていた。

自動販売機で飲み物を調達して、私たちは空いているベンチに座った。
「寒かったら言えよ、中に入るから。」
「ありがとうございます。」
しばらく沈黙が続いたーーー・・・。
でもそれではダメだと私は先輩に聞こえないように大きく深呼吸をした。
「突然ここまで押しかけてすいません。」
「いや・・・」
「話があって、どうしても伝えなきゃと思って。待てなくて来ちゃいました。」
「・・・この間の返事ってことか?」
「はい・・・。」
先輩は寄りかかっていた背中をピンとさせて私の話を聞く体制を取ってくれた。
こういうところも好きだなって思う。

「えっと・・・私の気持ちを言うと、私は今でも先輩のこと好きです。だからこの前、戻ってきて欲しいって言われたとき凄くすごく嬉しかったです。」
先輩は驚くように私のことを見た。
「だけど・・・!!私は凄く嫉妬深いし独占欲の塊の生き物です。それで高校時代は先輩に迷惑ばかりかけたのに、また戻ったら同じことを繰り返すのが不安で先輩と戻って過ごすのを正直ずっと悩んでいました。」
先輩はなにも言わず、ただ私の話を聞いてくれているーーー。
「でもどう考えても好きで、自分が身を引くことで他の女性に取られるのはもっと嫌で・・・。日本を離れていたこの三年半、先輩以上に好きになれる人も出来なかった。先輩が好きって言ってくれているのに逃したらダメな気がして・・・。」
「・・・つまり?」
先輩は前提は良いから結論だけを言って欲しい感じだった。
「ーーー先輩と戻ることに賭けてみようと思います。」
「・・・よろしく。」
先輩らしい淡白な答えが返って来たけど、それでも嬉しかった。
ーーーだって先輩が微笑を浮かべて恥ずかしそうにしていたのが見れたから。
「こちらこそよろしくお願いします。」
恥ずかしそうにする先輩を見て、私も急に恥ずかしさが増した。

「・・・先輩」
「なんだ?」
「毎日連絡取っても良いですか?」
「ーーーそれ、高校の時も聞いてたな(笑)」
スーツの上に乗る先輩の細長い指を見ながら私は笑った。
「そうですね、不安なんだと思います(笑)」
「・・・いつでもして来い、出れる約束は出来ないけど。」
「ありがとうございます。」
また沈黙ーーー・・・、でも嫌な沈黙じゃないから安心できる。

「そういえば、内定は断ったのか?」
「えっ・・・?」
「って、友達だったっけ?その友達・・・」
先輩もハッとしたように友達という口を合わせてくれた。
「はい、家族と話して内定を断る予定だって言っていました。ゆっくりと自分に合う仕事を見つけながら、それまではバイトで生活していくそうです。」
「ーーーうん。それでいいと思う。柊は好きなことをやってる時が一番いい顔しているよ。」
「あっ・・・ありがとうございます。」
もうめんどくさかったのか友達をごまかすことなく先輩は私に対して言った。
「ゆっくり探せよ。」
「・・・はい。ウソバレバレでしたね(笑)」
「大概、人は友達って話をする時は自分の話なんだよ。」
そう言って笑ってたーーー。
確かにそうだよね、っと思いながら私もつられて笑った。

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「さっ、そろそろ帰りましょうか!」
凄く遅い時間ではなかったけど、話すべきことは話したし私はベンチから立ち上がった。
「そうだな。」
「今日は金曜ですけどご実家ですか?自分のおうちですか?」
「ーーー明日、朝練があるから今日は自分の家だわ。来るか?」
「いやいや、とんでもございません!」
そんなーーー、復縁してすぐに先輩の家に上がれません。
「はは、冗談だよ(笑)柊はからかい甲斐がある(笑)」
また先輩が笑った、こういう笑顔を見ると私も嬉しくなる。
「もう・・・ほら、帰りますよ!」
私は不貞腐れた振りをしてプイっとそっぽを向いた。

「うわっ・・・」
その瞬間に先輩に腕を取られて抱きしめられた・・・。
正直何が起こってるのか分からなかったけど、久しぶりの先輩のぬくもりがすごくすごく嬉しくも幸せに感じた。
「柊・・・ありがとう。」
そして私の唇に軽いキスを落としたーーー・・・。
幸いにも周りはカップルだけ、私たちを変に思う人もいない。
だけど先輩は自分のしたことが突然羞恥を覚えたようで、
すぐに私から離れて手だけを繋いで駅まで歩いたーーーー。

たった数分、
駅までの数分だったけど・・・
手を繋いで横に歩けることが本当に本当に幸せだと思った。
ーーー先輩、
こちらこそありがとう、だよ。
そう思いながら私は自宅に戻り眠りについた。

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