【 君がいる場所 】#33. 先輩からの告白*

君がいる場所

#33.

嫌な上司ってどこの世界にもいるものなのかーーー。
先輩の怪我騒動から2ヶ月、
暑かったあの季節から今度はハロウィンの季節になろうとしている。
ーーーそんな私は今、就職先の上司のことで頭を抱えている。

スポンサーリンク

9月の初旬に顔合わせ的な飲み会があったーーー。
その時もお酒に手を付けられなかったことで一人の上司に目をつけられたんだと思う。
今の時代はお酒を飲めなければ社会人としてやっていけない。
顔が可愛いから枕営業するか?(笑)
ほら、こっちでお酌をしろとおしりを触られたりもした。
これが会社という社会では当たり前のことなのかな・・・。

そして今日もまた親睦会という名の飲み会があった。
ーーーまた苦手とした上司が来ていた。
見た目から年齢は40代で、役職も持っているんだと思う。
最初に説明していた気がするけど覚えていない。
ーーー同期も周りは男子だけで、私は場違いに就職をしたんだと今日痛感した。
女子だからって甘やかせると思うな。
お尻を触られたくらいで泣きそうになってんじゃねーよ。と違う先輩らしき人も言ってた。
ーーーそういう会社なのかなって悲しくなった。
そして王様ゲームで負けた4番の私と名前も知らない8番の先輩のキス攻撃。
ポッキー一つに対して少しずつ近づいてくる先輩の顔、
気持ち悪い・・・。
引き気味になる私を押す上司ーーー。
ここまでして社会人の一員になる必要があるの?
ーーー自然と涙があふれ、
私は自分からポッキーを折って逃げるように店を出た。

ドンッ!!!
ちょうど店に入る集団とぶつかって、その場に跳ね返って転んだわたしーーー。
「いったぁ・・・」
「大丈夫ですか・・・って柊?」
頭を抱え転んだ私を見て上から降って来た声ーーー。
「せん・・・ぱい?」
「悪い、大丈夫だった?」
「ーーーこちらこそすいませんでした。」
私は涙を見られないように、それだけ言って一礼して店を出ようとしたけど先輩に腕を掴まれたーーー。
えっ、と驚いて先輩を見た瞬間ーーー。
既に奥で席に座っている先輩らしき人たちが樹先輩を呼んだ。
「樹ーーー!こっち!!!」
「すいません、やっぱ今日はパスで!!柊、行くぞ。」
「えっ・・・」
私は先輩に腕を掴まれながらも後を付いて行くので必死だった。

そしてーーー、今は二人で喫茶店で向き合っている。
「・・・飲み会か何かだったのか?会社の?」
スーツ姿のあたしを見て先輩は何かを察したようだった。
「はい、親睦会的なものが多くて苦手なんですけど行くしかないですよね。」
「行きたくなかったら行かなくても良いんじゃねーの?会社に入ったら嫌でもあるんだし。」
「ですね・・・」
先輩みたいに強い人だったらそうなのかもしれないけど、
私はそうじゃないからなって半分諦めた。
「足はどうですか?治りましたか?」
「ーーーおかげさまで、あの時は来てくれてありがとうな。」
私は微笑を浮かべて窓から歩く人たちを眺めたーーー。
ハロウィンに装飾されている店内から窓越しに見える他のお店の装飾、
スーツ姿の笑い合う男女や、
私服の男女、高校生の姿も時間的にまだいた。
「・・・先輩。」
「なんだ?」
「お酒を飲めないって社会人になったら致命的ですか?」
「そんなことはないと思うけど?」
「ーーー営業は枕営業するのが当たり前の時代なんですか?」
「どうした、急に・・・」
「友達の話なんですけど、枕営業をしろって言われたりお尻を触られたり、王様ゲームでキスさせられそうになったり・・・」
先輩の顔が一瞬こわばったのが分かった。
「・・・したのか?」
「途中で逃げちゃったって言ってました(笑)」
自分じゃなくて友達の話ですよ、とも加えた。
それだけ言って私はまた窓の外に道歩く人々を眺めたーーー。

スポンサーリンク

「ーーーそんな会社辞めろよ。」
「えっ?」
外に向かってた視線を先輩に戻した。
「今の時代そんなパワハラの上司がいる方が珍しい。ーーー大学卒業したら働かなきゃダメなんて誰が決めたんだ?迷って迷って自分が好きな仕事が将来見つかればいい、ましてや女の子なんだからそれで良いんじゃないか?」
ーーー先輩のその言葉が何か優しく感じて、
心に染みて、私は大粒の涙を流した。
「・・・つ・・・伝えておきますね、友達に・・・」
ーーー先輩は友達の話じゃなくて私の話だと気が付いていたんだよね。
「ーーーおお。辛かったらいつでも頼って来いって、その子に伝えておけ。味方はたくさんいるって。」
「・・・ありがとうございます。」

「今日は・・・奢ってもらったり色々ありがとうございました。」
結局最後、先輩と夕食を共にした私は奢ってもらった。
オレが連れだしたようなもんだから、と。
それに加えて実家に帰る予定でいたからと、私の最寄り駅まで送ってくれた。
前に六本木で会った時におばあちゃんの家に住んでいるっていうのを覚えてくれていたみたいだ。
「ーーーああ。じゃ、また。」
私は先輩のその言葉を聞いて一礼しておばあちゃんの家の方に歩き出した。
ーーー会社のことはおばあちゃんにも相談しよう、そう決めて。

「柊!!!」
目をつぶり大きな深呼吸をしていると背後から自分を呼ぶ大きな声に振り返る。
もちろんその相手は先輩で、凄く真剣な眼差しでこっちを見てる。
「ーーー何か勘違いしてるようだけど、彼女いないから!柊と初めて再会した日は残業で遅くなった、デートと正樹が環ちゃんに言ったのはただの冗談だったと思う!」
意味が分からなくて私はまた戻って先輩の前に立った。
「どういうことですか?」
「ーーー柊と別れてから誰とも付き合ってない。」
「・・・里奈さんは?」
「久しぶりに聞いたよ、その名前(笑)彼女とは連絡先すら知らないよ。」
「・・・じゃあ私は何のために身を引いたんですか?」
私の言葉に目を見開いた樹先輩、私はハッとして口を押えた。
「どういうことだ?」
「・・・どう考えても里奈さんと先輩はお似合いで、よりを戻したいって彼女が言ってるならと身を引いたのに。」
「あの人は昔から見栄っ張りな人で、俺のことが好きで戻りたいと言ってたわけじゃないよ。付き合ってた3年だって、本当に付き合ってたのか疑問なくらい会ってないしお互いに興味なかったよ。そういう恋愛だったんだよ。」
「・・・そっか。教えてくれてありがとうございました。」
私は今度こそ歩き出そうと足を延ばした。

スポンサーリンク

「柊、俺はキミのことちゃんと好きだったよ。在校中は正直分からなかったけど、最後に会った空港でハッキリ分かった。人を好きになるってこんな苦しかったっけッてあの時思ったわ(笑)」
何で今言うかなぁ・・・。
涙腺が抑えられなくなっている自分がいる・・・。
「・・・ありがとうございます。」
「・・・今も柊が戻ってきてくれたらと思ってるよ。」
「えっ・・・」
私は先輩を見上げたーーー。
こんなに話す先輩は見たことないって思ってたけど、
恥ずかしそうに私に話す先輩も見たことない。
「この3年半、君のことを考えない日はなかったよ。」
「そんなーーー・・・わたしは・・・」
頭が付いて行かなかった。
先輩が私をきちんと好きで付き合ってくれていたことを話してくれてすごく嬉しかった。
でも・・・私を今でも好きでいてくれているって言葉が本当なのか寂しさを埋めようとしているだけなのか分からなかった。
ーーーだけどやっぱり戻って欲しいと言われたら好きな人だもん、嬉しい。
それでもすぐに答えを出せないのは先輩との過去の記憶が鮮明に残っているからなんだろうと思う。
「返事は今すぐじゃなくていい。考えたいことだってあるだろうし。31日のハロウィンパーティー行く予定でいるのか?」
ーーー31日のハロウィン当日、
卒業生の同窓会と題して高校でハロウィン仮装パーティーがある。
おばあちゃんが毎年楽しみにしているイベントだし、今年は初めてお兄ちゃんも従兄弟の豪くんも参加できるから参加しようと思ってた。
「ーーーはい。」
「その前日の金曜日の夜、駅で待ってるよ。」
「分かりましたーーー。」
「残業とかで遅れる場合は環ちゃんに・・・」
環ちゃんーーー、その言葉が3年半の空白を意味していて嫌だった。
友達だけど嫌だった。
「・・・メールします。」
「えっ・・・」
「携帯は変えたけど、私の携帯には先輩の連絡先入っています。変わっていないなら・・・」
「変わってない。」
「じゃあ後で連絡します。」
環を通して連絡をもらうより自分で連絡を取りたいと思った。
ーーー環ちゃんと聞くのが嫌だったから、
あれだけ拒否した連絡先を私はいとも簡単に許したんだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました