【 君がいる場所 】#32. 先輩のことが心配で・・・*

君がいる場所

#32.

季節は7月、
暑い日々の中で半袖の人やノースリーブの人が目立ち始めた。
大学で知り合った友人は海だったり花火大会だったりと学生最後の夏を謳歌している。
ーーーそんな私も今年は花火大火にに誘われて浴衣を新調しようと、
久しぶりに都内に足を運んだ。

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そこは若い子たちで賑わう渋谷ーーー。
昔は私もよく渋谷に来ていたけど、今は全く足を運ばなくなった。
ーーーこの数年で大幅に開拓されていて、右も左も全く分からない。
それでも友達と来るお買い物も楽しいけど、
1人でするお買い物もやっぱり私は大好きだなと感じる。

あまり遠くに行って迷子になるのも嫌だったので最初から目星をつけていたヒカリエにあるお店に直行、
ちょうど浴衣フェアがやっていたのでそこから一つ選んだ。
あまり見ない少し大人風の柄ーーーー。
紅色を主に、黒いお月さまの中にウサギがいる柄。
帯もゴールドに近いイエローで大人っぽくて普段の私の恰好からは考えられないけど、一目ぼれして購入した。

時計を見ればちょうどお昼の時間、
休みの日だということもあってどこもかしこも混雑してそうな感じだったから、
私は裏の路地に回って昔何度か行ったことあるポテト専門店に行った。
ーーーだけど残念ながら違うお店変わっていて落胆した。

「もしもし、環。どうかしたの?」
適当にお店を探そうかなと足を進めようとしたところにちょうど環からの着信を受けた。
今日、環は正樹先輩とバスケの試合を見に行くって言ってた。
だからこの時間に電話が来るのはないはずなんだけど、と不思議な気持ちで電話を取った。
「今!今・・・樹先輩の試合に来てて・・・先輩がケガして・・・」
「えっ!?」
けが!?樹先輩が?高校の時も一度も怪我なんて聞いていなかったからか驚いて携帯を落としそうになった。
「---今、担架で運ばれたところ。正樹が言うには大丈夫だろうとは言ってたけど、めちゃいたそうだったから・・・」
「病院は分かる?」
私の問いかけに隣にいる正樹先輩に確認してくれている。
「ーーー●●病院だろうって・・・一応、花には知らせて・・・」
「ありがとう!その病院、行ってみる!」
「もし何か分かったらメールしておくね!!」
立場的に行ったらダメかもしれないのに怪我だと聞いて、担架で運ばれたって聞いて私は行動せずにはいられなかった。
ーーー幸いにもその病院はここから30分程度で到着できる、
私は自分のお昼は諦めてそのまま駅に直行して電車に乗った。

これほどまでに電車の進みが遅いと感じた日はないーーー。
各駅に乗った私も問題があったけど、早く早くと気持ちが焦ってしまっている自分がいた。
病院に行った所で何もできないと思うけど、
大事に至らないことだけ確認したい、その気持ちが先走った。

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駅に到着してそのまま小走りで歩くーーー。
「ーーー花!」
ちょうどその時に、正樹先輩と環先輩も到着したようで無事に合流できた。
「・・・はぁはぁはぁ・・・」
少し走ったせいもあり息が荒くなり、少し深呼吸を繰り返して呼吸を整えた。
「大丈夫か・・・?」
「すいません、走ったから・・・。樹先輩は整形外科ですか?」
「ーーー多分な。」
私たち三人は病院の一番奥にある整形外科に向かった。

整形外科はこの日、おじいちゃんおばあちゃんが多かったーーー・・・。
基本的にリハビリに来ている人なのか、リハビリテーションの前で待つ人が多かったのが見えた。
「ーーーありがとうございました。」
辺りを見回していると扉が開く音と一緒に低いトーンの声が聞こえた。
ーーー絶対に聞き間違えない、すぐにわかる、先輩の声。
「先輩!」
私は診察室から出てきた先輩に駆け寄って咄嗟に抱き着いてしまった。
「えっ・・・柊?」
先輩は私がいること、そしてきっと抱き着いてしまったことに凄く驚いてた。
「すいません!足を怪我したって聞いて・・・」
私はすぐに先輩から離れたーーー。
「悪い、俺が連絡した。・・・それを聞いてすぐに駆け付けてくれたんだよ。」
正樹先輩が珍しく私のフォローに入ってくれたのは少し驚いた。
「ーーー心配かけて悪かった。」
「大丈夫なんですか?」
「ーーーああ。」
「大丈夫なら俺と環は帰るわ。ーーー柊さんと駅まで一緒に帰れよ。」
「えっ、私も帰ります!!」
「・・・送るよ、会計するから少し待ってて。」
久しぶりに見る先輩のジャージ姿にくぎ付けになってしまった私は、
環たちに一歩遅れを取り結局樹先輩と一緒にいることを選んだ。
ーーー違うよね、それは口実で。
本当は先輩と一緒にいたいと思ったからここに残ることを選んだの。

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先輩はすぐに病院から外に出てきた、
そして私が座るバス停の隣に座った。
「心配かけて悪かったな。」
「いえ・・・何事もないなら良かったです。」
「ーーー先週な。」
「えっ?」
「先週の練習中にねん挫したんだよな(笑)それが今日の試合でやっちまった。来週の試合にはでらんねーな(笑)」
真顔で俯きながら話すから表情が分からないけど悔しいのかなーーー。
「・・・また次の試合に出れます・・・」
「だな(笑)担架で運ばれるときは、やべぇな骨折だなって諦めたわ(笑)」
ーーーそういう意味ではよかったのかな、と思って一安心した。

ずっとバス停に座っていても迷惑なので、私たちは駅まで歩くことにした。
「ーーーごめん。チームに報告戻らないとダメだから。」
「タクシーで戻ってくださいね?足は大事ですよ(笑)」
電車でチームに戻ろうとする先輩に私はタクシー乗り場まで半強制的に並ばせた。
「じゃ・・・」
タクシーに乗る先輩を見送って、先輩は次はないことを意味していたのか、また、とは言わずにタクシーは発車した。
ーーー見送りながら思った、
自分も大胆に行動できるんだなって。
めちゃめちゃまだ好きじゃないって。
それと同時に先輩にとってはもう私は後輩でも元カノでも何でもないのかもしれないなって思った。

ーーー会える距離にいるのに会えない関係って苦しいなって思った。
留学しても好きな気持ちを諦めることは出来なかったけど、
物理的に会えない距離の方がまだ考える時間が少なかったように感じた。
ーーーそんな自分の気持ちが切なくて、
久しぶりに先輩を想い涙を流した。

 

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