【 君がいる場所 】#31. 先輩との再会*

君がいる場所

#31.

時計を見れば22時過ぎ、
明日も仕事がある正樹先輩や歩先輩ーーー。
そろそろお開きにしようか、という話で最後の注文をした。

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「柊さんはお酒全く飲まないの?」
私は居酒屋に来てからずっとウーロン茶一本で来ている、
その分トイレも近くてトイレばっかり行っている気がする。
「そうなんですよ、お酒が入るとアレルギー反応を起こしてしまうんです。」
「何のアレルギー?」
「分からないんですけど、体に合わないんだと思います。」
ーーー嘘じゃないよ、本当だよ。
昔の事故で私は心臓に手術をしたと記憶にない話を祖母から聞かされた。
そのせいでアルコールは摂取しすぎると負担がかかるという注意点や、
激しい運動も気を付けて欲しいという注意も昔されたことがある。
ーーー普通に生活する分には健康体そのものなのになぁ。
自分で招いた事故だし、そこは守らないとダメな気がして守ってきている。
「歩先輩は強いんですね(笑)全然酔っぱらっている感じがしないっす。」
つかさず須永君が仲に入ってくる、彼はこうやって人の中に入るのが上手で、
そこから柔軟性の良さも生まれているんだと思う。

ここからはなぜか恋愛の話になった。
まずは須永君と双葉の話ーーー。
この二人は高校3年間ずっと同じクラスだったし、大学も同じになった・・・。
それに運命を感じたのは去年のことらしい、
気が付くの遅いでしょってみんなに突っ込まれていた。
次のクリスマスで1年を迎える本当に初々しいカップルだった。
夏休みには二人で旅行に行く予定もあってとても順調そうだ。
その次は歩先輩だけど、彼は彼女どころか好きな相手もいなく出会いもないと嘆いていてその場を笑わせた。
環と正樹先輩の出会いも同じ大学で、同じ体育館で練習をしていたことがきっかけだったらしい。
最初は見たことある顔だなって思っていたけど、
毎日顔を合わせて休憩時間が同じになると話す機会が増えて先輩から告白したんだって。
なんだかこの正樹先輩がって思うと少し微笑ましくて羨ましくも感じた。
ーーー最後は私だけど、私には話すような恋愛話は何もない。

「カナダやアメリカで言い寄られたりしなかった?日本人の女性はモテるって聞くけど。」
双葉がすごい興味津々、
私の恋愛うんぬんよりも外国人に興味があるようだった。
「日本人の女性と外国人男性が付き合っているのはよく見たよ、でもそれが続くかどうかはまた話が別問題みたいだよ。」
「ーーー柊さんは誰か好きな人いなかったの?」
歩先輩はなにも知らないから素朴な疑問として投げかけてくる。
「わたしは・・・」
「あいつのこと忘れられなかったとか?・・・今でも好きだったりする?」
私の答えを聞く前に正樹先輩が私に問いかけた、めちゃくちゃ真剣な眼差しで。
「向こうで彼氏を作らなかったことと先輩のこととは関係ありません。」
ーーー私は言い切った、だってなんか悔しくて。
「じゃあ、今あいつに良い人がいても喜んでおめでとうって言える?」
「正樹!もういいじゃん・・・当事者じゃないんだし。」
環は正樹先輩を止めているけど、
正樹先輩は興味本位で私に聞いているのではない気がする。
「ーーーそれは・・・」
私は答えに困った、
もし樹先輩に付き合っている人がいて笑って言えるのだろうか、と自問自答した。
心の底からはきっと言えないんだと思う。
だって先輩が今日はデートで来ないって聞いた時点で、
胸が張り裂けそうなくらいズキンと痛んだんだから・・・。

「悪い!残業が長引いて遅くなった・・・!!!」
そんな微妙な空気の中、突然現れた長身の男性。
体がビクンと震えて、その存在に驚いた・・・。
ーーー振り向かなくても頭上から聞こえる声のトーンで誰か分かる。
まだこんなに先輩のこと覚えているじゃんって苦笑いがこぼれた。
ーーーまだこんなに先輩のこと好きなんじゃん、って涙がこぼれた。
「えっ・・・ひいら・・・ぎ?」
頭上から聞こえる先輩の驚く声も、どんな表情をしているかも想像がつく。
「ーーー日本に就職が決まったらしいよ。」
気まずい空気を正樹先輩が説明するようになんで日本にいていつ帰国したかなど説明をした。
「元気だったか?」
「はい、先輩はお元気でしたか?」
「ーーーああ」
会いたかったのに会うと緊張して話せない、
何を話したら良いのかも分からなくてここだけ気まずい空気が流れているように感じる。
「ーーーわたし、お先に失礼しますね。・・・今日は皆さんに久しぶりに会えて嬉しかったです。突然参加させてもらったのに楽しい時間を過ごさせていただいてありがとうございました。」
金額が分からないので適当にお金を置いて、お店を出た。

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ダメだーーー・・・・
心臓がドクンドクンとうるさい。
3年半ぶりに会う先輩はなにも変わってなくて、
ううん。
むしろ前よりもかっこよくなってて大人っぽくなってたーーー。
制服姿も似合っていたけどスーツも似合う、そう思った。
「ーーーまだこんなに好きなんだ・・・」
先輩に会えば自分の気持ちがはっきりすると思ったから少し会いたかった、
でも彼女がいる匂いを環に聞かされてショックを受けたり、
先輩が突然現れたら何を話したら良いのか分からなくなったり・・・。
まだ全然好きじゃんって思った。
ーーー3年半、諦められていないのってどうなのって正直自分でも引いてしまった。

その日は、先輩に会えたことで興奮したのかあまり寝付けなかった。

次の日、私は環と夜ご飯を食べに行く約束をした。
待てど待てど環は来ない、連絡をしようと携帯を取り出したーーー。
「・・・悪い、遅くなった。」
来た相手は連絡をしようとした環ではなくて、昨日再会したばかりの樹先輩。
「えっ・・・?」
「ゴメン、昨日の夜、環ちゃんに俺が頼んだ。」
「なんで・・・」
「ーーー柊とゆっくり話をしたかったから。」
そんなことを言われたら帰るにも帰れないじゃないーーー、
私は先輩の言葉に甘えてオムライスを頼んだ。
先輩もがっつりステーキを頼んでいた。

今思えば・・・
こうして先輩と外で外食するのは初めてな気がする。
「今は一人暮らしされているんですか?」
「ーーーそう。実家にも週末は帰っているけど、平日は会社から近いところに住まいを借りて住んでいるよ。柊は?」
「私は・・・おばあちゃんの家にお世話になっています。」
先輩は少し微笑んで私の話を聞いていた。
「就職先は決まったのか?」
「ーーー一応。でも向いてないような気もして不安で仕方ないです。」
「はじめはみんなそうだろうな、やってみて合わないなら転職って軽い気持ちでやればいいと思うよ。」
慰めてくれているみたいだけど、
慰め方が社会人としてどうなのという内容で笑えた。

私たちはレストランを出て場所を変えたーーー。
ちょうど暑くなる前の梅雨の季節で、ちょうど梅雨休みの夜の涼しい時間帯だったから。
六本木ヒルズの中にあるアイスを食べながらベンチに座った。
「アイスなんて何年ぶりだ・・・」
先輩は昔を思い出すように真剣な眼差しをしている。
「私はよく食べます、美味しいですもん。自分でも作りますよ。」
「アイスって作れるのか?」
「そりゃ、作る人がいるから売れるんですよ(笑)」
「そうだな(笑)」

少しの楽しい時間、そして先輩と二人きりだと沈黙も怖くない。
「そういや、ナツが会いたがってたぞ(笑)」
「えぇぇ、日本に帰国してすぐに会ったのに(笑)」
ナツさんと蒼太さんは何かと連絡を取っては会っている。
先輩の幼馴染だからどうなのかなって思ったけど、向こうが全く気にしないで接してくれるから私も安心して接してる。
「ーーー俺はナツにも蒼太にも柊が日本にいること知らされていなかったけど。」
「口止めはしていませんよ?」
「疑ってねえよ(笑)」

アイスも食べ終わり、私たちはちょっと散策をすることにした。
横に並んで歩く樹先輩は久しぶりだーーー。
「ーーー先輩。」
私はこの際だから、あの時の謝罪をしようと思った。
「ん?」
「・・・電話にもメールにも応答しないですいませんでした。」
私は歩きながらもギュッと自分の拳を握った。
「俺も自分の気持ちに気が付くのが遅すぎた。ーーー悪かった。」
それから先輩は少し自分の過去の恋愛について話してくれた。
自分から好きという感情をあまり持ったことがなくて、
好きという感情がどういうものか分からなかったと。
私と空港で分かれて初めてその感情に気が付いた、と。
「なんで今言うかなぁ・・・好きとか、そういうのあの時言って欲しかったです(笑)」
「・・・だな。」
「でも私の片思いだけじゃなかった、それが分かっただけでも収穫って思うようにしておきますね(笑)」

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結局私たちは22時過ぎまで一緒にいた。
特別なことを話すわけでもなく、やっぱり先輩の隣は心地良いとさえも思った。
ーーーでもきっと先輩の気持ちが私に戻ることはないんだろう、とも思った。
私を見る視線も、
私に話す態度も・・・
もうあの頃とは違ったから。
まるで後輩に話しているようだったから、
今は何とも思われていないと確証を持つ以外出来なかった。
ーーー諦めよう、諦めよう。
何度もそう思てここまで来たけど出来なかった。
でも先輩は前に進んでるじゃない。
私も進まなきゃーーー。

「遅くまで悪かったな・・・」
「いえ。楽しかったです。」
「ーーー柊、連絡先を聞いても良いか?たまに会って話したいと思ってる。」
私は微笑を浮かべて首を横に振った。
「彼女がいるって聞きました。ーーー彼女を大切にしてあげてください。泣かしたらダメですよ(笑)」
「は?」
「・・・今日は楽しかったです、ありがとうございました。」
私はそのまま改札の中に進んだ。
そして中から先輩に笑顔で大きく手を振った。

進もう、私も・・・。
うん、自然と進めるようになろう。
諦めようと思わないで良い、
いつか思い出に出来るまで焦らないで待とうと決めた。

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