【 君がいる場所 】#30. みんなとの再会*

君がいる場所

#30.

結局ーーー、
私はナツさんや環がやりたいことを見つけたように、
簡単には自分のやりたいことが見つからず、
日本に帰国することを諦め、カナダからアメリカに留学する形を取った。
ーーーその間、一度も先輩と連絡を取ることも日本に一時帰国することもしなかった。

スポンサーリンク

最終的に私が日本に戻ったのは3年半後、
日本で言う大学4年の学年に上がる寸前の3月のことだった。
海外での就職難はよく耳にする、
それに私も海外に永住を望んでいるわけじゃないし、
祖母のことも気になっているーーー。
だから就職は絶対に日本って決めていたから、
遅いかもしれないけど4年生の今からでも受け入れてくれる会社はあるはずだと思ってこの時期を選んだ。

就職活動は決して安易なものではなかった。
私はアメリカの大学でMedical Careを専攻していた。
それは樹先輩に出会ったことで選手として支えることは出来ないけど、
他の形で支えられる人になりたいと思ったことがきっかけだった。
そう思えたのは樹先輩に出会わなかったらなかったことだから意味はあったと思いたい。

先輩と空港で別れを決めてから数えきれないほど受けた着信やメールに応答することも出来なかった。
もし応答してしまったら結局同じことを繰り返してしまうと思ったから。
里奈さんと樹先輩がどうなったのか分からなかったけど、
あの時の私は黒い感情しか持てなくて嫉妬ばかりだった。
そんな自分に嫌気がさしたのもある。
あの決別から数年した今、
確かに先輩を思い出すことは減った、でもゼロじゃない。
これが恋心と言われたら分からないけど、
彼以上に好きになる人も出来なかった。
そういう意味ではまだ先輩に恋してるんだと思う。
思い出は美化されるからそれに浸っているだけかもしれない。
それと同時に自分の諦めの悪さにも笑えるとも思う。
でもそれだけ長く人を好きになれたこと、
それだけは誇りに思いたい。
きっと一生に一あるかないかの本気の恋だと思うから。

ーーーいつか先輩に会えるかもしれない、
きっと私はそんな淡い期待をこめてMedical Careと言う専攻をしたんだと思う。

就職活動はなかなか進みが悪かった・・・
エントリーシートだけで落とされることもあるし、
それは文面だけで自分が否定されているようにも思えた。
まるで存在意義を否定されているみたいで、
対面よりもどん底に落とされた気分になった。

何社受けただろう・・・
40社まではカウントしていたけど馬鹿らしくなってカウントしなくなった。
そしたら・・・
なぜか次に進むことができて、最終面接まで漕ぎ着けた。
最終面接の圧迫面接に遭遇してしまったら自分の意見を言うのが苦手な自分としては何も言えなくて落とされることが多かった。
合わなかっただけ、就職活動をしていくうちに自分の心も少しずつ社会に対応して強くなっていった気がした。

スポンサーリンク

最終的に私が勝ち取った会社はASPECと言う会社、
サプリ世代の今、
スポーツ選手だけではなくサプリを必要としている人たちの意見を聞きながらどう言ったサプリが良いのか提案したり開発する会社だった。
正直言えば自分に合っているのか分からないけど、
やるしかない、そう思った。

「・・・柊?」
「えっ・・・はな!?」
季節は夏を迎えようとしている頃、
私はよく知る人たちに声をかけられた。
「・・・双葉?と須永くんも・・・?」
「えっ、どうしてここにいるの!?アメリカにいるんじゃなかったの?!」
「あっ、帰国してここの大学に編入したの。双葉たちもここの学生なの?」
「ーーーそう、俺たちもここに通ってて・・・」
「そっか・・・」
変わらない双葉と須永くんの姿に少し懐かしさもありホッとしている自分がいる。
それから少しだけ立ち話をして、今2人が付き合っていることも報告してくれた。
付き合ってどのくらいまでは聞かなかったけど何だか初々しくて私まで嬉しくなった。
「環とは連絡取ってるの??」
「ーーー大学の時、携帯を持ってなくてパソコンで時々メールしてて日本に帰る前に電話で話したよ。まだ携帯買ったのも先週の話で環には連絡できていないんだけど・・・」
「えっ?先週帰国したの?」
「いや、4月には帰国していたんだけど携帯の必要性がなかったから買わなくてやっと先週買った(笑)だからまだ環にも連絡してなくて・・・」
自分の行動力のなさに笑えるけど、こうして会えたから良いやと思ってる自分もいる。
「環とは連絡取ってて何で私とは連絡・・・」
双葉は少し不服そうだった。
「ごめんね。連絡すれば良かったよね!」
私は申し訳なさそうに、でも笑顔を添えていった。
「・・・いいよ。でも、今連絡先教えて?私だって花が突然旅立って寂しかったしずっと会いたかったし・・・」
「もちろん!たくさん遊んでよ(笑)」
不貞腐れながらも私と連絡先を交換してくれた双葉を可愛いと思った。
そんな私たちの光景を須永くんは微笑んでいて、愛されているなって思って少し羨ましくもあった。

「・・・先輩とは連絡取ってるの?」
「ふたばっ!」
連絡先交換も終わって双葉は直球に私に聞いてきた、
須永くんは先輩から何かを聞いているのか少し気まずそうに双葉を止めた。
「ううん。全く連絡取ってないよ。元気にしてる・・・?」
「ーーー今日、これからみんなで集まる予定。来る?」
さっきまで遠慮していた須永くん、
諦めたのか今度は須永くんからの突然のお誘いに驚いた私。
「いやいやいや・・・それはちょっと・・・」
「双葉も環も来るよ、正樹先輩も来るし。樹先輩だけじゃないよ(笑)」
無理無理無理、さすがに心の準備が・・・。

スポンサーリンク

結局2人の強いお誘いを断りきれなかった私、
私と学校で会ったことを環に連絡した須永くん。
駅前のカフェに移動していると環が血相を抱えて走ってカフェに入ってきた。
「花!会いたかったー!元気だった?!また小さくなった!?花だー!本物だー!」
私を見ては突然抱きしめ、そして泣き出した。
なんと喜怒哀楽の激しい人だ(笑)
「結構前に帰国していたんだけど、携帯もなかったし、すぐに連絡しなくてごめんね?」
「ほんとよ!なにこのサプライズ、心臓に悪いから!」
環の感激が私も嬉しくてもらい泣きをする。
それに釣られて双葉も泣き始め、
須永くんはオレが泣かしてるみたいと苦笑い。
「ーーーもう正樹先輩たち、居酒屋に着いてるってよ。」
すぐにメール受信した環の携帯、正樹先輩からだった。
高校時代に特に接点がなかった2人、
偶然にも同じ大学に入り高校の顔見知りだったこともあって少しずつ距離を縮め既に交際2年になるのはアメリカにいる時に環からメールで聞いていた。
でもなんだか目の前で見ていると不思議で仕方ない。
「ーーーじゃあ俺たちも向かうか。」
須永くんと双葉は立ち上がった。
「・・・ヤバい緊張して来た。」
「先輩に会うから?」
「ーーーうん。」
「大丈夫、先輩来ないって言ってたよ。彼女とデートだってさ(笑)」
えっ、と少し驚いた。
ーーーいや、あれだけの人だもんね。
彼女の1人いてもおかしくはないのか。
「・・・そっか(笑)」
先輩がデートで来ないと聞いてホッとしていた自分と、
大きなショックを受けている自分の二つの感情が心の中に残った。

当たり前だよねーーー・・・。
3年半の空白があったら恋人がいてもおかしくない。
でも私だけを・・・なんて思った私は欲張りだったのかな。
「・・・ショック?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」
「本当に素直じゃないね、君は(笑)」
須永くんが私に笑いかけたーーー。
「行こうか。」
「ーーーうん。」
私たちは正樹先輩たちがいる居酒屋に向かった。

居酒屋はタバコの匂いとガヤガヤしているイメージが強い。
でも今の居酒屋は私の想像を覆し、
タバコの匂いもガヤガヤもなかった。
個室に案内された私たち、靴を脱いで慣れたようにズカズカと入っていく環と須永くんと双葉。
きっと頻繁にこうして集まっているんだろうーーー。
須永くんは双葉と付き合ってて、
環は正樹先輩と付き合ってる。
だから来て当たり前の関係なんだろうけど、
私はーーー?
ただの顔見知りってだけで本当に来て良かったのかな。
突然変な不安に襲われたーーー・・・。

当たり前のように入っていく皆んなに対して個室の入り口で足を止めた私。
この気にする性格は相変わらず治らないなぁと苦笑いがこぼれた。
「花、おいでよ。」
そんな私を迎えに来た環はやっぱり優しい人だと思う。

そしてその場にいたみんなが私を見て固まった。
「えっ・・・柊さん?」
誰よりも目を丸くしてたのは正樹先輩だ。
「ご、ご無沙汰しております・・柊です。」
「知ってるわ!笑」
須永くんが突っ込んで笑いがその場に流れた。
「ーーー・・・樹なら来ないと思うけど、連絡してみるか。」
「い、良いんです!樹先輩に会いに来たわけじゃなくて流れでここにいるっていうか・・・」
会いたくないと言ったら嘘になるけど、
デートの邪魔したら悪いと思う自分も心のどこかにいた。
「とりあえず座ったら?疲れるでしょ笑」
「ありがとうございます。」
正樹先輩の言葉に甘えて、私は環の隣に座った。

その場には正樹先輩の他に、同じく一つ上のバスケ部の先輩だった歩先輩も同席していてカナダやアメリカのことを色々と聞かれた。
ーーーみんなでカナダに来てくれた時、歩先輩だけ来れなかったから。
それに海外での生活に少し憧れがあるみたいな感じだった。

意外と話が盛り上がり、
早めに退散する予定だった私は、
最後の最後まで参加させてもらった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました