【 君がいる場所 】#29. 気がつくのに遅すぎた気持ち*

君がいる場所

#29. – Itsuki Side –

珍しく蒼太が部活に遅刻してきた。
お調子者で基本的には時間にルーズな友達だけど、
幼馴染の中で誰よりもバスケを得意としバスケにだけは真面目に取り組んで来た蒼太が遅刻して来たから正直驚いた。

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「ーーー花ちゃん、日本に帰ってきてるよ。」
ウォーミングアップのランニング中、蒼太は俺の横に並んで話しかけて来た。
「・・・会ったのか?」
「会ったも何も、俺らの学校にいたよ。ーーー多分、お前に会いにきたんだと思うけど。」
いや、もし会いに来るなら連絡のひとつ来てもおかしくはないと思うけど、無だ。
「ーーー後で連絡して・・・」
「このまま空港に行ってカナダに戻るって言ってたよ。樹、それで良いのか?樹も花ちゃんも自分の気持ちから逃げて、思い合ってるのにすれ違ってばかりじゃんか。それで良いのか?」
蒼太は腑に落ちないような悔しい表情をしていたーーー。

「やる気がないなら帰れ!」
会話に夢中になっていつの間にか立ち止まっていた俺たちは3年の先輩に怒鳴られた。
「ーーー行けよ。」
「無理だろ(笑)」
「・・・部活は後から話せば何とかなる、だけど花ちゃんは後数時間後には飛行機なんだよ!」
蒼太がなぜこんなに怒っているのか理解できなかったけど、
俺は言葉に甘えてジャージのまま体育館を後にして急いで羽田空港に向かった。
ーーー柊は成田は使わない、何となくそう確信していたから。

羽田に到着して俺は彼女に電話をかけたーーー。
二度、三度かけても応答がなく留守番電話につながる・・・。
もう飛行機に乗ってしまったのだろうか、
そしたら電波の届かない場所の機械音が流れるはずだと俺は疑心だった。

「ーーーもしもし。」
そして4度目の正直で、やっと彼女に繋がった・・・。
「柊か!?今、どこ?!」
俺は出発ロビーを見渡しながらも小走りで彼女を探し、同時に通話をした。
「・・・」
「今、どこ?!」
「・・・空港です。今日、カナダに帰るんです・・・」
「何で日本に帰ってきてること教えてくれなかった?」
「だって・・・私たちは先輩と後輩で、もう何の関係もないじゃないですか。」
彼女の言ってることは正しいーーー。
「俺に会いに大学に来たんじゃないのか?」
「・・・会いたいとは思ったけど会いに行ったと言うのは大袈裟な表現になります。先輩いるかな、と軽い気持ちで行きました。・・・里奈さんと同じ大学だったんですね。」
「・・・あぁ、同じ大学というか・・・」
「彼女がいたから先輩もその大学に決めたんですか?」
「違うよ。バスケが強いし、蒼太と一緒にバスケができると思ったって前に話したよな?」
「ーーー先輩と里奈さんを体育館で見かけた時、すごくお似合いだなって思いましたよ。」
「だから・・・今どこで話してる?!」
その時、電話越しの向こうから搭乗ゲートに進むように促すアナウンスが聞こえた。
俺の耳にも同時に聞こえるそのアナウンス、彼女がまだ出発ロビーのどこかにいることを確信した。

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「柊!」
アナウンスの方角へ進み、俺は彼女を見つけた。
荷物検査の死角になる場所に小さくしゃがみながら電話している彼女の姿を。
俺の声を聞いた彼女はすぐに立ち上がって逃げた・・・。
足は遅いのになぜかいつも逃げようとする、
だけど以前に比べたら逃げる脚も速くなった、本当に足が治ったんだと俺も嬉しく感じた。
「離してください!!」
俺は逃げる彼女をがしっと掴んで自分の胸の中におさめたーーー。

いろんな人が見ているーーー、
俺たちを見て通り過ぎて行く。
分かってる、目立ったことをしてしまったのは。
「ーーー離してください。わたし、もう行かないと・・・」
柊は俺の腕の中に埋もれながらも冷静に言った。
ハッとした俺はすぐにその手を離した。
「ーーー一つだけ言わせてほしい。里奈・・元カノとは確かに同じ大学だしマネージャーと部員という立場であるから接点は多いけど、何の関係もない。それに・・・」
「先輩、さっきは取り乱してすいませんでした。でももう大丈夫ですよ?そんな弁解、私にする必要ないじゃないですか。」
「つまり?」
「私たちは今、ただの先輩と後輩です(笑)私が嫉妬するのもお門違いだし、先輩が私に説明するのも間違ってるんです(笑)すいませんでした。」
彼女は俺の前をスッと抜けて、搭乗ゲートの方に荷物を持って向かった。
「柊!」
「わたし、行かないと・・・もう先輩と私は住んでる環境が違うんです。先輩の活躍、願っています。ーーーお元気で、さようなら。」
彼女は涙を堪えた笑顔で俺に手を振って、
そのまま振り向くこともせずに荷物検査を進み搭乗ゲートへと進んだ。

・・・今更自分の気持ちに気がつくなんて、
俺も手遅れだと思った。
はは・・
彼女のことこんなにも好きだったことに今気づくなんて笑えるーーー。

サヨナラ、そう言った彼女の言葉を噛み締めた。
高校時代に別れた時も、
カナダに遊びに行った時も彼女の最後の言葉は、
またねだった。
ーーーさよなら、と言われた言葉が衝撃すぎてもう2度と会えない、
そんな気がした。

俺は何度も彼女に電話した、
だけどその電話が繋がることはなかった。

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