【 君がいる場所 】#28. お似合いの二人*

君がいる場所

#28.

突然帰国を決めてしまったものだったから滞在させてもらうおばあちゃんの家ーーー、
つまり葵おばさんは色んな支度で大変だったと思う。

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「突然帰ってきてゴメンね。」
「いつでも帰ってらっしゃいって言ってるでしょ(笑)それに進路先を自分の目で見ることは凄く大切なことよ。」
母が亡くなって祖母に引き取られて育った私ーーー、
話によれば父と母は祖父母の反対を押し切って交際を続けてお兄ちゃんを出産、そして結婚をした。
どこまでが本当の話かは分からないけど、
樹さんの家で見せてもらい話を聞かせてもらった時に本当なのかもしれないと私は悟った。
そんな両親から生まれたお兄ちゃんと私を自分の子供と同等に育ててくれている葵おばちゃんには頭が上がらない。
いくら母の妹さんとはいえ、
色々思うことはあったはずなのに・・・ーーー。
本当に感謝以外の言葉が見つからない。
そしてさらに今夜は私の大好物のオムライスを作ってくれるーー・・・。
「ありがとう。」
「長旅で疲れたと思うし、夕飯までお風呂に入ったりゆっくりしてね。」
お言葉に甘えて私は自分の部屋に移動したーーー。
高校に入ってから一人暮らしを始めた私、
それまでは祖母やおばさんの家族と一緒にここに暮らし、この部屋を使ってた。
誰かに使わせるわけでもお客様用部屋にするわけでもなく、
元の状態で綺麗に掃除されているこの状態を残し続けてくれていることに葵おばさんの愛を感じた。

次の日は少しの時差ボケの関係で昼前に起きたーーー。
ハッと目が覚めた時には時すでに遅くて昼を回る頃で焦った私はリビングに顔を出したけど、
朝食だけ用意されていて誰も家にはいなかった。
美味しい久しぶりのおにぎりを1つ加えて、優しい味に涙が出そうになる。
昨日のオムライスも同じ・・・
おばさんのご飯には愛情がたっぷり入っていて、とても優しい味がする。
だから涙腺が弱くなるのだ。

私は両親や祖父が並ぶ仏壇に手を合わせて家を出た。
飛行機の中で目星の大学はいくつか目を付けた。
あとは図書館に寄ってまだ調べ切れていないものを調べようと思った。

まず私が目指すのは祖母の家から片道1時間のACU大学、
ここは帰国子女が多い大学でも有名で、
授業もすべて英語で行われると言われている。
実際に見に行ってみると確かに国際色豊かな人たちが多くカフェテリアに存在し、
まるで日本じゃないような異文化が映し出されている。
見た感じ、日本人が少ないようにも感じた。
次に目指したのは都内にある**国際大学。
ここも国際大学と付くだけあって留学生も多ければ英語や国際情勢に関する授業が多いとのこと。
ただあくまでも英語にかかわる学部であって、ACUのように授業が行われていたり帰国子女が多いということはなさそうだった。
そしてここは大学の敷地が非常に広く、
大学内も専用バスが出ているほどだった。
ーーー初日はこんなものだった。

次の日は朝早く起きてまずはネットカフェに行き、
通える範囲内での大学を探したーーー。
ここで留学していることを少しだけ後悔した、
だってもし日本の高校に通っていたらきっと学校の先生が親身になって相談に乗ってくれるはず。
でも残念ながら私の今の高校の先生は海外の大学しか知らないから自力で調べる以外手段がなかった。
午前中は大学に関しても、授業料や大学に関するありとあらゆることを調べた。
そして2日目も動いたのは午後からだった。
でもまだまだ思うような大学には出会えていないーーー。
といよりも自分は大学で何を学びたいのか、どんな大学に行きたいのか、それが明確にされていないから何も決められないんだと思った。

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結局、都内7個の大学を見て回ったけど興味がある大学はあっても絶対に行きたいと思えるような大学は見つからなかった。
ーーー最後の夜、葵おばさんとおばあちゃんは私を元気づけるために焼き肉に連れて行ってくれた。
葵おばさんも大学進路で悩み、親を困らせた過去があると話してくれた。
私と同じで行きたい大学もやりたいことも見つからなかった、
だから就職しようとしていたけどそれだけは祖父母に反対されたんだって。
だからやめる覚悟で短大に入学したら、そこで出会った友達が楽しすぎて結局卒業まで在学したと。
だから思い悩む必要なんかないと。
どこか適当に入ってもそこがもしかしたら合っているかもしれないし、
入ってみないと分からないこともあると教えてくれた。

最終日の今日は午後の飛行機ーーー。
葵おばさんも働いているこの家は夜になるまで誰もいない。
だから昨日のうちに送別をしてくれたし、ちゃっかりおばあちゃんからお小遣いももらった。
ーーー私は家にいても暇なので数泊分の小さなスーツケースを手にして家を出た。
早めに空港に行って飛行機でも見ていようかと思った。
だけどふと思った・・・。
行かないにしても先輩の大学を見てみたいと、
もし偶然に会えたとしても明確な理由があるから怪しまれないと思った。

思い立ったら行動は早いーーー・・・
電車を2つ乗り継いで約1時間で到着、
そこから山道を登るのが何よりも辛いけどその先にゴールがあると思えばなんともない。
足が・・・
丈夫になったからこそ出来る、凄く自分が誇らしく感じた。

先輩の大学に到着して案内図を確認する。
ここのM大学もマンモス校だけあって凄く広い、
だけどその分、学部も多い。
文学部・英文科学部・国際交流学部・国際情報学部・教育学部・スポーツ科学部・環境学部・・と覚えきれないほどの学部がたくさんあった。
この中で興味があるのは英文学部と国際交流学部、いくら国際と言えど情報には疎いから無理だ。
私は地図を確認して少しだけお邪魔させてもらうように警備員の人に大学見学であることと来客札をもらった。
ーーー幸いにも夏休み中で人が少ないこともあり学部内をゆっくり見ることが出来た。
教室に入ると不法侵入になるので学部の掲示板だったり、カフェだったり、数名いる学生さんを眺めたり。
雰囲気はつかめたと思うし、
ほんの数個しか年齢も違わないのにみんなが大人っぽく見えて自分が幼く感じた。

二つの学部をハシゴして時計を確認、
まだ1時間は余裕がある。
学部を出て私は真夏の空を見上げ目をつぶるーーー。
夏は好きではないけど、空は好き・・・。
そして聞こえたトーン・トーンと響くバスケットボールの音。
忘れもしない先輩と一緒に行った時に耳に響いた音と同じような音だった。
夏休みだし先輩がいるはずもないけど、
私は音に導かれるままその方向へ向かった。

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やっぱりそこは体育館なんだろうーーー。
二階建ての大きな建物から聞こえるメーンという剣道の音、
そして下から響くバスケットボールの音。
二つの部活が分かれて練習しているのだと思った。
部外者の私が入って良い場所なのか凄く迷ったけど、
覗くだけと思ってそっと中を覗いた。

数名の身長の高い人たちがドリブルとでも言うのだろうかーーー、
ボールを打ちながら渡し合いをしている。
多分、樹先輩よりも年上の人たちだと思う。
辺りを見渡しても樹先輩の姿はなくてホッとする自分がいた。
ドリブルの音が懐かしくて気持ちよくて心地良くて私はしばらくこの音を聞いていた。

「ーーーお疲れ様っす」
しばらく傍観していると次々と現れる短パンにTシャツ姿の男性たち、
高校生とは違い体ががっちりしている。
そして樹先輩もそこに現れた、
今から練習なんだと私はハッとした。
「ほら、樹!タオルーーー」
「おぉ、サンキュ。ってなんでお前がここにいるんだよ(笑)」
「あはは!(笑)」
ーーー里奈さん・・・
樹先輩の元カノが先輩の横に並んで二人楽しそうに体育館の入り口から樹先輩の先輩たちがいる方へ歩いて来てる。
やばい、泣きそうーーー・・・
だって凄く楽しそうなんだもん。
何あのお似合いカップル、
見せつけられた気がした。

ーーードンーーー
「す、すいません!」
体育館を逃げるようにして私は飛び出し、
スーツケースを手にして先輩の大学を出ようとしたら走ってきた人にぶつかって転んだ。
でも咄嗟に私は自分から謝罪を申し出た。
「いえ・・・こちらこそ急いでた・・って花ちゃん?」
「えっ・・・蒼太さん?」
「ーーーどうして君がここに?あっ、樹に会いに?」
そのつもりもなくて、
ただ先輩の大学が見たいという理由だけだったんだけど。
自分にとって不利なものを見せつけられちゃったよ、とは言えなかった。
「・・・いえ。蒼太さんは今から部活ですか?」
「そう、遅刻確定(笑)」
「ーーーすいません!じゃ・・・」
私は蒼太さんが遅刻だと聞いて焦ってその場を去ろうと目の前を通り過ぎた。
「・・・もしかして日本に帰って来たの?」
「えっ・・・」
「そのスーツケース…その矢先で樹に会いに来たとか?」
「・・・逆です。今から向こうに戻るんです(笑)」
「えぇ、樹それ知ってるの?何も言ってなかったけど・・・」
「知らないと思いますよ。話してないですし、連絡も取ってないし・・・。元カノさんとやり直したんですかね(笑)凄くお似合いの二人見ちゃったらちょっとキツイです・・・」
私は今にも泣きだしそうだったのでそのままお辞儀をして蒼太さんの前を去った。
「花ちゃん!」
その言葉に振り返らなかったーーー。
だって絶対に泣いちゃうと思ったから。
樹先輩の友達の前で彼を理由にしては泣けない、
そう思ったから聞こえない振りをして先に進んだ。

結局道に迷いながら空港に到着したから時間ギリギリになっちゃった。
ーーーさてGateに移動しよう、
そう思った時、ちょうど携帯電話が鳴った。

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