【 君がいる場所 】#26. 過去の記憶*

君がいる場所

#26.

公園に到着すると既に先輩たちが到着していて、みんなでどこに行くかを相談しているのか観光ガイドを開いていた。

スポンサーリンク

「・・・須永君!」
誰も私に気が付くことなく集中しているので、私は須永君に近寄って声かけた。
「おぉ、久しぶり!元気そうだな(笑)」
「うん、ピンピン!ーーー先輩もお久しぶりです。」
私が突然現れたことに頭が付いていってないようで驚愕して硬直している樹先輩。
「・・・ああ」
「ふふ、驚きましたか?(笑)樹先輩を驚かせましょうって話し合ったんですよ(笑)」
私の暴露に正樹先輩と須永君が笑ってる。
「ーーー元気そうだな。」
「はい、とっても元気です。お元気でしたか?」
「・・・ああ」
樹先輩とは私がいなくなってから一度も連絡を取っていない。
連絡して来い、と屋上で言われたけどどんな内容を連絡したら良いのか分からなかった。
「どこか行きたいところはありますか?もしなければ私が決めても良いでしょうか?」
「・・・お願いします(笑)」
カナダにはたくさんの公園がある、かといって先輩たちを公園に連れて行ったところで楽しいわけがない。
私はJosephのチームが待つ公園へと歩いたーーー。

噴水が大きくて、公園から飛行機も間近に見える。
遊具の広場からは海も一望できる特殊な公園。
ーーーその奥でJosephは待っている。
「どこに向かっているんだ・・・?」
樹先輩は私が何も話さないで黙々と歩いているから問いかけてきた。
「会わせたい人がいるんです(笑)」
「えっ・・・」
「驚きました?(笑)恋人じゃないですよ、でも大切な人なので。」
先輩が何かを言う前に私に気が付いたJosephが駆け寄って来た。
” 花!”
” 集まった?”
” もちろん!行こう。”
Josephは自己紹介は後で、って言って奥にいるチームの方に向かった。

「どういうこと?」
「ーーー今から対抗試合が始まりますよ(笑)彼ら、私の高校のバスケしている子たちです(笑)甘く見ちゃだめですよ、めちゃうまいですから(笑)」
須永君の質問に対して私は茶化すように返事した。
「彼はJoseph、4歳のころからの長い付き合いです(笑)大切な幼馴染です(笑)」
私は樹先輩に伝えた。
「・・・ややこしい人だな、君は。」
「ふふ。」
JosephがNatalieの待つもとに駆け寄って、お互いにみんな自己紹介をした。
ーーー自己紹介は先輩たちも頑張って英語でやってくれた。
予想外のバスケ対抗試合が始まることに驚いてはいたけど、貴重な経験だからと喜んでくれた。
ーーーどちら側の応援にもつかない、
そう決めていたけどやっぱり先輩が点数を入れると胸元が騒いで嬉しかった。
そして私はバスケをしている先輩を好きになったんだ、
そのギャップを好きになったんだなと再確認した。

結論的に勝利したのはJosephのチーム。
まぁ時差ボケや疲れもあっただろうから先輩たちは本領発揮できていないだろう。
「く・・・悔しい!」
「もう一回勝負したい・・・」
歩先輩や須永君から聞こえる悔しい声。
「ーーー良い経験になった、ありがとう。」
樹先輩だけは負けを認めたようだった。

この後、隣接しているBBQ場でみんなで盛り上がろうという話になった。
ーーー正直明後日入院を控えている身としては帰りたい気持ちもあったけど、
やっぱり懐かしいメンバーとの時間を優先させた。
「ーーー柊に会いたいって須永が無理して頼んだんじゃないのか?」
私が噴水近くのベンチに座りながら食べていると、樹先輩が横に座った。
「いやいや。お誘いを受けたのはそうですけど、無理矢理でもないですし、正樹先輩からの提案って言ってましたよ?」
「正樹が?」
「ーーーそう聞きましたよ。」
「そっか。どちらにしても感謝している。柊がここにいなかったら異国の学生と交流試合することなんて絶対になかったからさ。」
「いいえ、全然。」
ーーー沈黙が続く、でも決して居心地が悪い沈黙ではなかった。

スポンサーリンク

「明日、キッズマーケットに行ってくる予定。おススメあるか?」
「キッズマーケット楽しいですよ。新鮮な野菜やフルーツにお魚、日本では見れない魚にギョッとなります(笑)」
「ーーー一緒に来るか?」
「いやいや・・・」
遠回しに誘ってくれているのは分かるんだけど、これ以上先輩に近づいてはダメな気もしていた。
「じゃあ・・・明日の夜、また会えないか?二人で・・・」
「会いたい気持ちはあるんですけど、明後日から入院することが決まってて準備しないと・・・」
そこで樹先輩が食べている手を止めて私を見た。
「入院?」
「あっ。元気ですよ?健康ですよ?でも足が悪いじゃないですか・・・留学を許してもらった条件が手術することだったんですね。成功すれば前みたいに歩けるみたいなんですけど、若干難しい手術らしくて・・・」
「ほんとそんな時に悪い・・・」
「私がみんなに会いたいと思ったからオッケーしたんです、気にしないでください。」
「ーーー手術はいつ?」
「それ聞いてどうするんですか?秘密にしておきますね(笑)」
樹先輩は微笑を浮かべた。
「せめて成功したかどうだったかだけ、連絡欲しい。連絡先は変わってないから・・・」
「ーーー分かりました。」
わたしも・・・消してない。残ってる。
何度も消そうとした連絡先、でも消せなかったんだ。

「今度会ったら伝えたいと思っていたことが一つあるんだ。」
樹先輩は突然切り出した・・・。
「何ですか?」
「最後に屋上で君が俺に問いかけた質問・・・」
覚えているよ、少しでも私のこと好きでしたか?って聞いたんだよね。
「覚えていますよ。それがどうかしましたか?」
「ーーーあの時は分からなかった。君を好きだったのか。そうじゃなかったのか。でも君がいなくなって実感した。ちゃんと君に事を好きだった。ーーーあの時の関係をなかったことにはしたくなかったからどうしても伝えたいと思ってた。」
「ーーーありがとうございます。私も先輩のこと、大好きでしたよ(笑)」
過去の話でも嬉しかったな、そう言ってもらえて。
そして過去のことを今でも真剣に考えてくれている先輩はやっぱり真面目で素敵だなとも思った。

BBQも終わりに近づき、外も暗くなってきたーーー。
また日本に帰ったら、という約束をして私とバスケ部のみんなも分かれた。
「どうか無事で、頑張って・・・」
樹先輩は私にそう伝えて握手をした。
力強く握手されたその手から、頑張れと言われているようでなんだか勇気がわいた。

前日に入院して私は次の日に手術を迎えた。
絶食でお腹空いているから何の気力も出ない、
でも入院当日にカナダに到着した祖母が「しっかりしなさい!」と喝を入れてきたのを今でも覚えている。
目覚めたらたくさん食べられるんだから、と。
あれだけおばあちゃんに会えるのを楽しみにしていたのに、
会った瞬間に喝を入れられて少し不服だったけど目覚めたら文句言ってやろうと思った。
ーーーそして手術が行われ、私は麻酔により少しずつ意識が遠のいた。

次に私が目覚めたのは、3日後のことだった。
目覚めたことで看護士さんたちが主治医を呼び、おばあちゃんを呼びに行きバタバタだった。
「花!目が覚めたの?!」
「うん。・・・どのくらい寝たの?」
「3日!・・・目が覚めないんじゃないかって、百合の時みたいにいなくなるんじゃないかって心配したんだから。」
「ゴメン・・・でもお母さんの夢を見たよ。」
おばあちゃんは私に微笑んだ。
「ねえ、おばあちゃん。私に失った記憶のこと教えてくれない?」
実は私は父と母が何故亡くなったのか、ショックのあまり記憶にない。
ーーー一緒にいたはずの私の記憶から父と母が亡くなったことだけ残され、その要因だけ消えた。
ただ熱い煙の中、燃えていたーーー。
それだけは鮮明に覚えている。
「あの日はーーー・・・花の8歳の誕生日だったんだよ。花の誕生日プレゼントを買いに遠くまで行ってたお父さんが事故に遭った、なかなか帰宅しないお父さんを心配した百合は花を連れて様子を見に行った。佐藤君が目の前で燃えているのを目にした百合は彼を助けようと必死に車から出そうとした、そこで二次災害が起こって爆発。ーーー二人とも即死、その爆発によってお前は飛ばされ心臓と足に被害を被った。」
「ーーーお母さんはお父さんを守るために亡くなったの?」
「バカだよ。お腹に子を宿していたのに・・・もうすぐ生まれるって時に。守る優先度があの子は間違えた。」
おばあちゃんは涙を流してお母さんのことを思い出していたんだろう・・・。
8歳の誕生日、私はその地域でしか売っていないレアのマグネットが欲しいと父にずっと頼んでいたのを覚えている。
ーーーそれを買いに行くために父は遠出をして亡くなったってこと。
妹か弟が生まれるはずだった命も、お母さんの命も奪ってしまったのは私なのかもしれないと思った。
「花が思い出すまで話すのはやめようって思ってた。だけどカナダにいる以上、きっと耳に入ってしまうだろうとも思ってた。ーーーお前が気を病むことは何もない。花は大事に愛されて育ってきた、それは何も変えられない事実だよ。」
おばあちゃんは私を抱きしめた。
夢の中で・・・お母さんはおばあちゃんをよろしくねって言ってた。
天国で・・・お母さんはお父さんと幸せにやっていますか?亡くなってしまった命はそちらで生きていますか?

おばあちゃんがホテルに戻ってから、
私は小さい頃のことを特に思い出していた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました