【 君がいる場所 】#24. 旅立ちの時*

君がいる場所

#24.

私が次に登校したのは翌週の水曜日。
退院した二日後だった。

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体の疲れもすっかり取れて足の痛みもなくなった私は爽快に学校に向かう。
「久しぶり!親戚に不幸があったって聞いたけど・・・」
「うん、もう大丈夫!」
当たり障りなく私は適当にかわす。
須永君に最後に会ったのは保健室だったから彼はめちゃ心配しては疑っていたけど、
元気だしって答えて解決した。

授業の遅れもそこまで感じることもなく、
何事もなかったかのようにその日は過ぎていくーーー。
友達と過ごす時間、
授業に参加できる喜び、
久しぶりすぎてなんだか色々と新鮮だった。

「ーーーあっ・・・」
そして新鮮ついでに行った屋上ーーー・・・。
「来ると思ってたよーーー・・・」
そこには先約、樹先輩がいた。
先輩は私に近づいて、突然抱きしめてきた。
でも私は嘘をついている手前、合わす顔がなくて目をそらした。
ーーーそれに誰かが来たらこんな状況見られたら、と思ったら・・・。
「なぁ、本当はこの一週間、学校休んで何してた?」
「えっ?」
私は驚いて先輩の腕の中から顔を上げた。
「やっとこっち向いたな(笑)ーーー親戚に不幸って言ってたけど、ウソだよな。本当はどこ行ってた?」
怒ってはない、ただ先輩の素朴な疑問だった。
「ーーー入院していました。」
今更だけど私は本当のことを伝えた。
「はっ!?入院!?」
「足の調子よくなくて早退したじゃないですか。だから検査入院になって・・・検査が重なって長引いちゃって。」
「ーーーなんで何も言わなかった?」
「分からないけど、先輩には知られたくなかったかな(笑)」
幻滅したよねーーーー、そんな落胆した表情をして私を腕から離した。
「・・・意味わかんねぇ・・・」
私が先輩に近づこうとした、でも先輩はそれを振り払った。
「悪い・・・今、混乱中。」
「ーーー里奈さんとはこんなことなかったですか?」
頭を抱える先輩は、めんどくさそうに私に向き合った。
ーーー怒っているようにも取れる真剣なまなざしで。
「なんでそこに里奈が出てくるのかも理解できねぇわ。」
ですよね、私も分からない。
「話になんねぇわ。」
私の前をスッと抜けて先輩が出口に歩き出そうとしたときに、先輩の足が止まった。
ーーーふと先輩の方を見て、私はハッとした。

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「りぃさ・・・」
そこに血相を抱えて立っていたのはりぃさを含めた1年~3年の数名の女子。
「なんでお前たちがここに立ってる?」
先輩が怪訝な顔で女子たちに話しかけた。
「二週間前、二人が一緒にいるところを見た。話を聞いたら文化祭準備中も渋谷で一緒にいるのを見たって人もいた。」
「怪しいと思ってた・・・。あの時振られたのに何で?!どんな手を使ったの!?」
りぃさちゃんは私の胸倉を掴んで、今にも殴りかかってきそうだった。
ーーー女の嫉妬は怖い、そういうことなんだよ、先輩。
「離せ・・・」
そこに先輩が割り込んでりぃさちゃんも力に負けては悔しそうな顔をしている。
「柊さん、樹くんが今まで誰とも付き合って来なかった理由知ってる?」
ーーー私の前に立つ上履きがグリーンの3年の先輩三人に優しい口調で言われる。
「いえーーー」
「先日ステージにいた元カノを忘れられないって噂があるのよ。そうでしょ、樹くん?」
今度は私じゃなくて先輩に投げかけた。
「ーーーお前たちに関係ないと思うけど。」
「関係ないけど、柊さんだけ特別扱いが許せないのよ。」
「それは・・・俺たちがつき・・・」
樹先輩はきっと付き合っているって言おうとしてくれたんだと思う。
「分かっています!大丈夫です!先輩たちが思うような関係じゃないですから!」
「おい。柊。」
「渋谷に文化祭の買い出しに行ったのは偶然会って、私が付きまとったからです。二週間前も・・・私が懲りずに先輩に告白してたからです!」
「柊!」
先輩は私の口を防ごうと割り込むけど私も止まらなかった。
「ーーー知っています、先輩と元カノがお似合いのことくらい。私が入る隙もないことくらい。でも・・・それでも先輩が大好きで私が勝手気に好きになって勝手に追いかけて勝手に付いて行ったんです。」
「ちが・・・」
「だから!!!先輩はなにも悪くない!どうぞ元カノさんと戻ってください!!!付きまとってすいませんでした!」
私は病み上がりなのに、
堪え切れない涙を抱えて屋上から退出した。

「待てよ、柊!」
先輩に捕まれるのは慣れっこだし、やっぱり先輩は早い。
「離してください・・・」
「なんであんな勝手な・・・」
私は大粒の涙を流しながらも微笑を浮かべて先輩にいったんだ。
「・・・今までありがとうございました。もう・・・付きまとわないから安心してください。」
私は自分の思いっきりのちから込めて先輩の腕を振り払った。

病院にいる間ずっと考えていた・・・。
里奈さんみたいに元気で明るい人の方が先輩に向いているって。
その人を忘れられないのは何となく感じていた。
その相手も戻りたいと思っているなら、邪魔なのは私でしょ?って。
私が告白したから・・・
私の諦めが悪かったから先輩はきっと付き合ってくれたんだと思う。
でもーーー・・・
先輩は私の好きな人だから、
やっぱり好きな人の幸せを願いたいとそう思った。
それに里奈さんを見てから、
先輩と里奈さんを結び付けてしまう自分がいて、
何よりもその黒い感情を生み出す自分自身が嫌だった。

あの日から一週間、
私と先輩の噂は広まったーーーー。
私が勝手に先輩に付きまとってストーカーしていたって。
事情を知っている須永君と環は心配してくれていたけど、
大丈夫、とだけ答えた。

肝心の先輩はーーー・・・
何度も連絡を受けているけど、私は応答出来ないでいる。
そして私はある決意をした、
祖母に何を言われても絶対にゆるぎない決断を。

もうすぐクリスマスーーー、
つまり学校も冬休みがやってくる。

「ーーー花!退学届け出したって本当!?」
冬休みも間近、私は環の言うように退学届けを提出した。
祖母を・・・葵おばちゃんを何度も何度も説得して、
やっぱりカナダ留学に逃げる選択を選んだ。
ーーーその条件として向こうで足の手術を受ける。
それを飲み込めば留学を認めてくれる。
手術だって成功すれば前のような自分に戻れるんだから、と言い聞かせて納得した。
「どうしてそれを?」
「今職員室で・・・担任に校長が話してるの聞いちゃって!何で?樹先輩のことが原因なの?」
「ーーーううん。ちが・・・」
環に事情を説明しようとしていたところ・・・
「柊!ちょっと来い!」
樹先輩が私の返事を待つことなく堂々と1年の教室に入って来て、
腕を掴んで屋上に連れて行かれた。

ーーー退学届の件を聞いたんだよね。
「オレがなんで呼び出したか分かるか?」
「ーーー先輩の耳にも入ったんですね。」
「なんで?この前のことが引き金か?」
私は何も答えなかった。
「答えろ。」
「先輩のことは大好きでした、でも先輩と一緒にいる自分が大嫌いでした。先輩と一緒にいるとウソが増えていく、そんなウソが積み重なって自分の気持ちがどれが本当か分からなくなってしまいました。」
「意味わかんね・・・」
「里奈さんのこともそうです。」
「またかよ・・・」
げんなりしている先輩。
「先輩が今彼女をなんとも思っていないのかもしれない、でも大切に思っているのは鈍感な私にでも分かるんです。先輩と彼女との時間に嫉妬しても意味ないのも理解しています、でも先輩を見るたびに一緒にいるたびに黒い感情を浮かばせる自分が嫌なんです。」
「だからって退学するのか?」
「ーーー物理的に離れないと忘れられないと思ったから。ちょうどよい機会だったんです、留学したいと思ってたし。」
「は?」
「あっ・・・カナダの高校に編入することになりました。ーーー幼い頃住んでいたって言いましたよね?昔の友達の家が部屋を貸してくれることになって。」
先輩は諦めたように大きなため息をついた。
「どのくらいだ?」
「卒業まではいると思います、あとは未定です・・・」
「最低二年半、ってことか。」
「はい。受験とかいろいろ頑張ってくださいね。先輩を好きになったことは後悔していません。」
「ーーー時々連絡して来い。」
「はは。じゃあカナダに行ったらすぐに彼氏見つけて送ります(笑)」
「いらねえわ。無理する傾向があるんだから体調とか足とかいろいろ気をつけろよ。」
「ありがとうございます。最後に一つ。先輩は少しでも私のこと好きでいてくれましたか?」
「ーーー・・・」
先輩は答えられなかった、それが答えだったね。
「ありがとうございました。お元気で。」

そして私は冬休みが入ってすぐ、
カナダへと旅立った。

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