【 君がいる場所 】#23. 足が・・・

君がいる場所

#23.

次の日は代休で学校は休み、
私は久しぶりにフルで寝て過ごした。

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明らかに体が疲れているーーー。
先輩とのことがあったのも一つの要因かもしれないけど、大した要因だとは思ってない。
それよりも4月から休むことなく続く学業と毎日のバイト、
そして落ち着いたと思えば文化祭の準備に明け暮れる毎日だった。
終わった今ーーー、
ホッとして力が抜けたのもある、
とにかく体がひどく疲れていてだるかった。

登校開始の火曜日も体が重くて起きるのもやっとだった。
こんなに疲れているのは本当に珍しい。
足は丈夫じゃなくても比較的体は丈夫に過ごしてきたから・・・。
どんなに体がだるくてもバイトを休むわけにはいかない。
かと言って本業の学校を休むなんて言語道断だった。
自分で決めて両立すると祖母に宣言したのにも関わらず、
正直、今体がすごくつらいーーー。

それでも自分の意に反して私は重い体を起こして学校に向かった。
ーーー歩くのも正直しんどいし、少し左足の付け根の部分がチクチクと痛む。
もうすぐ生理かな?排卵かな?
普段認識もしていない自分の体の変化に少しだけ気をかける。
「おはよう、柊にしては遅くない?」
やっと学校に到着して一息つく、
下駄箱に手をついているといつも遅刻ギリギリの須永君に声を掛けられる。
「おはよう。ーーーちょっと寝坊しちゃった。」
私は咄嗟にウソをついたけど、
あまり人の話には興味がないようでその先にいる友達と一緒に楽しそうに消えた。

私は・・・
遅刻ギリギリで教室に入り、担任に注意されながらもゆっくり足で着席した。
その日はトイレに立つのも億劫で、
付け根の痛みもどんどん酷くなっていたので3時間目が始まる前に保健室に行った。
「ーーー須永君、日直だよね?ちょっと保健室に行くね。」
突然消えるのは良くないと思って黒板に書かれていた日直の須永君に話しかける。
「ーーーどうした?大丈夫?」
「うん。ゴメンね、ちょっと体調が悪くて・・・」
「顔真っ青だけど・・・早退する?」
早退するにも今は足が痛くてそんな元気もない、
それになぜか吐き気も伴っていてとにかく横になりたかった。
「きっと横になったら大丈夫だと思う。」
その時、もうこれ以上自分の力で自分自身を支えることが出来なくて私はガクンとふらついて地面に落ちそうになった。
「だ、大丈夫か!?掴まって、一緒に行くわ・・・」
自席から立ち上がって支えてくれた須永君はゆっくり歩幅を合わせて一緒に保健室に来てくれた。
「ゴメンね。」
「日直ですから(笑)もし早退するなら荷物持ってくるし、メール貰える?」
「ーーーうん。ゴメンね。」
「無理すんなよ!じゃ!」
ここ最近の心の不安定さからか、彼の優しさに涙が出そうだった。

3時間目と4時間目を休ませてもらい昼休みーーー、
私は額に触れたひんやりする感触で目が覚めた。
「んっ・・・」
「あっ、悪い。起こした?」
ーーーそこには樹先輩の姿があった。
「・・・先輩?」
私は寝ぼけている目をこすりながら先輩を見る。
「須永から保健室で寝ているって聞いて。大丈夫か?」
この前のことはなかったようにすごく普通で、でも心配している樹先輩ーーー。
「だいぶ良くなったし、大丈夫です。ご心配おかけしてすいません・・・」
また一つウソをついた。
先輩と一緒にいるとウソが増えていくーーー。
心配かけまいと本当のことが言えなくなる。
「なら良いけど・・・無理すんなよ。」
私は微笑を浮かべ、先輩が保健室から出ていくのを布団の中から見送った。
先輩が消えていく姿を見てホッとした自分がいた。
来てくれて嬉しい反面、
こんなところを誰かに見られたら、
と思うと怖くて仕方なかったから。

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「先生、やっぱり今日は早退しても良いですか?」
6時間まである火曜日、
少し良くなったとはいえ授業に出れるとは到底思えなくて私は早退を先生に伝えた。
保健室の先生は行動がめちゃ早く、
担任に内線で伝え、教室に荷物も取りに行ってくれた。
「本当にお迎え来てもらわなくて大丈夫なの?」
「大丈夫です、ゆっくり帰ります・・・」
保健の先生はめちゃくちゃ優しくて心配性で・・・
でもゆっくりなら自力で歩けると判断した私は先生の気持ちだけ受け取って自分で帰った。

道中はいつも以上に長く感じた。
15分で通常なら到着する自分の家だけど・・・
1時間かけて到着した。
そしてそのまま私はベットに倒れたーーー・・・。
なにもやる気が起きない、
ただその言葉だけで今の私は片づけられる。

気が付いたら制服のまま寝てしまっていて、
私が目覚めたのは日付が変わった頃だった。
どれだけ深い眠りだったんだろう、
何度かあった先輩からのメールにも電話にも返事をすることが出来ないほどだった。
もちろんバイトも無断欠勤してしまって、何度も着信がった。
そんな自分に自己嫌悪だった。

[昨日は寝ていて気が付かなくてすいませんでした。今日はちょっと病院に行くのでお休みしますね。リハビリなので元気ですよ。]
[頑張って。]
相変わらずたんぱくなメールだったけど、
心配されているのが少しうれしかった。

そしてその次、バイト先にも謝罪の電話をした。
事情が事情なだけに理解してくれたけど、きっと次はないと思っている・・・。
無断欠勤なんて本当に最低だな…。

「働きすぎなんじゃないの?」
「ーーーうん。」
午後からリハビリで私は久しぶりに健太さんのところにやって来た。
「分かってる?何のためにリハビリやってる?」
「それは・・・」
凄い真剣に怒っているーー・・・
「君は・・・手術をしたくないからリハビリで頑張るって言ったんだよね?そのために俺たちは考えて協力している。でもーー・・・自分で治す気がないなら協力は出来ないよ。」
健太さんはハッキリ私に言った。
何も言い返せない、だって正論だから。
「ーーーごめんなさい。」
「とりあえず・・・3日間は安静!その間に色んな検査をすることにもなったから検査入院!」
罰ゲームだろうか?、と思うほど今度は優しい笑顔で彼は私に伝えた。
「ーーーはい。」
「花ちゃんは・・・走ったりしたいと思ってる?」
「それは・・・もちろん!」
「だったらさ・・・もう一度前向きに手術のことを考えてみてもらえないかな?確かに成功率は分からないけど、失敗するとも限らない。手術すれば治るものをこんなリハビリ続けて意味あるのかなって友人として思うよ(笑)」
ーーーそう、私は昔、一度だけ足の手術をしようとした。
そしたら普通に歩けるようになるからって言われて。
よく分からないけど足の骨と骨がうまくかみ合っていなくて、それが影響して今歩きにくくなっている。
その骨を正常な位置に戻せば昔みたいになるみたいなんだけど、
複雑な場所にあって難しい手術になるーーー。
最悪本当に歩けなくなる、と当時脅された私は直前で手術を断った。
「ーーー分かった、考えてみます。」
でも先輩に出会った今、普通に先輩の横で歩きたい。
歩幅を合わせてもらうんじゃなくて合わせられるような人になりたいと思うようになった。
それに足のことで人に言われたり、
気を使われたりするのが高校に入って想像以上に痛感しているーーー。

「ーーー柊、今病院にいるんだけど、もう帰った?」
ちょうどリハビリの休憩中、私は樹先輩からの着信を受けた。
ーーー今回はワンコールで出た。
「今、休憩中です・・・」
「ーーーリハビーテーションと外科の繋がる部分の庭園で待ってるから終わったら少し顔を見せて欲しい。」
「まだ休憩あるので、今行きますね。」
健太さんが急に別の患者の対応をしなくちゃならなくなって休憩、
まだ戻ってくる気配もないし、私は庭園に向かった。

庭園に立つひときわ目立つ先輩の姿ーーー。
遠くから見てもやっぱりカッコいいなって思ってしまう。
「先輩、お待たせしました!」
「ーーー抜けて大丈夫なのか?」
「いつも私もここで休憩していますし、きっとここだって分かってくれますから。それよりもどうかしましたか?」
「ーーー何となく、部活帰りに寄ってみただけ。」
言葉は足らないけど心配してくれているのは凄く分かった。
「ありがとうございます。この通りピンピンに元気ですから(笑)」
私はキン肉マンのように両手を上げて見せた。
「明日バイトか?部活休みの日だから、どこか行っても良いし、ゆっくりでも・・・」
この前は文化祭の時のことを気にしてないと思ったけど、
先輩なりに気を使っているのかもしれないと今この瞬間に思った。
「ーーーははは!会いたかったけど、残念です!」
私は笑顔で答えた、
バイトがあるともないとも答えずにただ会えないことを伝えた。
でも次に会えるのを楽しみにしていることは伝え忘れなかった。
ーーー少しだけ話して先輩は自宅へ帰った。

結局ーーー、
色んな検査が積み重なり、
私が退院したのは一週間後の月曜だった。

そりゃもう孤独との戦いだった。
怒りに任せてお見舞いに来た祖母や葵おばちゃん、
今後の生活方針についても検討させていただきますと真剣に言われてしまった。
先輩からも学校を休んでいる理由を何度も問われたーーー・・・
私は学校にも入院したことを言ってない、
親戚に不幸があったと伝えた。
だから先輩にも敢えて合わせてそう伝えてしまったーーー。

だって入院していると正直に話したら・・・
来てくれるって期待してしまう自分が怖かったから。
本当に来てもらっても・・・
こんなボロボロの自分を見せたくなかったから。
全て自分本位の理由で、私は先輩に本当のことを言えなかった。

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